台風15号の記録的大雨と浸水被害 “見えない被災” が今も… 静岡市清水区

ディレクター 小堂光梨
2022年11月5日 午後2:59 公開

(2022年11月4日放送)

9月、台風15号による記録的な大雨で大きな被害が出た静岡県内。
被災した地区の取材を続けると、一見するとわからない“見えない被災”が広がっていることが分かってきました。
(ディレクター・小堂光梨)

【1か月が過ぎ見つかった被害】

大規模な断水や床上浸水など大きな被害を出した静岡市清水区。

静岡市清水区・上空からの画像

1か月が過ぎた現地で次々と起きていたのが“見えない被災”でした。
訪ねたのは、清水駅の近く、およそ300世帯の住宅が集まる渋川地区。
近くを流れる巴川の流域で、床上浸水などの被害が多数でました。

巴川の氾濫で浸水被害が出た渋川地区の地図

(滝澤七瀬さん)
ヨガスタジオを運営する、滝澤七瀬さんは、8年前に建てた自宅の1階でレッスンを行ってきました。

ヨガスタジオを経営する滝澤七瀬さん

(当日の映像、夫との会話)

「車両保険、入っていたよね?」

「入ってない」

水につかった滝澤さんの車

大雨に襲われた当日。1階のスタジオは、床上50センチ以上が泥水に浸かりました。

浸水した自宅周辺の様子

滝澤さんは家族全員で泥をかき、2日後にレッスンを再開させました。

家族で泥かきをしている様子

しかし、取材した日。施工業者との建物の確認で思わぬ事態が判明します。

施工業者と床の被害を確認

(施工業者)

「ほんとだ濡れてるね、まだ」

(滝澤さん)

「濡れてるんだ、え~」

床のシートをはがすと、床板が湿っているのが分かった

表面のシートをはがすと、1か月が経っても、床板が濡れていたのです。水分を含んで変形していた部分があることも分かりました。

水に濡れた床板

(滝澤さん)

「え~え~。払えるかな、お金」

【行政支援は“対象外”】

床板の一部だけで60万円ほどの被害。修理が必要なところは他にも多く残っています。

すぐに補助などの制度がないか、市に確認することにしました。

(市の担当者)

「いま店舗であったり、事業所なんかについての支援っていうのは、まだいまの段階ではちょっとない、というお答えしか」

(滝澤さん)

「あ~じゃあ家だけど…」

(市の担当者)

「今後(支援が)出てくるかもしれないっていう答えなんですね」

事業者は応急修理の支援対象外という市の回答

現在、静岡市が示している応急修理の支援は、住宅に対してのみ。1階は事業所扱いになるため、支援の対象からは外れていました。

(滝澤さん)

「現実感がどんどん増してきて。建物の4分の1ぐらいしか終わっていないローンに加えて、ここを直すローンみたいなものをまたお借りして、そして車のローンもっていうことになるから。もうほんとに無理ですよね」

厳しい表情を浮かべる滝澤七瀬さん

【孤立する被災者も】

地元の自治会によると、渋川地区にある事業所は67。そのうち30か所以上で床上浸水するなどの被害を受けましたが、今の段階では、応急修理の支援の対象とみなされていません。

渋川北自治会では67事業所のうち30か所以上で床上浸水

事業所だけでなく、住民の生活にも、“見えない被災”が広がり始めています。

被災から1か月すぎ、行われた地元自治会の話し合いを取材すると。

(参加者たち)

「後片付けして骨折ってる人結構いる。これは全然表に出てこない」

「意外と多いと思う」

危惧されていたのは、悩みや不安を抱え込み続けてしまう人の存在でした。

(参加者たち)

「(被災して)移動手段がなくて病院の受診が大変になったり、間があいてしまったり。毎月行っているのが2か月に1回になっているとか」

「無理していると、それに周りが気が付かない」

(渋川北自治会会長・加藤勉さん)

「家に伺うと、畳も濡れたままで、畳の上にブルーシートを敷いて、その上で生活している。そういう人に限ってボランティアも頼まないし、自治会にも助けを求めてこないんですよね。そういう人に対しては、なんとか支援をしていきたい」

【解説・2つの“見えない被災”】

(キャスター)

取材にあたった小堂ディレクターとお伝えします。この“見えない被災”とは、どのようなものなのでしょうか?

(小堂光梨ディレクター)

取材から見えてきたのは、こちらの2つです。

▼「支援制度が届かない」というのは、り災証明の発行が遅く支援が受けられなかったり、そもそも実態や数が把握されずに支援制度の対象にならない人がいたりすること。

▼「長く続く心の問題・ストレス」というのは、住んでいた地域に戻れなくなってしまったり、被害によってストレスを感じる状態が続いたりして、不安や悩みが大きくなっていくということ。

(キャスター)

そのような“見えない被災”に直面している人を、どう支えていけば良いのでしょうか?

(ディレクター)

各地で被災した人たちの相談会を開いている弁護士の永野海さんは2つの点を指摘しています。それがこちらです。

まずは「自治体が現場に情報を取りに行くこと」です。

たとえば東日本大震災の後、静岡市と同じ政令市である仙台市は、職員が仮設住宅などを戸別訪問して困りごとや状況の把握を行い、精神的なケアも含めて必要な支援につなげていく取り組みを行いました。

もうひとつが、「最後のセーフティーネットは地域のつながり」。

永野さんは、これまでの経験から、本当に困っている人に情報や支援を届ける最後の手段はやはり「人」で、そのためには地域のつながりを普段からつくっておくことが、一番重要だと指摘しています。

【動画】