コロナ禍で長らく続いたマスク生活に、大きな変化が。
新型コロナ対策としてのマスクの着用が今月13日から個人の判断に委ねられるようになりました。
県内の施設での対応に変化は?引き続き注意すべきポイントは?まとめてお伝えします。
(津放送局 鈴村亜希子 石塚和明)
「お客への着用呼びかけやめました」
13日午前8時半。津市のスーパーを訪れると…
これまで掲示していた、買い物客にマスク着用を呼びかける貼り紙を取り外す作業の真っ最中。
スーパーの運営会社では、政府や県の方針に基づき買い物客のマスク着用は個人の判断に委ねることにしたといいます。
ただ、この日店舗を訪れた客のほとんどはマスクを着用。着けていない客は、まだ少数でした。話を聞いてみると…
「もうマスクを着けるのが癖になっているし、のどが弱くてせきこむともあるのでしばらくは着けて生活すると思います」(70代男性)
「子どもがまだ0歳と小さく、うつしてしまったら大変なので、このままマスクを着けると思います。でも、個人の考えなので外したい人は外して、人それぞれの対応をしたらいいと思います」(30代女性)
この日を待っていたという人もいました。
「プライベートの場では、きょうから外そうと決めていました。3年前に買ったきりで使っていなかった口紅をきょう塗って、とってもいい気分です。でもまだまだ着けている人も多くて、ちょっとアウェー感がありますね…」
店では従業員は着用を続けるほか、レジの横にある飛まつ防止のシートなどの対策は継続することにしています。
「個人の判断でということになりましたが、お客様の安全を守るために、従業員のマスク着用は続けます。目元でできるだけ笑顔を伝えられる接客をしていきますが、できれば早く顔を合わせて接客ができるようになるとうれしいです」(ぎゅーとらラブリー渋見店増田邦宏 店長)
高齢者施設は従来の対策継続
一方で、引き続きマスクの着用が推奨されているところも。
県の指針では、医療機関や高齢者施設などを訪問する際や勤務中の施設の従業員は、着用が推奨されています。
鈴鹿市の老人ホームでも、スタッフは引き続き着用しています。
また、施設の玄関に限って行っている入所者と家族との面会の際には、双方に着用を求めるほか、検温の実施など従来どおりの感染対策を継続しています。
この日も入所者の家族が面会に訪れていました。面会はおよそ5か月ぶりでした。
面会に訪れた家族:「俺のこと覚えてる?」
入所者の女性:「マスクで顔がよく見えないけど、あんたの顔はよくわかるで。白髪増えたなあ」
面会に訪れた家族:「あなたのひ孫の写真見てよ」
入所者の女性:「あら、かわいい子やねえ」
マスク越しですが、対面での家族水入らずの時間を楽しんでいました。
「元気よく過ごしているみたいでよかったです。感染が拡大している時など面会できずに会えない時期もあったので、直接会って話せるだけでも全然いいです。たしかに、顔全体が見えた方がいいですけど、このままでも気持ちがわかるのでかまわないです」(面会に訪れた家族)
施設では、対策を継続しながらも徐々に緩和していくことを目指しています。
「感染対策が緩和の方向に向かっていくのはいいことだと思いますが、感染力がこの日を境に変わる訳ではないですし、高齢の方が感染すると命に関わるリスクがあるのでこちらでは感染対策はこれまでどおり続けていきます。ただ、ご家族との面会については配慮していかないといけないので、5月には入所者の居室での面会も再開できるよう計画しています。完全にとはまだまだいきませんが、コロナ禍の前の対応に少しずつ戻していきたい」(介護付有料老人ホームみっかいち 松原和之施設長)
専門家「欧米と日本は事情が違う」
今後は、どんな場面でマスクを着けたらいいのか、感染症の専門家に聞きました。
三重病院の谷口清州院長です。
日本では欧米と比べて感染対策が徹底されてきたため、感染者数は低く抑えられてきたとした上で、そのことを背景にマスク着用の必要性が日本ではより高いと指摘します。
「欧米ではほとんどの人がマスクを外しています。これは、全人口の8割の人がワクチンによる免疫と自然感染による免疫、『ハイブリッド免疫』を持っているため、マスクを外しても大きく感染が広がる訳ではないからです。ただこれは、過去に多数の死者を出したというばく大な犠牲を払って得たもの。一方、感染対策が徹底されてきた日本でこの免疫を持っているのは3割から4割ほどと状況が全然違います。つまり、感染する余地が日本はより大きいため、『欧米が着用していないから日本も外そう』と言う人もいますが、マスクを一挙に外せば当然のことながら感染は広がります」
「状況に応じて必要か否か考えて」
その上で、マスクを着用するかしないかは、その場の状況に応じて判断することが大事だと言います。
「新型コロナ対策としては屋外では全く必要ありません。屋内でも距離が取れて換気がきちんとされていれば必要ありません。一方で、重症化リスクの高い人に会うときや、そういう人が多くいる医療機関や高齢者施設では引き続き着ける必要があります。それと、発熱など症状があるときはマスクを着けたり、休みをとったりして、他人との接触を避けること。マスクは自分を守るためのものでもあり、相手を守るためのものでもありますから、それぞれの状況に応じて必要か否か、考えてほしい」
新型コロナウイルスの感染拡大が本格化してから、およそ3年間続いてきた私たちのマスク生活。着用が個人に委ねられた今こそ、改めて感染リスクを考えながら自分たちで新型コロナとの付き合い方を判断していくことが求められています。