10月から暮らしに身近な食品などがさらに値上げされました。
民間の信用調査会社「帝国データバンク」によりますと、10月に値上げされる食品や飲料の数は6699品目。
9月のおよそ2.8倍にのぼり、ことしに入って最も多くなります。
春先からの小麦や食用油の価格上昇に加えて、原油高による包装資材や物流費の高騰、急速に進行した円安による輸入コストの増加などが重なったことで、10月に値上げが集中していると分析しています。
今月の値上げを種類別に見ると、「酒類・飲料」が2991品目と最も多く、「加工食品」が1819品目、「調味料」が1800品目などとなっています。
まさに「値上げラッシュ」となった今月。県内各地の影響を取材しました。
スーパー 値上げ相次ぐ
鳥取市を中心に13店舗を展開するスーパーです。
10月1日からビールや発泡酒、飲料の一部を値上げしました。
メーカーからの仕入れ値の上昇に伴う措置です。
ハムやソーセージなどの加工食品も9月に相次いで値上げするなど、ことし春以降、多くの食品で値上げが続いています。
信用調査会社によりますと、家計への負担額は2人以上の世帯で1か月あたり平均で5730円、年間では平均6万8760円増えると試算しています。
買い物客からは。
「食品は毎日のことなので、影響はあります。安くなっている物を見つけて買うようにしています」(50歳女性)
「年金生活なので、値上げは響きます」(88歳男性)
「とりあえずビールは9月末に買い込みました」(74歳男性)
「同じ値段でもすごく量が少なくなっていたりする。お買い得品を買っていますが、それでも値段が上がっているので、3つ買うところを2つにしたりしています」(69歳女性)
このスーパーでは客離れを防ごうと、一部の商品については値上げ幅を抑えて販売しています。
エスマート湖山店 大田 信雄 店長
「できるだけ低価格で提供できるように、値上げの中でも、より買い物しやすいようにと思って努力しています」
値上げを踏みとどまる飲食店も
一方、値上げを踏みとどまる飲食店もあります。
JR鳥取駅前で40年ほど前から営業するこちらの居酒屋。
10月からビールの仕入れ値が10%ほど上がりましたが、店での価格は据え置くことにしました。
値上げ前の9月のうちにおよそ1週間分のビール(300リットル)を事前に酒問屋から購入し、当面、対応するとしています。
ストックがなくなれば利益は減りますが、価格はできるだけ変えない方針です。
コロナ禍で減った売り上げが徐々に戻りつつあるなか、値上げで客足が遠のくのは避けたいと考えています。
鳥取だいぜん 藤木 巧 社長
「これで経営が圧迫されることになったら、また何かの形で考えていきたいなと思っていますが、今のところは企業努力で何とかふんばっていきたいなと思っています」
県産の牛乳 11月から値上げ
県内のメーカーのなかには11月からの値上げを決めたところもあります。
県内の酪農家によって生産されたこちらの牛乳。
「大山乳業農業協同組合」は主力商品の「白バラ牛乳」を11月1日の出荷分から値上げすることを決めました。
「白バラ牛乳」の値上げは3年半前の2019年4月以来です。
このほか、乳飲料やヨーグルトも来月から値上げします。
引き上げ幅は出荷価格で5%から10%となるということです。
飼料や燃料価格の高騰を受けて、酪農家から生乳を買い取る価格を引き上げることになったほか、包装資材や輸送費などの製造コストも上昇していることが要因だということです。
大山乳業農業協同組合 販売部 川上 一敏 部長
「もうメーカーの自助努力では吸収しきれない状況となっています。消費者の皆さんにはご理解いただいて、鳥取県の酪農を守る意味でも今後も引き続き牛乳を飲んでいただきたいと思います」
園児の給食 材料費が高騰
相次ぐ値上げで、子どもたちの成長に欠かせない給食を提供している保育施設でも対応に苦慮しています。
鳥取市の松保保育園では、園児およそ170人に給食を提供しています。
保護者からの給食費は、鳥取市の基準に準じて3歳以上の園児で1人あたり月4500円。
一方、食材費は今年度に入ってからおよそ20%も上昇。
こうしたなかでも栄養価を維持するためには食材の量を減らすことはできないため、保護者からの給食費だけでまかなうのが難しい状況になっています。
それでも園は、保護者の負担を増やさないよう、当面は給食費を上げずに対応していく方針です。
担当者は値上がりしている油を極力使わない調理法に変えたり、食材を工夫したりして、材料費を抑える取り組みを続けています。
園を運営する鳥取福祉会 澤 恵 主任管理栄養士 「とてもいろんなものが高騰しているので、すごく苦労しています。子どもたちの1日の栄養の45%から50%は保育園の給食やおやつでまかなっていて、子どもたちの成長には欠かせないところなので、そこは必ずクリアしていくようにがんばっています」
食料品の値上げに伴い同じような悩みを抱える保育園は県内でも多いとみられています。
こうした中、鳥取市は市内の保育園に食材費を補てんする支援金を支給することにしています。
原油価格の高騰や円安は収まる気配はありません。
値上げの動きは今後も続く可能性があり、県内でも厳しい状況が続きそうです。