人類発祥の地「アフリカ」。いま、そのアフリカが大きく変貌しています。インターネットや交通網が発展している情報社会の現代。先進国が経てきた道を知っているアフリカの成長は、ただ先進国の後を追っているだけではありません。「リープフロッグ(カエル跳び)現象」=先進国が歩んできた技術発展のステップを飛び越えて、新しいサービスの数々が一気に広まり始めているのです。アフリカで「いま何が起きているのか」を見ていきます。
アフリカでいま何が起きているのか「激動の世界をゆく『アフリカ 新秩序の模索』」12月5日放送
「大きい」「若い」アフリカ成長の秘密
「アフリカは広大」です。
その面積はアメリカ、中国、インドの合計より広く、面積は2964万㎢、55の国や地域があり、人口は約13億いると言われています。
この人口は、これから増加の一途をたどるとみられています。
これまでは出産時の死亡率も高く、医療体制のぜい弱さなどから治せるはずの病気で亡くなっていた子どもも、成人まで育つようになってきたからです。
(ドローンで地方に医療物資が届く様子)
例えばガーナではドローンを使い、地方へワクチンや薬などを数分~数十分で届けるシステムができ、都市部から離れていても医療が受けられるようになっています。
(SDG地域別の人口の動向:1950~2020年推計値・2020~2100年の中位推計値(国連人口推計2019より))
長期の人口予測(国連)では、アフリカは今後80年にわたり人口が増え続ける唯一の地域とされています。
2019から2050年の間に11億人が増加、この期間の世界人口の増加の半分以上を占めるというのです。
さらにアフリカは人口の7割近くを29歳以下が占めています。
日本では29歳以下が3割弱しかいないことを考えても、その若さが際立っており、つまりはパワーある働き手が多く、それが持続していくということなのです。
なぜ日本人にとってアフリカは”取り残されたイメージ”なのか
アフリカには資源大国が多いということもあり、19から20世紀にかけては先進国が工業製品の大量生産に必要な資源を求め、植民地化の波が押し寄せました。
その後、多くの国が独立したあとも、世界の戦後復興や成長の一端をアフリカの資源が支えてきましたが、70年代の石油危機で世界経済が停滞すると、80年代以降、交易条件の悪化などからアフリカ経済は長期にわたり低迷が続いたのです。
そうした経済低迷が、さらに政情不安や内戦などの増加につながってしまったという歴史があります。
東アフリカの玄関口 ケニアが成長を続ける理由
アフリカの中でも経済的に発展しているのが、ケニアです。
1963年にイギリスから独立したあと、共和制に移行しました。
一党独裁体制となっていた時代もありますが、1992年に複数政党制に移行し民主化を遂げています。
それからおよそ20年、ケニアは連立政権を軸に国家を運営しています。
東アフリカに位置し、面積は日本の約1.5倍の58.3万㎢、人口は約5400万、首都はナイロビです。
東アフリカや中央アフリカなど内陸諸国にとっても輸出入の拠点となる重要な港があり、経済のハブとなっています。
さらに国民の67%が29歳以下と若く、消費や労働を牽引する力強さもあります。
それを裏付けるのがGDPの成長率です。
新型コロナの感染拡大によって観光などに影響を受けましたが、それでも年6.2%を保ち、さらなる回復も見込まれています。
主産業は農業で、最大の輸出品目は切り花です。
先進国の成長を見続けてきたからこそ飛躍した成長ができる
都市化が進むケニアですが、それでも人口比の電力普及率は69.7%(2019年世界銀行調べ)です。
電気がないにもかかわらず普及しているのが携帯電話で、普及率は1人1台をこえる114%(2020年世界銀行調べ)です。
ちなみに日本は電力普及率が100%で携帯電話普及率が152%ですから、ケニアの携帯電話の普及率の高さがうかがえると思います。
ケニアでは、モバイル決済も広く普及しています。
都市部に出稼ぎに行く人が多く、ふるさとの家族へ送金したいといった需要はあるものの、地方では銀行の支店やATMがなく銀行口座を持っている人がそもそも少ないのが現状です。
そのためプリペイドのSIMカードでも使えるモバイル決済は急速に普及しています。
