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水口哲也 トランスアコースティックピアノ 匠とテクノロジーの出会い

NHK
2021年3月19日 午後3:29 公開

水口哲也さん(エクスペリエンスアーキテクト)が、アップライトピアノの〈響板〉に電気的な〈振動装置〉を取り付けることでピアノ全体がスピーカーになる〈いままでにない音の体験〉を見つけました。

全身で体感して共鳴する〈音〉のデザイン 

ピアノの響きの源である木製の〈響板〉に〈振動装置〉を取り付け、デジタルの音信号を伝えることで、響板が豊かに音を響かせ、ピアノ全体がスピーカーになる〈いままでにない音の体験〉が生まれた。全身で体感して、共鳴する〈音のデザイン〉。

ピアノの中の、アナログ(アコースティック)とデジタルの響宴

アコースティックなピアノの内部には230本前後の弦や鋳物のフレームがあり、このすべてが木製の〈響板〉につながっている。

このアコースティックな〈響板〉に、デジタルの〈トランスデューサー〉という振動装置を取り付け、音信号を伝えることで、ピアノ自体が、大きく、芳醇な音のスピーカーになる。パイプオルガンの音も、シンセサイザーの音も、ピアノの〈響板〉を介して、芳醇な音を聞くことができる。〈木〉が持つ柔らかい感じの音の聞き心地がいい。耳だけで聴くのではなく、身体全体で聴いている気分になる。

伝統技術とデジタルテクノロジーの出会い

これまで騒音や住宅事情から〈ヘッドホンの中にピアノの音を再現する〉サイレントピアノが普及していた。しかし「ピアノが持つ、アコースティックな〈響板〉の響きを生かし、楽器自体から鳴り響く音量を自在にコントロールすることができないか」という発想から、ピアノにトランスデューサーを組み合わせる方法が誕生する。ピアノという〈最高の音を奏でる匠の技〉に、〈電気的技術〉を組み合わせ、新しい価値を生んだ〈音〉のデザイン。

予期せぬ使われ方 それを再発明するのも〈デザイン〉

〈トランスデューサー〉にBluetooth経由で音を伝えると、あらゆる音信号を振動に変え、〈響板〉全体を響かせることができる。フルオーケストラ、ジャズのビッグバンド、人の声、森の音…意外な音がスピーカーとなったピアノ全体から響き渡る。

理論とか知覚レベルで画一化できない、それ以上の〈人の匠〉

〈響板〉の素材は自然の木材であり、その音響特性は一つ一つ、微妙に異なっている。響板のどの部分に〈トランスデューサー〉を取り付けるか、それらをどのように振動させると最高の響きを奏でられるか、ピアノごとに一台一台、細やかに調整されている。最終的に、その音のバランスを調整するのは〈人の匠〉の技なのだ。

感覚の共鳴から 大きな感動が生まれる

耳(音)だけではなく、共感覚的に体験することで、我々は本来の感動を得る。未曾有の感動、〈感動のデザイン〉には、多様な感覚の共鳴が必要。人間は、共感覚的に生き、世界と共感覚的に相互作用し続けることで、幸せを実感できる。シンプルだけど根本的な問いが、このピアノのデザインに詰まっている。