ある休日のこと。
天気もよいので郊外を軽快にドライブ。
いい気持ちで走っていたら、うわ~~っ、いきなり、前の車が車線変更してきた!
あぶなっ!!あぶなっ!!
ていうか、車線変更しながらウインカー出しても意味なくない?
ウインカー出すの遅すぎ!
そんな思いをしたことありませんか。
なんでそうなるの?
そして早く出すためのコツは?
取材してきました。
(津放送局記者 中野七海)
三重ってウインカー出すのが遅くない?
「三重県に来てウインカーを出すのが遅いことに驚きました。ドライバーは気付いているのでしょうか」
視聴者の皆さんの疑問やご意見をよせてもらい、放送につなげる「まるみえニュースポスト」。
転勤族で全国各地に住み、2年ほど前に三重県に引っ越して来たという方からこんな投稿がありました。
私は、静岡県出身。もちろん、静岡でも「ウインカー出すの遅いよ」と思うことはありましたが、確かに三重ではそう感じることが多めかも。
最初に来た投稿を元に、ご意見をさらに募ったところ、「自分もそう感じる!」という声がたくさん集まりました。
中には「曲がる直前にウインカーを出す車がとても多いことに驚きました。曲がるのと同時に出す車もいます。『警察に直接苦情を言いに行こうかな』と真剣に考えていたほどの悩みの種でした」という声も。
「ウインカーを出すのが遅い」という悩み、他の都道府県から三重県に来た人たちが結構感じているようです。
ホントに遅いの?三重の状況調べてみた
実際にこうしたルールを守っていないドライバーはどの程度いるのか。NHK津放送局内で働く人たちに、三重県内の道路を走っている時のドライブレコーダーの提供を1か月間お願いしました。
念のため、ここでウインカーに関する交通ルールのおさらいをしておくと。
道路交通法では、右左折の際、交差点の30メートル手前でウインカーを出す必要があると定められています。
さらに、車線変更の際は、3秒前にウインカーを出さないといけません。
この点を念頭に集まった映像を見てみると…。
直進するかと思ったら、交差点の直前になってウインカーを出して曲がっていく車。
右折待ちをしている間に出さずに、右折する直前でウインカー。
さらに、ウインカーを出してすぐに車線変更。後ろの車は危険を感じ、ブレーキを踏んでいました。
遅いだけではありません。中にはウインカーを全く出さない車もいました。
うーん。思った以上にひどい。確かに、ウインカーが遅い車が多そうです。
三重県民「そんな遅くないよ」の声も…
では、ずっと三重県で暮らしている人たちはこの点に気づいているのか、街で話を聞いてみました。
「そうやろか。特別にウインカーが遅いとは感じやんけどねぇ」
「自分ではちゃんとウインカー出しとるつもりやけど」
それほど自分たちでは意識していないというドライバーが多そうです。
一方で、こんな意見も。
「たまにあるなぁ。直前でウインカーを出されたりすることもあるけど、あれは困るわ」。
「ウインカー出しとらへんのに、前の車に急にブレーキふまれて。あ、曲がるんかいな!と。曲がるんやったらウインカー出してよ、みたいなことはある」
また、実際にウインカーを出すのが遅めだという人からは
「早めに出すのはかっこ悪い」
「早く出すと音がうるさい」
といった声も。
かっこ悪くても、ちゃんと出してほしい…。
ウインカー遅いのが行動様式として固定も
では、どうしてウインカーを出すのが遅くなってしまうのでしょうか。ドライバーの心理に詳しい帝塚山大学の蓮花一己学長に話を聞きました。
「ウインカーによる合図ってコミュニケーションツールなんです。出すことによってこの車は曲がるんだな、止まるんだなと、後ろや周りの車・人にわかるんですね。
逆に、『合図を出しておけば、とりあえず警察に捕まることはないわ』みたいな感覚で、ウインカーをすぐには出さないという人が多いんじゃないかと思います」
なるほど、遅くても出しておけばいいやという感じでしょうか。
さらに、データがないので三重県に多いとされる理由ははっきりとはわからないとした上で、こうした行動が1つの文化のようになっている可能性も指摘します。
「律儀にきちきちやっていると『初心者やな、あいつ』みたいな感じに思われる。一方で、うまい運転っていうのは、きちっとウインカーを出さないもんやといった変なステレオタイプというか習慣ができあがっている可能性もありますね。
県をまたいで運転することって日常ではそれほどないので、それぞれの文化圏のなかでウインカーの出し方が、1つの行動様式として固定しているのかもしれません」(蓮花一己学長)
ウインカーの正しい出し方、復習します
ウインカーを出すのが遅いことで、重大事故につながる可能性もあるので、正直あまり固定してほしくない行動様式です。
では、どうしたら早くウインカーを出せるようになるのでしょうか。
まずは、自分がしっかり出せるように!ということで、ウインカーの正しい出し方を自動車教習所であらためて教えてもらうことにしました。
教官は、津ドライビングスクール教習課長の小田芳輝さん。
免許を取って4年目の私が、ハンドルを握ります。
気合いを入れて安全運転だ!よし出発!
道路に出ようとウインカーを出そうと思ったら、ワイパーが…。ちょっと先行きは不安ですが、なんとか頑張ります。
ウインカーちゃんと出すコツとは
小田さんによると、『車線変更するときには3秒前』のルールですが、うまく出すにはコツがあるといいます。
「3秒の数え方がほとんどの人が1から始まるんです。0から始まって、1、2、3って数えないと3秒確保することができません」(小田芳輝さん)
なるほど。1、2、3だけだと、間は2つで2秒になっちゃいます。0、1、2、3、進路変更ってことですね。
続いて、交差点で右左折の際、交差点の30メートル手前でウインカーを出す必要があるという点の、30メートルの距離のつかみ方について。
こちらについては、乗用車1台で大体5メートルくらいなので、30メートルをはかるのであれば、6台分くらいの距離だと思えばよいとのこと。
「運転に慣れてくると、自分のルールになってしまいがち。正しい交通ルールを今一度振り返っていただいて基本に戻って運転ができるようにしてください」と小田さんは話していました。
「マ・ガ・リ・マ・ス」のサイン
ところで、ふだん車を運転しているときに交差点で、ウインカーを右に出すのか、左に出すのか、わかりにくい道ってありませんか。
三叉路などで右左折の矢印式の信号機が出る場合は、矢印の差す方向へのウインカーを出してくださいとのこと。
また、道が曲がっていても道なりに進む場合はウインカーはいりませんが、センターラインからはずれる道へ進むような交差点では、ウインカーを出しましょうということでした。
思い返してみるとウインカー出すのが遅くなっているかも…という、そこのあなた!!
『ブレーキランプ5回点滅「ア・イ・シ・テ・ル」のサイン』ならぬ、『ウインカーしっかり点滅「マ・ガ・リ・マ・ス」のサイン』で安全運転を心がけてみませんか。