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辻川幸一郎 ぶちゴマ、そこから広がるさまざまなコマ

NHK
2021年3月19日 午後3:40 公開

「おもちゃは人間が最初に触れるデザイン」だという辻川幸一郎さん(映像作家)が日本玩具博物館(兵庫・姫路)を訪問、世界各地で多発的に生まれ発展してきたいろいろなコマを手にして語った言葉です。

おもちゃは人が最初にふれる〈デザイン〉

人が生まれ落ちてから最初に惹かれるものがおもちゃ。〈さわりたい〉〈みたい〉〈ききたい〉など、おもちゃは人間の五感のめばえ、原始的な衝動をデザインしている。

〈回転〉のかたち

世界中にさまざまなバリエーションが存在するコマの中でも、僕が最も造形美を感じるのはブチごま。側面をたたきながら回すブチごまは、軸や芯のないミニマルな形状で、木の枝を切り落とし、先端を削るだけのごく少ない工程で作られる。特にこの日本のブチごまは、素朴ながらも凜とした佇まいで、桜の樹肌の模様と先端の彫り跡のコントラストが美しい。回転そのものを形にしたような、コマの原点。

コマと人類

コマは世界各地で伝え合うと同時に多発的に生まれている、人類最古のおもちゃである。古代エジプトからも、6世紀日本の遺跡からも、よく似たブチごまが発見されている。人は古来より〈回転〉が生み出す高揚感やトランス感覚に魅了されてきた。コマは〈回転〉という、人類共通の原初的な欲望のデザインである。

指先の記憶

子どものころ、家にあった逆さゴマを何千回も回した。その軸の感触は指先の記憶として残っており、数十年ぶりに逆さゴマを回した瞬間に鮮やかに蘇った。

コマと音

コマの中には回すと音が鳴るものが数多く存在する。紐を使って音を増幅することを目的としたブンブンゴマなど、遊びだけではなく呪術道具としても使用されるコマもある。コマの〈回転〉は音のデザインである。

コマの一生

コマがこれほどまでに人を惹きつけるのは、そこに死を感じさせるからではないか。勢いよく回り始め、軸が安定すると静かに立ち、やがて乱れだし、最後に倒れる姿に人の一生を重ねてしまう。

コマの起源

コマの起源は、木の実だという説がある。そのむかし人類は、枝から落ちてくるくると回る木の実を見てインスピレーションを得た。〈回転〉というシンプルな自然現象を写したのがコマ。人間が〈回転〉を発見した喜びの瞬間。ワクワクした気持ちこそ〈デザイン〉のおこり。

おもちゃと〈手遊び〉

おもちゃの語源は〈手守り〉〈もちゃそび〉〈手遊び〉。道具を〈手で持つ〉ことで健康を保ち病魔をよけるなど、お守り的な要素も強かった。もちあそび→もちゃそび→おもちゃそび→おもちゃ。

僕はこれまで幾度となく〈手〉をモチーフに映像を作ってきたが、今回のリサーチを通して〈おもちゃ=手遊び〉と、自分の映像がつながった。3歳児の右手を実際に型取りしたパペット「てっちゃん」でコマの発見と手遊びをテーマに映像を作ろう。