選挙の投票日に用事を終えてから投票所に行ったら、すでに投票が締め切られていた…そんな経験ありませんか?
選挙当日の投票時間は公職選挙法では「午前7時から午後8時まで」と定められていますが、実際には多くの自治体で短縮されています。なんで短縮?どんな事情や基準で?投票時間をめぐるなぜを取材しました。
(津放送局 鈴村亜希子)
なんで津市は投票時間が短いの?
「統一地方選挙の投票時間について、津市は午後7時までなのはなぜでしょうか?また他の自治体の投票時間も知りたいです」
NHK津放送局に津市に住むいのぐちさんから届いた質問です。
いのぐちさんに話を聞くと、友人との会話が疑問に思ったきっかけだったと言います。
別の市に住んでいる友人と一緒に出かけた時に、「投票が7時までだから早く帰らないと」と言ったところ、友人は「私のところは8時までだよ」と返事。
投票時間が違うことに気付いたそうです。
公職選挙法では、投票できる時間は原則「午前7時から午後8時まで」と定められていますが、地域の実情に合わせて変更することができます。
津市には合わせて120か所の投票所がありますが、投票時間はいずれも午前7時から午後7時まで。
なぜ1時間繰り上げているのか、市の選挙管理委員会の橋本直樹事務局次長に理由を聞くと…。
「一番大きな理由とては、期日前投票がかなり浸透していて、そのぶん当日の投票率、特に夜間の投票率が著しく減少しているためです」。
なるほど、期日前投票ですか。
津市によると、前回4年前の県議選では、投票した人のうち26.4%が期日前投票。そのほかの選挙でも年々その割合は上がっています。
そのため、必ずしも当日午後8時まで投票所をあけておかなくても、投票機会が失われる訳ではないといいます。
とはいえ、わざわざ早く閉めなくてもいいのでは…と思いますが、この点については。
「合併によって市のエリアが非常に広くなりました。そこで開票所まですべての投票所から投票箱を運ぶのに、非常に時間がかかるようになったんです。開票作業やその後の開票結果の発表を早くできることから1時間繰り上げています」(津市選挙管理委員会 橋本直樹事務局次長)。
津市は、平成18年に10の市町村が合併して今の広さになりました。
合併前の投票の終了時間は、芸濃町が午後6時。美里村、安濃町、美杉村が午後7時まででした。それを合併の時の協議会で話し合って、投票時間を市内で午後7時までに統一したということです。
開票作業が行われるのは、旧安濃町にある体育館です。たとえば旧美杉村から車で移動すると、場所によっては1時間以上かかります。開票作業を迅速に行うためには、投票を時間を早めた方がいいという判断です。
今や投票時間の短縮が主流
こうした対応を取っているのは津市だけではありません。
三重県選挙管理委員会によると、投票時間を法定通りに午前7時から午後8時までとしているのは、四日市市・伊勢市・松阪市の大部分・桑名市・鈴鹿市・名張市・亀山市・いなべ市・木曽岬町・東員町・菰野町・朝日町・川越町の13の市と町の343か所の投票所となっています。
一方で、尾鷲市などすでに無投票が決まった所も含めて、17の市と町の510か所で投票時間を繰り上げています。県内全ての投票所が853か所なので、むしろ繰り上げているところの方が多いというのが実態です。
・午前7時~午後7時
津市・伊賀市・御浜町・紀宝町の大部分。
・午前7時~午後6時
松阪市の一部・尾鷲市・鳥羽市(神島除く)・熊野市(紀和町上川地区除く)・志摩市・多気町・明和町・大台町・玉城町・度会町・大紀町・南伊勢町・紀北町・紀宝町の一部。
・午前7時~午後5時
熊野市(紀和町上川地区)。
・午前6時半~午後6時
鳥羽市の神島地区。
ちょっと変わっているのが鳥羽市。終了時間はすべての投票所で午後6時までですが、離島の神島だけは、開始時間を午前6時半からに早めています。
鳥羽市の選挙管理委員会によりますと、島と市街地をむすぶ市営定期船の始発の時間が午前7時なので、出かける人が投票を先に済ませられるよう開始時間を早めているということです。
投票機会の確保も課題
実は私、以前尾鷲市に住んでいたときに、午後7時すぎに仕事が終わって投票をしようと投票所に寄ったら、すでに締め切られていて投票できなかったことがありました。この経験から、できるだけ期日前投票に行くようにしています。
各選挙管理委員会でも、より多くの人に投票してもらいたいという思いは変わりません。投票時間を短縮しても、投票機会を増やそうというさまざまな取り組みも進めています。
これから選挙のある地域の方には、大切な一票を無駄にしないよう、ぜひ投票に行ってもらいたいと思います。