漫画家イエナガの複雑社会を超定義

「6G通信まであと10年なの!?の巻」

初回放送日: 2022年6月17日

5Gの先にある未来の通信「6G」の最前線を俳優の町田啓太が超速解説!マンガやCGを使ってわずか15分で最新事情を楽しく分かりやすく伝える新たなエンタメ教養番組 今日も漫画家イエナガ(町田啓太)が、編集者(橋本マナミ)のもとへ漫画の持ち込みにやってきた。テーマは「6G通信」。この第6世代移動通信システムが実現すれば、映像は3Dになり、渋滞のない交通システムが実現したり、通信のエリアは宇宙へと拡大したりするという。2030年の実用化を目指すという6G、開発の鍵となる超万能電磁波とは何か?私たちの生活はどう変わるのか?いま知っておきたい情報をお伝えします。

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  • 世界で開発激化中! 驚きの技術6G

世界で開発激化中! 驚きの技術6G

2022年にNTTドコモが6G(シックスジー)の実現に向けて、驚きの技術を発表しました。プロのピアニストの演奏を素人がまるっと再現したのです。「人間拡張基盤」というスキルが共有できる技術になります。他にも6Gがもたらすのは超リアルな3Dホログラムに、さくさく動く16Kコンテンツ、どこにいてもスーパードクターのオペが受けられちゃう未来なのです。

すでにアメリカ、中国を筆頭に世界各国で6Gの開発が激化。日本でも6Gの世界市場で主導権を握り、市場シェアの約3割の獲得を目指す「Beyond5G推進戦略」が2020年に取りまとめられ、国としても後押しし始めているんです。さらに、6Gをフル活用するために、大手携帯会社は基地局を陸から空へ移行中。空に基地局をつくれば、地球から圏外がなくなり、今ネットにつながっていないおよそ30億人以上にも電波を届けられるって話なんです。6Gの世界市場規模は、2035年にはおよそ170兆円にまで成長すると言われており、世界中の国や企業が開発を急いでいます。

Q、そもそも携帯通信はどのように発達してきたの?

携帯通信の進化

SFから発想?携帯電話誕生秘話

今でこそネットさえつながればなんでも出来てしまうスマートフォンですが、携帯通信が初めて使われたのは、1973年4月のことです。ニューヨークの路上で携帯電話開発者のマーティン・クーパーが、突如れんがサイズの電話を取り出し、「やあジョー、調子はどうだい?」と通話します。これが世界初の出来事で、周りの人たちはマーティンに釘付けになったんだそうです。

もともとクルマ用の電話を開発していたマーティンですが、家でSFドラマを見ていたところ、主人公が携帯型の通信機を使っていました。そこでマーティンは「クルマにじゃなくって、直接人に電話をかけたい」って思ったことが開発のきっかけになったのです。

高周波数開発の歴史

1Gから4Gへ 高周波数開発の歴史

そもそも1G(ワンジー)から4G(フォージー)に至るまでには、どのような進歩があったのでしょうか。マーティンの携帯が1Gで電話がメインのものでした。2G(ツージー)になるとメールが使えるようになり、3G(スリージー)でインターネットや写メも使えるようになりました。4Gではネットに常時接続でき、音楽も動画もストレスなく見られるようになったのです。

携帯通信の歴史は、実は高い周波数の領域をどんどん使えるようにしていく歴史でもあります。この周波数が高ければ高いほど、高速で大容量を運べますが、扱いがどんどん難しくなります。それを技術者たちは1980年代の1Gから1990年代に2G、2000年代に3G、2010年代に4Gと、およそ10年ごとに歩みを進めてきたのです。そして今では4Gの「マイクロ波」を超え、5Gの「ミリ波」という通信領域まで辿り着きました。

