4月7日、県内の県立高校で初めて、介助が必要な車いすの女子生徒が入学式を迎えました。事故で一時は生死をさまよいながらも必死のリハビリで復帰し、夢も見つけた15歳の今の思いを取材しました。
(記者・仲田萌重子)
桜舞う春。県立伊東高校の入学式に車いすの新入生の姿がありました。田中愛唯さん(15)です。
(入学おめでとう)
(愛唯さん)
「ありがとうございます」
(緊張してる?)
(愛唯さん)
「うん、でも楽しみです」
伊東高校では、愛唯さんの入学に合わせて、県立高校で初めて介助員をつけました。さらに、階段を上り下りできる昇降機を導入したり、災害時にスムーズに避難出来るように教員が訓練したりして受け入れを進めてきました。
(愛唯さん)
「ずっと憧れていた伊東高校に行けてうれしいです」
一時は、特別支援学校への入学も検討した愛唯さん。それでも前例のない、伊東高校の普通科を選んだのは、ある夢を抱いたからでした。
【事故で寝たきりに リハビリに挑む】
伊東市で育った愛唯さん。小学生の時は、ピアノや空手に熱中する活発な女の子でした。しかし、中学1年の秋、日常を一変させる出来事が起きます。
愛唯さんが乗っていた車が交差点で対向車と正面衝突。愛唯さんは意識不明の重体。一命は取り留めたものの、胸から下と、手の指に麻痺が残り、寝たきりの状態になりました。
(愛唯さん)
「急に自分の身の回りのことが 何も出来なくなって。人に助けてもらわないといけなくなっちゃった。当たり前の髪を結ぶとか、指が動かないとどうしても出来なくて。出来ないってわかったときに悲しかった」。
治療やリハビリのためにいくつも病院を転院。周囲の人たちに励まされながら厳しいリハビリに挑みました。
(愛唯さん)
「どこの病院でもまゆちゃん頑張っているねとか。すごいみんな応援してくれて。水筒一つ取れるようになるとか、ベッドを移動するとか、一つずつできるようになると本当にうれしい」
【私も恩返しを 高校へ】
中学に復学して友達との再会を喜ぶ中で、リハビリ中に感じていた“医療の道に進みたい”という夢が芽生えたそうです。
リハビリ病院で作ってもらった字を書くための装具を使って、得意な英語の勉強などに打ち込み夢への第一歩となる高校受験を目指しました。
(愛唯さん)
「この装具を使ってからまた自分でかけるんだって感動したのを今でも覚えています」
今度は、自分が同じ境遇の人たちを支えたいという思いが募っていきました。
(愛唯さん)
「みんな患者さんたちは、自分で何もできなくなっちゃった、悲しいとか、どうすればいいんだろうとか不安な思いがいっぱいある。それを聞いてあげたりとかして、わかってあげたいなって。その気持ちわかるよって」
努力が実り入学した伊東高校。まずは、医療の分野で「自分ができることは何か」を模索するため、苦手な理科や数学も頑張りたいといいます。
(愛唯さん)
「入院している中で、医療従事者さんにとかお世話になって、私も恩返しというか、役に立てたらいいな。医療の仕事で自分のやれることがまだ見つけられていないから、まだ確定はできないけど、高校の中で、人の役にたてる仕事を探して行きたい」。
事故で180度変わった日常の中で見つけられた夢。周囲への感謝を忘れず、笑顔で歩んでいきます。