牛や羊など家畜の売買から生活用品の購入までできるため、欠かせないツールになっていると言うのです。
電気よりも先に携帯をもち、しかもモバイル決済で自由に売買してしまう。
先進国が電気→携帯電話→スマートフォン→モバイル決済というように順々に経てきた道を、ケニアをはじめとしたアフリカは一足飛びに超えて次の段階に進んでいるのです。
先進国からの資金援助の依存を脱却し独自の発展を目指すガーナ
さらに独自の発展をとげようとしている国がガーナです。
ガーナと言えばチョコレートを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
事実、ガーナの主な産業の一つがカカオ豆で、他にも金やダイヤモンドが主要な輸出品となっています。
しかしガーナ経済は、カカオ豆と鉱物資源に頼り切っていたことで天候や国際市場に左右され大きなリスクを抱えていました。
リスクのため発展が阻害され、その結果、長年、海外の援助に依存した国となってきたのです。
私たちの取材の中でガーナ人たちが口にしていた印象的な言葉があります。
それは「独立」という言葉です。
ガーナ人たちはこぞってプライドをもって、この言葉を口にしました。
彼らにとって「独立」という言葉にはどんな意味があるのでしょうか。
西アフリカに位置するガーナ、面積は23万8537㎢で、日本の約3分の2の大きさです。
人口は約3100万、29歳以下の若者は全体の約65%でこちらも若さあふれる国です。
多くのアフリカの国同様、植民地となっていましたが、1957年に他のアフリカ諸国に先駆けて、イギリスから独立しました。
そのため彼らにとって「独立」というのはとても思い入れのある言葉だったのです。
「援助を超えて」”真の独立”へ歩き出したガーナ
そして開発援助は国にとって「持続可能」ではないということにあるとき気がついたガーナは、先進国からの援助から脱却した「真の独立」を目指し、2017年Ghana Beyond Aidという国家プロジェクトを掲げます。
「Beyond Aid=援助を超えて」
実際、開発援助に頼ってしまうとどうしても先進国が自分たちの都合で援助額や用途を決めるケースなども多いため、国が実質的に必要としている部分に金を使うことが出来ず、苦労することも多かったと言います。
そこで自立し、市場や天候などの影響を受けずに経済を回していける産業の発展を促すような政策を行うことにしたのです。
これまで輸入に頼っていた衣服もオリジナリティーあふれるガーナならではのものを自国で作るようにしたことで、海外での評価を受け輸出されるまでになりました。
その他、裾野を広げるために自動車産業などの海外からの誘致を積極的にも行い始めたのです。
Ghana Beyond Aidを達成するため政府はアフリカ全体の発展も目指しており、ガーナの貿易産業大臣も「アフリカの発展なくしてガーナの発展はない」と言い切っています。
具体的に何をやっているのか。それはアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)です。
AfCFTAとは、アフリカ域内で取引される約90%の品目の関税をなくそうというものです。
現在、アフリカ各国の関税は周辺国と協定を結んだり独自に制定したりしているためアフリカ内での貿易は盛んにおこなわれず、資源はアフリカ外に安価で輸出される状態が続いていました。
そこでアフリカ内で資源を使い、より高価で取引されるモノを製造しようという狙いを持ってAfCFTAが制定されました。
この協定を実現するため、ガーナやルワンダが旗振り役を担っています。
特にガーナにはAfCFTAの本部が所在し、この協定を利用した初めての輸出国となりました。(化粧品と飲料企業が今年の1月から輸出を開始)。
そこには政府の強力な後押しがあったといいます。
官民一体となり新たな道をすさまじいスピードで切り開こうとするガーナ。
先進国が歩んできた技術や道を取り入れながら独自の成長を目指しているため、突きつけられている課題もまた未知のものとなっていますが、発展の可能性も計り知れないものとなっています。
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