5Gの特徴①「超高速通信」

ここまで可能になった!大躍進の5G

6Gの話をする前に、まずは5Gの話をちょっと聞いてください。5Gは4Gから何が変わったのかというと、大きく3つあります。

  • ① 超高速通信

5Gは4Gのおよそ20倍の通信速度で、2時間の映画がわずか3秒でダウンロードできます。そのため8Kのライブ配信、VRやARで会場にいるような臨場感でスポーツ観戦が楽しめるようになりました。

  • ② 多数同時接続

1つの基地局で使用できるデバイスがこれまでの10倍になりました。5Gではスマホ以外のモノもネットにつなげようという流れになっています。今後はインターネットにつながる家電や建物がどんどん登場し、生活がますます便利になります。

例えば、家の中では、目が覚めたのを察してカーテンが自動で開き、テーブルに用意していた朝ご飯がちょうどよく温められ、トイレに座ればその日の体調がまるわかりといったように最強のモーニングルーティンが堪能できるのです。

5G通信の特徴③「超低遅延」

③ 超低遅延

通信によるラグがほぼなくなり、限りなくリアルタイムに近い通信が可能になることで、自動運転や遠隔治療が実現できるようになります。

こうしてみると、「5Gすごい!早くこの未来がこないかな」という感じで、もう十分、お腹いっぱい、これ以上望みようないと思いませんか?しかし、5Gの先があるっていうんです。それが、6G!

Q、さらに、すごい6Gって?

3Dテレポーテーション

まるでSF?  6Gがもたらす超技術

6Gが実現するといったいどのようなことが可能になるのでしょうか?具体例を3つ紹介します。

① テレポーテーション

3Dの16Kの動画で、テレポーテーションの疑似体験が可能になります。超リアルホログラムでまったく別の場所にいる人間とその場で対面して話しているような感覚になれるのです。

② すご腕のスキルで遠隔治療

触覚データを伝送して遠隔治療できるようになります。すご腕医師のスキルを遠隔地に転送して、そのデータをいかしてロボットが手術を成功させることも可能になるのです。

デジタルツイン

③ 未来を先読み!デジタルツイン

現実のデータを仮想空間上にまるっと再現して未来を先読みできるようになります。デジタルツインと呼ばれる、デジタル上に現実世界の町や建物を「双子」のように再現してシミュレーションする技術です。実現すると、リアルタイムの海の中も全部再現可能になり、今どんな魚がどこを泳いでいるかも丸わかりなので、狙った魚を釣り放題!と、漁業界に革命が起きると言われています。

テラヘルツ波の特徴

こんな世界を可能にするには、膨大なデータを瞬時に送受信できる5Gを超えた高速通信が必要です。それを求めて今、「ミリ波」の先の未踏領域に、人類はついに足を踏み入れました。そこにすごいお宝が眠っているとみんな知っていましたが、それがめちゃくちゃ扱いにくい代物で、長いこと封印していたのです。その名も「テラヘルツ波」です。

テラヘルツ波は電波のような「透過性」と、レーザー光線のような「直進性」を持つ、電波と光の特徴を兼ね備えた超万能電磁波なんです。

この領域を使いこなすべく未踏領域に挑んだのが、「光通信の父」と呼ばれた工学者の西澤潤一さん。1980年代、西澤さんは研究を重ね、「テラヘルツ波」を発生させることに成功します。しかし当時は発生させるだけで精一杯、実用化には程遠かったのです。その後時代を追うごとに発生装置が小型化し、テラヘルツ波がいろんな業界で真価を発揮していきます。

例えば、がん細胞の早期発見や空港内でのセキュリティチェックなど、研究者たちはどんどんテラヘルツ波を使いこなせるようになってきたのです。

テラヘルツ波通信実験に成功

そしてアメリカで5Gのサービスが開始した2019年、トランプ大統領が「米国企業は6G実現に向けた取り組みを強化しなければならない」とツイートします。アメリカは6G通信にテラヘルツ波を応用することを推進し、それに各国も追随していくことになったのです。日本では2021年、ソフトバンクがスマホに搭載できる超小型アンテナを使用した通信実験で、スマホでテラヘルツ波通信ができることを実証しました。

