平和と向き合う 高校生たちの「ゲルニカ」(2022年5月25日放送)

記者・遠藤真由美
2022年5月27日 午後9:19 公開

ロシアによるウクライナ侵攻から3か月が過ぎましたが、事態が収束するめどはいまだ立っていません。こうしたなか「キッズ・ゲルニカ」と呼ばれる平和をテーマにした作品づくりに富士宮市の高校生たちが挑みました。高校生がたどりついた「平和」とはどのような形だったのでしょうか。(記者・遠藤真由美)

小麦畑の上に広がる鮮やかな青空。描いているのは富士宮市にある県立富士宮東高校の芸術コースに所属する2年生23人です。

「きれいじゃない、けっこう」

『キッズ・ゲルニカ』と呼ばれるこの取り組み。子どもたちが平和への願いを込めて、縦3.5メートル、横7.8メートルの絵を完成させる国際的なプロジェクトです。かつて画家のピカソが無差別爆撃の残虐性を描いた「ゲルニカ」と同じ大きさです。

5年前には、この取り組みにウクライナの子どもたちも参加しました。描かれたのは、ペンキで虹を描く子どもや、笑顔を浮かべる人たち。参加した子どもの中には当時、戦闘が続いていた東部のドネツク州から避難した子どもも含まれていました。

「キッズ・ゲルニカ」には子どもたちの平和への願いが託されてきました。

今回、作品づくりを中心になって進めた2年生の宇佐美万尋さん。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をきっかけに作品づくりに取り組むことになりました。平和をテーマした絵を描くことに最初は戸惑ったといいます。

(宇佐美万尋さん)

「平和っていう広い、あまり具体的じゃないものの中から自分たちでモチーフを考えて、1つの絵にまとめるという作業が本当に難しかったですね」

戦争を知らない自分たちに、何が描けるのか。宇佐美さんが最初に考えた図案はカラフルな色使いで描かれ、平和そのものをイメージしました。ほかの生徒が考えた図案も笑顔の人々や平和を象徴する「ハト」など、わかりやすい平和のモチーフを描いていました。

高校生としてどのようなメッセージを込めるべきなのか。世界史の先生が特別に授業を行うことになりました。

「ロシアの言い分は『我々は一体である』。ウクライナまでNATOに加盟されてはもう、自分達が本当に危険になる」

そこで知ったのは、ロシアとウクライナで続いてきた対立の歴史。それは、これまで自分たちが考えていたよりも根深い問題でした。

(鈴木豊教諭)

「まったく知らないで、どっか遠い国の話だなと思ってる限りだと、なかなか自分ごとにならない。自分の何か、生活とか、考え方とか、そういうのに引きつけて考える、思いを寄せるということが大事かな」

『自分ごとにする』とはどういうことか。宇佐美さんは模索していました。

「図星だったっていうか。結構安全な範囲で、自分たちの立場から考えちゃってたなって」

何が起きているのかもっと知るため、新聞やテレビのサイトなどを自分で調べて情報をまとめました。

(記者:どんなことが書いてある?)

「日本に避難民として来られた方の話です。今どういう生活をしているんだろうと、気になって調べました」

「平和って言うのを軽々しく考えているのが、ちょっと恥ずかしかったです。日本がこれから平和の道を行くために、自分が知っておくことが大事だと」

歴史や、今起きていることを学んだ上で絵にどのような要素を入れるのか。生徒たちは議論を重ねました。

「モチーフが多すぎる」

「それなの」

「そこまでしないと表せないじゃん」

「机の上で戦争から平和を表すんでしょ」

話し合いの結果、さまざまな国の人たちが同じテーブルにつき、平和について議論する様子を描くことにしました。

そしてもうひとつ、こだわったのは。

「平和だけどその裏に、戦争があるっていうとか」

平和を意味する「ピース」をパズルで表現。それをあえて欠けさせて不完全なものにすることにしました。

(宇佐美さん)

「平和っていうパズルのピースが崩れたときの裏側を描こうとしてて。こう一見平和に見えるけど、そのピースが少しでも崩れたら、その裏にあるものをっていうのを考えてもらいたくて」

当たり前のように感じてきた平和はとても壊れやすいものなのではないか。宇佐美さんたちがたどり着いた表現でした。

5月23日、絵が完成しました。テーブルには戦車や破壊された建物をのせ、目を向けなくてはならない現実を表現しました。

一方、テーブルの片方にはパンを置き、話し合いによる解決への願いも込めました。

そして崩れやすい平和。世界の向かうべき方向、平和について見た人たちに考えてもらう絵になりました。高校生23人による2か月間の集大成です。

(宇佐美万尋さん)

「これを描く前の私たちは、やっぱり自分ごとにできていなかったので。私たちひとりひとりができることはやっぱり少ないと思うんですけど、自分たちができる範囲で行える平和的な活動っていうのはあると思うので、そういうのを積極的にしたらいいと思います」

完成した絵は6月1日に富士宮市民文化会館で、6月27日から30日まではイオンモール富士宮で、7月1日から8日には富士宮市役所のホールで展示される予定です。

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