自転車が見る信号機は車用?歩行者用?

伊藤憲哉
2023年9月14日 午後8:18 公開

自転車に乗っている時、信号機は車用か歩行者用かどっちをみたらいいんだろう?

「毎日、通勤や通学で使っているのにあやふや…」

「そもそもきちんと習ったことがない」

そんな人も多いかもしれません。

意外とわかっていない自転車をめぐる交通ルールについて調べてきました。      

(津放送局 伊藤憲哉)

自転車が見る信号機って?

「自転車横断帯のない交差点で、車道を走っている自転車は車両用・歩行者用、どちらの信号機に従ったらいいのでしょうか?」

NHK津放送局に視聴者の方からこんな疑問が寄せられました。

自転車に乗っているときでもなんとなく歩行者用に従うことが多いイメージですが、車道を通っているとどうなるんだろう…。

実際に津駅近くにある自転車横断帯のない交差点で、自転車は車両用と歩行者用どちらを走っているのか、聞いてみました。

「どっちだろう。なんとなく歩行者用の信号機を見るようには意識しているけど特に意味はないですね」

「車道を走っていても歩行者用の信号機を使っています。だめなんですかね、あまり自転車の交通ルールについて詳しくなくて」

「もちろん、歩行者用の信号機を見ます。若い人たちは学校で習らうと思うけど、大人になって忘れているので改めてルールを教えてもらいたい」

答えた人6人全員が「歩行者用」の信号機をみるという結果でした。ただ、理由は“なんとなく”という意見がほとんどで、実際にどういうルールになっているか知っている、という人はいませんでした。

2時間半ほど、同じ交差点で取材をしていましたが、車両用の信号機に従って走行している人は“ゼロ”でした。

車道→車両用 歩道→歩行者用が基本だけど…

では自転車で交差点を渡るときは、車用と歩行者用の信号機どちらを見るのが正しいのか。交通のプロである警察の担当者に聞きました。

ケースバイケースになります。車道を走っている場合は、基本的に車両用の信号機を見て下さい。歩道を走っているときは、歩行者用の信号機を見て下さい」(県警察本部交通企画課 益川裕基 安全対策係長)

ケースバイケースとはどういうことなのか、もう少し詳しく聞くと状況によってかなり異なっているといいます。

まず、自転車は軽車両に位置づけられているので、原則、車道を走行するのが正しいです。そのため、車道を走っている場合は、そのまま車両用の信号機を見るのが正解です。

ただ、車道を走っていても自転車横断帯がある場合はルールが変わります。歩行者用の信号機に従っていったん車道から自転車横断帯に入って、横断歩道を渡る必要があるのです。

歩道のときは人の有無で渡り方が異なる

では、歩道を走っている場合は、どの信号機を見れば良いのでしょうか。

まず、自転車横断帯があれば、歩行者用の信号機を見てそのまま渡ります

次に自転車横断帯がない横断歩道では、歩行者用の信号機に従うことに変わりはありませんが、歩行者がいるかいないかで渡り方が異なります。歩行者がいない場合は自転車に乗ってそのまま渡れます。一方、歩道はあくまで歩行者のための道路なので、歩行者がいる場合はいったん降りて自転車を押して歩行者として渡る必要があります。

若干、複雑なのでまとめてみます。

【1】車道を走っている場合

(a)原則         

   →車用の信号機に従い渡る

(b)自転車横断帯がある場合

   →歩行者用の信号機に従い自転車横断帯に入って横断歩道を渡る

【2】歩道を走っている場合

(a)自転車横断帯がある場合

  →歩行者用の信号機に従い渡る

(bー①)自転車横断帯がなく、歩行者がいない場合

  →歩行者用の信号機に従い、乗ったまま渡る

(bー②)自転車横断帯がなく、歩行者がいる場合

  →歩行者用の信号機に従い、自転車から降りて押して渡る

仮に車道や歩道を走行しているときに誤ったほうの信号機に従ってしまうと法律違反になる可能性があるということで、警察では注意するよう呼びかけています。

「仮に誤ったほうの信号機に従ってしまうと、歩行者にけがをさせてしまったり、信号無視の違反の罪に問われたりすることがあります。ですので交通ルールを守ることが大切です」(県警察本部交通企画課 益川裕基 安全対策係長)

意外に知らない自転車の交通ルール

このほかにも自転車に乗るうえでみなさんに知っておいてほしいポイントを警察に聞きました。

①特別なマークや状況で歩道も走行可能

車道と歩道のどちらを通ればよいのか、迷った際に見るべきは「普通自転車等及び歩行者等専用」という青色に白地で人と自転車のマークがある標識です。これがあれば、歩道を通行できます。また、標識に関係なく13歳未満の子どもや70歳以上の高齢者、それに身体の障害がある人は例外なく歩道を走行できます。このほか、交通量が多いなど車道を走ると危険な場合も歩道を走ることができるとのことでした。

②止まれの標識は自転車も従う

また、止まれの標識。これは一時停止を求める標識ですが、車のためだけのものではありません。自転車で走っているときに、止まれの標識があれば、必ず止まって下さい。

③横断歩道がない場所では渡らない

そして、斜め横断など横断歩道がない場所以外で道路を渡るのはNGです。

④道路の左側を走る

道路の左側を走るのがルールなので、右側を走るのはだめです。逆走に当たりますし、非常に危険なので絶対にやめてください。

そして、いま自転車の取締りを巡って、ルールの変更が検討されています。警察庁の有識者会議では、自転車の交通違反についていわゆる「青切符」による取り締まり、反則金制度の導入への検討が始まっています。警察では加害者にも被害者にもならないよう自転車のルールを守るように徹底してほしいと訴えています。

「自転車は便利な乗り物ですけど、ひとつ間違えれば人をけがさせて最悪の場合、死に至らしめてしまう乗り物です。交通ルールを守ることが自分を守るそしてみんなの命を守ることにつながりますので、ルールを理解して自転車に乗ってください」(県警察本部交通企画課 益川裕基 安全対策係長)

今回の取材を通して、自転車は免許がなくても乗れるので、細かいルールについて、自分自身を含めて知らないという人が多かったのが印象的でした。警察の担当者が言うように、自転車は便利な乗り物ですが、ひとつ間違えれば人の命を奪いかねません。しかし、自転車のルールは小学校や中学校などで学んだだけで、大人になってから改めて学ぶ機会はほとんどないように思いますので、車と同じように、自転車の正しい乗り方について学べる場所があれば良いのではないかと思いました。

そして、自転車にも交通ルールがありますので、自分が正しい乗り方をできているのか、一度立ち止まって考えてみてはどうでしょうか。その一歩が交通事故を減らすきっかけになると思います。