【参議院選挙】去年とは一変の結末 なぜ?(2022年7月11日放送)

記者・仲田萌重子
2022年7月11日 午後8:10 公開

10日に投開票が行われた、参議院選挙静岡選挙区。去年の補欠選挙と結果が一変しました。何が起きていたのか。18日間の選挙戦を振り返ります。
(記者・仲田萌重子)

(記者) 今回の開票結果は、去年の参議院補欠選挙で落選した自民党の新人・若林さんが62万票を超える得票で当選。次いで、前回・6年前に当選した現職の平山さんが44万6000票余りでした。一方で、8か月前の補欠選挙で65万票を獲得して当選したばかりの山崎さんは25万票と票を大幅に減らし、惨敗しました。

(キャスター)
当選した2人の選挙戦はどのようなものだったのでしょうか。
(記者) トップ当選を果たした若林さん。自衛隊の駐屯地がある御殿場市で12年間市長を務めた経験をもとに、安全保障政策を重点に訴えました。自民党は全面的にバックアップし、県連会長の城内衆議院議員が各地で演説に同行しました。 また自民党に入党しながら県連に距離を置かれていたこの人も。

【細野豪志・衆議院議員】
「この選挙戦、本当に彼は懸命に戦ってきました。安全保障のスペシャリストとして必ずやってくれると思います」

(記者) 若林さんは去年の補欠選挙で落選してからの8か月で、企業や団体を2000か所回ったといいます。蓄えた力を今回、存分に発揮しました。
(キャスター)
全国的に自民党が大勝する中で、その勢いもいかした形ですね。

(記者) 一方、現職同士の2位争いを制したのは平山さん。前回の選挙を支えた野党勢力や労働組合の支援がない無所属での挑戦となりました。政党政治がすべてではないと考える一部の経済人の支援を受けましたが、事務所の人出からしても組織力の不足は明らかでした。 街頭演説は苦情も多いとして回数を減らし、小規模な座談会を重視するスタイルをとりました。
(キャスター)
組織力を誇る若林さんとは対照的ですね。

(記者) こちらは、市や町、そして静岡市と浜松市の区ごとに、得票が最も多かった人を色で示した地図です。平山さんが地盤とする磐田市以外はすべて、若林さんが最多となりました。

そしてこちらは、2位の平山さんと3位の山崎さんで得票の多かった地域を色分けしたものです。

山崎さんが出身地であり、市議会議員や県議会議員時代に選挙区としていた浜松市中区以外のすべてで平山さんが勝ちました。山崎さんは地元の浜松市でもトータルで勝てなかった形です。

(キャスター)
若林さんは自民党の組織力というのはわかるんですが、平山さんの勝因は何だったのでしょうか。
(記者) NHKの出口調査から要因を分析しました。 調査は、県内40か所の投票所で投票を終えた5446人を対象に行い、67.2%にあたる3662人から回答を得ました。

まずふだん支持している政党と投票先の分布です。

若林さんは、自民党支持層の60%台後半、推薦した公明党支持層の50%台半ばから支持を得ました。この比率は過去の自民党候補者と比べると高くはないのですが、自公の支持層はボリュームが大きく、票が積み上がりました。 一方の平山さんは支持政党がない、いわゆる無党派層の30%台後半から支持を得たほか、立憲民主支持層の40%台半ば、そして日本維新の会の支持層の40%あまりからも支持を得ました。さらに与党支持層にも食い込み、自民党支持層の10%台後半、公明党支持層の20%あまりからも支持を受けました。
(キャスター)
若林さんや山崎さんを支える政党の支持層からも平山さんに票が流れたんですね。
(記者) はい。敗れた山崎さんは、推薦を受けた国民民主党の支持層の40%台後半と、限られた層の中すら固め切れませんでした。「自主支援」を受けた立憲民主党支持層の中でも、平山さんを選んだ人のほうが多かったという結果でした。

(キャスター)
山崎さんは去年10月の補欠選挙で当選して全国的な注目を集めましたが、どうしてここまで状況が変化したんでしょうか。
(記者) 3つ挙げられます。

▼まず去年の補選は野党系の無所属候補ということで立憲民主党からも推薦を受けたのに、当選直後に国民民主党が中心の会派に入ったことです。まずこれで立憲民主党が反発しました。 ▼それとほぼ同時に女性問題が報じられました。当初は男女関係を否定しながら一転して 「おおむね事実」と認め、「『隠せるものならば』という心の弱さがあった」と釈明したことで、イメージを損ねました。 ▼さらに後ろ盾だった川勝知事が、山崎さんの応援演説で飛び出したコシヒカリ発言を理由に去年11月に県議会で辞職勧告を受け、今回山崎さんの支援に動きませんでした。 選挙公示日間近になって立憲民主党の一部の議員が「野党の議席を失うわけにはいかない」と山崎さんの自主的な支援に乗り出しましたが、「支持者に『山崎を頼む』とは言いづらかった」という声も聞かれました。

(キャスター)
このように聞くと、今回の結果はある意味予想された流れだったんですね。今回の選挙結果は静岡県にどのような影響を与えるでしょうか。
(記者) 今回はリニア中央新幹線や浜岡原発の是非など、県内の課題が争点としてクローズアップされたわけではなく、県政に与える影響は限定的だと思います。川勝知事はきょうの会見で次のように述べました。
(川勝知事)
「失望しました。憲法改正、エネルギー、物価高、安全保障の問題についても、取り上げるのは極めて大きい。リニアは言うまでもない。そうした観点での激しい論戦は低調だった」

(記者) また考えられるのは今後の県内の選挙、特に来年春の統一地方選挙への影響です。

静岡市長選挙、浜松市長選挙、静岡県議会議員選挙など、地域に影響の大きい選挙が控えています。去年の知事選で川勝知事、参院補選で山崎さん、そして今回の選挙で平山さんの当選の原動力となった無党派層がどう動くかが注目されます。また県内の比例代表の結果を政党別に見ると、最も多かったのは自民党ですが、県内では地方議員が1人いるだけの日本維新の会が、公明党や立憲民主党を上回って2番目の得票となりました。

さらにれいわ新選組が7万票、参政党が5万6000票と、それぞれ県内では活動拠点が乏しい中で一定の得票がありました。各党は今回の得票結果をもとに、今後の選挙での候補者擁立に向けた検討を進めるとみられます。

(キャスター)
今回は投票率も上がりましたね。
(記者) はい。明確な争点が見えない中で盛り上がりに欠けるという声も聞かれましたが、投票率は52.97%と、前回・3年前の選挙より2.51ポイント高くなりました。

**投票率が上がった要因は明確にはわかりませんが、今回は投票日の2日前に安倍元総理大臣が銃撃され、選挙の意義や民主主義のあり方について深く考えた人も多いと思います。政治への関心を絶やすことなく、政党や候補者の動向をよく見ながら、投票によって意思を表すことが続いてほしいと思います。

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