11月12日、松江市の島根原子力発電所で重大事故が起こったことを想定して、避難の手順などを確認する訓練を鳥取県と島根県が合同で実施しました。
鳥取県では、原発から30キロ圏内に住む境港市と米子市の住民あわせて78人が、自家用車とバスを使って参加。
原発再稼働に向けた地元同意の判断が示されてから初めてとなる訓練で改めて浮かび上がったのは、想定外の事態に対応するための準備の重要性でした。
自家用車での避難
境港市中浜地区の自治会長で、原発からおよそ20キロに住む足立勝美さんは、地区を代表して今回初めて自家用車で訓練に参加しました。
今回の訓練の目的地は足立さんの自宅から100キロあまり離れた鳥取市内の避難所。
途中に県中部の琴浦町にある体育館で放射性物質が付着していないか検査を受けることになっています。
訓練当日、足立さんは境港市から指定された避難ルートをカーナビに入力し、午前9時前に境港市を出発しました。
避難開始 道路状況は
最初に使ったのは、島根県から米子市までを結ぶ国道431号線。
平日は通勤などの影響で、特に朝晩はかなり混雑することもありますが、この日は土曜日で車の流れはスムーズでした。
土曜日の朝ということもあり順調に進む足立さん。しかし検査会場までの道中で想定外の事態が起きたのです。
ナビの音声 「およそ20キロ先、車両事故のため通行止めです」
予定していたルートで、交通事故による通行止めが発生。
市の担当者に連絡して急きょ別の道を通って検査会場に向かうことになりました。
【検査会場に到着】
出発から1時間あまりで放射性物質の検査を行う琴浦町の会場に到着。ルートを変更したものの、ほぼ予定通りに進むことができました。
検査会場では、係員の誘導で専用の機器を使って放射線量を確認する検査や、車体やタイヤを拭き上げて除染する作業を実施。
足立さん 「実際にはこの検査をここで何台もやるんだな。台数が増えると混むだろうな」
全世帯が避難する際は、県内8つの検査会場で最大2万5000台ほどの車両が検査や除染をすることになっています。所要時間は1台につき5分ほどでしたが、足立さんは実際に避難する際の混雑を懸念していました。
訓練を終えて
検査を終えて、避難所に向かう足立さんは、その後も順調に走行。
自宅を出発してから約3時間後に目的地に到着しました。
一方、訓練を終えた足立さんが感じていたのは、計画通りに避難する難しさでした。
(写真:足立さんインタ) 「避難所での生活も考えると、どうしても自家用車での避難が多くなり、検査会場に車が大量に来ると時間がかかる。数と体制の問題がスムーズにいけばストレスはそうかからないのかなと思うが、なかなかやってみないと分からない」
不測の事態への備え
今回の訓練に参加したのは自家用車とバスを合わせて14台。
綿密に計画を立てたうえで、参加人数を絞って行った訓練でした。
それでも、事故による通行止めでう回せざるを得なかったり、バスを先導するパトカーが動けなくなって出発が遅れたりするなど、不測の事態もいくつか起きました。
最大2万5000台ほどの自家用車が避難する鳥取県の想定で、不測の事態が起きたときの混乱も大きくなると懸念されます。
必要なのは、不測の事態をいち早く察知し、すぐさま対応できるような仕組み作り。県も対策を進めています。
監視カメラで異変を察知
その1つが原発から30キロ圏内の国道や県道など47か所の道路に設置されたカメラ。
災害が起こった際にひび割れや倒木などの異変が起きていないか、いち早く気づけるようにと、県が設置しました。
県原子力安全対策課の木本達也課長は、訓練などを通して、「想定外の事態」は起きるものと考えて、住民にすばやく周知できる体制を整えることの重要性を感じています。
「このシステムによって、どの道路に損傷や渋滞があるかを判断し、迅速な避難指示や交通規制が可能になる。異変に柔軟に対応し、最適な避難ができるのではないか」
訓練を通して見えてきた「想定外の事態」は起きるものという前提で、それに対応する仕組み作りの重要性。
その仕組みが緊急時に正常に作動するのか、避難に必要な情報をすべての住民に伝えられるのかなど、検証すべき課題は多く残っています。
原発の再稼働に向けた動きが加速するなかで、住民1人1人の命と安全を守るための取り組みをどのように進めていくのか、注目していく必要があると感じます。