ただ、6G実現にはまだまだ壁があるのが現状です。いったい何が課題となっているのか、通信業界に詳しい東京工業大学工学院の阪口啓教授に聞いてみました。

東京工業大学工学院 阪口啓教授

「6G実現の最大の難関は、プラットフォームを作れるかどうかです。プラットフォームはハードウェアとソフトウェア、アプリケーションをつなぐ役割をしています。例えば、Bluetoothのヘッドセットとか、みなさん使ってますよね。それと同じ感覚であらゆるものがつながっていくっていう感覚ですね。6Gではプラットフォームが人間に拡張されたり、自動運転の車を遠隔から制御したりとリアルな人やロボットに接続されます。遠隔医療などを誰でも使えるようにするための新たなプラットフォームの構築はまだ道半ばで、膨大な研究開発が必要です。」

日米で6G開発に約4900億円を投資

日本でも6G開発が加速!

6Gの実用化は2030年頃と言われています。2024年には、6Gの国際的な方向性が決まる予定です。4G、5Gが実用化される時にも、毎回世界各国みんなで会議をして、ルールを決めていました。日本は5Gのサービススタートが出遅れてしまい、「今度こそは!」と、6G開発に燃えているのです。

2020年11月には、産官学で6G開発をする企業や大学を支援する組織「Beyond 5G 新経営戦略センター」を設立しました。主導権を握るためには、特許をとることが大切です。ですが、現在の6G開発の特許数は圧倒的に中国が優勢で、日本はアメリカと合わせてやっとなんとか中国に勝てる状態です。そこで2021年、日本とアメリカは、6G開発に共同でおよそ4900億円を投資することを決めました。

6G通信の可能性は宇宙へ

6Gの可能性は宇宙へ 

6Gの開発競争と並行して、世界各国が争っているのが「通信エリアの拡大」です。現時点で全世界のおよそ30億人以上がネットにつながっておらず、その人たちに電波を届けると、とんでもないビジネスチャンスが待っているという話なんです。地球すべてを網羅すべく基地局を宇宙にまで展開しようとしています。

ドコモとソフトバンクは、基地局搭載ドローンを開発しています。さらに楽天モバイルも単独で、宇宙に通信衛星を配備する計画を発表しているのです。2021年、KDDIが提携を決めたSpace Xが開発を進めているのは、「衛星コンステレーション計画」。たくさんの人工衛星基地局をリンクさせて、地球全部にネット通信を届けようというもので、目標の衛星の数はなんと4万基、2022年時点で、およそ1700基の衛星はもう飛ばし終えています。

6Gは、本当に私たちにとって良いことづくしなのでしょうか。阪口教授は6Gが抱える問題点とその先の社会について、次のように語っています。

東京工業大学工学院 阪口啓教授

「デジタルデバイトという問題がこれまで懸念されていました。ネットやスマホを使いこなせる人と使いこなせない人で情報格差が生まれてしまう問題です。6Gでは、この問題がさらに顕著になります。農業から医療まですべて遠隔で仕事をすることができるので、6Gが実現すると、もしかすると、みんなハワイに住んじゃうかもしれないです。家の形も変わりますし、車の形も変わる、なので街の形も変わる。場所にとらわれない社会になります。」

阪口教授によると、場所にとらわれない社会は実現するのは、2040年から50年くらいの話だそうです。そんな世界なら不満なさそう!と思いますが、その時にはその時の社会的な課題がきっとあって、解決に頭を悩ませているんじゃないか、とも語っています。

電磁波開発から始まった、人類最後のフロンティア「テラヘルツ波」の開発で、研究者たちは前人未踏の領域に足を踏み入れました。6G実用化は2030年ともう目の前まで来ています。6Gがもたらすボーダーレスな世界で私たちはどう生きていくのか、楽しみでもあり、怖くもありますね。

6G相関図