「隠れた和牛の産地、鳥取県」その歴史は

NHK
2022年9月30日 午後6:26 公開

「和牛のオリンピック」とも呼ばれる5年に1度の共進会が、ことし10月に鹿児島県で開かれます。鳥取和牛は、前回の第11回大会で肉質日本一となりましたが、実は第1回大会でも日本一を獲得しています。鳥取県が歴史のある和牛の産地だと知っていますか?

(鳥取局記者 吉川綾乃)
   

第1回大会で日本一「気高」号

鳥取が和牛の産地として知られるきっかけになったのが、お父さん牛の「気高」号。関係者の間では“伝説の名牛”として知られています。1966年に開かれた第1回の「全国和牛能力共進会」の体格と肉質を総合的に審査する部門では、「気高」号を父とする子牛が1位を獲得。体が大きく、肉の量が多い子牛になるのが大きな特徴でした。
  

鳥取和牛の低迷 要因は日米貿易交渉

初代チャンピオンなのに、ほかのブランド牛と比べると知名度は、まだまだの鳥取和牛。
その大きな要因となったのが1980年代の「日米貿易交渉」です。1991年から牛肉の輸入枠が撤廃されることが決まり、アメリカ産の安い牛肉が多く輸入されるようになりました。
  

“肉量”から“肉質”へ 変化に対応できない鳥取

アメリカ産に対抗するため、全国の和牛農家は、改良のポイントを霜降りの多さをはじめとした「肉質」に重点を置いて差別化を図ろうとします。しかし、鳥取県では、以前と変わらず「肉の量」を重視したため、鳥取和牛が低迷してしまったとされています。
  

「白鵬85の3」知ってますか?

優秀な種牛の開発が急務だった鳥取県。伝統的な血統から優秀な種牛を開発しようとしますが、なかなかうまくいきません。農家などの声を受けて2001年に方針を転換。他県の血統も取り入れ、よりすぐれた種牛の開発に乗り出します。ようやく誕生したのが、お父さん牛「白鵬85の3」です。10年以上の苦労の末、2014年に種牛として認定されました。
  

悲願の日本一 鳥取和牛の復活

認定から3年後の2017年。前回の大会で「白鵬85の3」の子牛が、肉質日本一を獲得。大会のあとには「白鵬85の3」の遺伝子を求めて、競りには鳥取県外からも多くの買い付け人が訪れ、価格も全国トップレベルになりました。
  

鳥取の子牛市場支える 白鵬85の3

こちらは、鳥取県内の子牛の平均価格の推移です。2015年までは毎年のように全国平均を下回っていました。しかし、「白鵬85の3」が本格的に出荷され始めた2016年ごろから価格が急上昇。ここ数年は、新型コロナによる飲食業の低迷で子牛の価格が下がっていますが、そうした中でも全国平均を上回っていることが分かります。しかし、「白鵬85の3」は、高齢のため種牛としての寿命は、あと数年。次の世代のエースが求められています。
  

種牛“元花江”次のエースになれるか

鳥取県は今回の大会の同じ部門に、こちらの「元花江」で挑みます。霜降りの具合は「白鵬85の3」を上回るともされている注目の種牛です。

群馬県出身の私、実は5年前に鳥取県に赴任するまで鳥取和牛を知りませんでした。しかし最近では、家族から「レストランで食べたよ」などと連絡が入ることも。その広がりを実感しています。10月の大会でも再び肉質日本一に輝き、さらに鳥取和牛を発展させられるか。結果に期待がかかります。