スズキ 鈴木俊宏社長 EV・脱炭素時代に向け描く戦略は(2022年2月9日放送)

記者・渡邉亜沙
2022年2月9日 午後6:04 公開

自動車メーカー「スズキ」を40年以上率いてきた鈴木修会長が2021年に退任して以降、経営トップを務めている鈴木俊宏社長。NHKの単独インタビューに応じ、今後数年以内に商用車の分野で先行してEV=電気自動車を開発する方針を明らかにしました。世界中でEV競争が激化するなか、社長の描く戦略とは。

(聞き手:NHK浜松支局記者・渡邉亜沙)

2015年に社長に就任した鈴木俊宏社長。

長年スズキを率いてきた修会長が2021年6月に退任したあと、スズキは鈴木社長をトップとして専門的な知識を持つ取締役を増やした新しい体制に移行しました。

今の体制をどう見ているのか、聞きました。

(スズキ・鈴木俊宏社長)

「今まではやはり(鈴木修)相談役が一人の能力でやってきましたけれども、もうそういう時代じゃなくて。スズキが生きる道ってどんなんだっていうところをしっかりそれぞれの専門家が意見を出し合いながら道筋をつけてやっていかなければだめだと」

世界中でEVの開発競争が激化するなか、スズキにとってもEVは大きな課題になっています。

鈴木社長は、数年以内に商用車の「エブリイ」をベースにしたEVを開発し、運送業者などに使ってもらいながらデータを集め、2025年までにEVの販売開始を目指す考えを明らかにしました。

「商用車をうまく使わせていただきながら、技術の蓄積をしながら乗用系に転換していく。新しい取り組みなので、最初からパーフェクトにはできないですよ。まず60点でもいい、50点でもいいから作ってみて、使ってもらって、どういうところが問題か、それに対して技術者がどういう改善ができるか。試行錯誤しながらよりよいEVとは何なんだというところを見つけ出すというような取り組みをしなきゃいけない。

国なりが充電ステーションを日本の国土にまんべんなくつくっていくという政策をやってもらうことも必要でしょう」

スズキと取り引きなどを行っている会社は全国に約6000社あるといわれます。車の動力をエンジンからモーターへ転換することで部品の数が減ることから、地元をはじめ多くの企業に影響を与えることになります。

企業との対話を重ね、支援の方法を考えていきたいとしています。

「サプライヤー(取引企業)さんをしっかりと支えていくためにもスズキ自身がしっかりしなきゃいけない。未来の絵をしっかりと描かなきゃいけない。サプライヤーさんが持っている強み、そういう技術を別の業界で生かしてもらうことも提案しながらやっていくことは必要かな」

数々の課題に向き合う中、息抜きはバイクです。大型の免許を持ち、休日には自ら乗りこなします。

「風と一体になれるというか、風を感じられる。気持ちいいし、運転に注意は必要だけど、それでもいい気分転換にはなるから」

部品不足や原材料価格の高騰で先行きが不透明な状況が続くなか、自動車業界の転換期をどう乗り越えていくのか。

「カーボンニュートラル、未知との遭遇じゃないけど、そういう皆の知恵を合わせても解を導き出せるかどうかも分からない課題というのが出てきています。そんなところは今まで以上に難しい」

「『軽自動車の原点ってやっぱり“下駄代わり”だよね』というようなところを忘れてはいけないんじゃないかな。ここから離れていくと電動化のときに失敗するんじゃないかというふうに思っております。本当に環境にやさしい車って何か。軽自動車に求めるものって何ですかと。そういったところを本当に真剣に考えてやっていかないと生き残れない」