(2023年3月10日放送)
東日本大震災から12年です。発災当時のことを直接知らない子どもたちが増え、どのように教訓を伝えていくかが課題となっています。この春、小学校を卒業する子どもたちの多くは12歳。卒業を前に県内の小学校で行われた命を守るための授業を取材しました。(防災キャスター 大窪愛)
「もうすぐ東日本大震災から12年になります。みなさんは今何歳ですか?」
「12歳」
「ちょうど震災の年(度)に生まれた子たちですね」
富士宮市の小学校で行われた6年生対象の防災授業。発表していたのは、家族から聞いた12年前の3月11日のことです。
「家にいて、俺をすぐ連れて外に出たって」
「工場で壊れたものはなかったと父が」
「おばあちゃんの家が流された」
震災を直接知らない子どもたちに「自分事」としてとらえてもらう狙いです。
授業を企画した、6年生の担任を務める中川優芽さん。
震災などをきっかけに防災教育の重要性を痛感し、市内の小中学生のほとんどが津波から逃れ注目を集めた、岩手県釜石市で避難行動を学びました。
自分の判断で命を守る行動をとることが大事だと考え、釜石市で行われていた「下校時の避難訓練」を静岡県でも行ってきました。
(中川優芽さん)
「とっさに逃げる行動する判断ってすごく大事だなって感じます.釜石で学んだことを静岡で子どもたちに還元していきたい」
今回の授業を行うにあたり、声をかけたのが6年生の保護者の1人で、福島県郡山市から避難してきた、小笠原明日香さんです。
「これがこっちに引っ越してきたばかりのころの写真になります」
発災当時、息子の日向くんは、生後1か月。原発事故への不安もあり、夫の会社の配慮で富士宮市に移り住みました。
(キャスター)「東日本大震災のこと知っている?」
(日向くん)「あまり知らないです」
日向くんの同級生にも震災を知ってもらいたいと授業に参加することを決めました。
(小笠原明日香さん)
「(子どもたちは震災が)あったことは知っていても、どんなことが起きたまでは多分、分からないと思う。子どもたちに自分の経験したことを伝えていって、それをいかしてほしい」
(中川優芽さん)
「本日ですが、東日本大震災について、日向君のお母さんから話を聞きたいと思っています」
(小笠原明日香さん)
「寝ていた日向を抱きかかえて、あわてて外の駐車場に飛び出してしまいました。だんだん揺れが激しくなってきて、塀が波打つように揺れて、反対側にある家から屋根の瓦が少しずつ落ちてきて、足元で砕けました」
震度6弱の揺れ。倒壊する多くの建物。
同級生の母親が語る当時の状況に、子どもたちは真剣な表情で耳を傾けます。
(小笠原明日香さん)
「家にいるとき、寝ているときに地震がくるかもしれない。みんなおうちの周りの状況はそれぞれ違うよね.だからおうちの人と一緒に外に出たらどこにいけば安全か考えてほしいと思います.災害が起きたらどうなるか.考えたり知ろうとする心を、これからもみんな忘れないでください.被災者の一人としても、みんなの同級生のお母さんとしても、みんなが無事に大きくなるのを心から願っているし、みんなの成長を楽しみにしています」
震災を知ることで、ひとりひとりが自分で判断できるようになり、いのちを守ってほしい。釜石での経験を通じて、中川さんがひとりでも多くの子どもに伝えたい思いでした。
(中川優芽さん)
「先生は、みんなに震災のこと、この一年間たくさんたくさん教えられて幸せでした。だけど、みんなが命を守ってくれなかったら教えたことも意味がなくなってしまうので.学習したこと大切にして、これからの災害に備えていってほしいなと思っています。絶対に死んじゃだめだよ。いい?先生も命を守りたいと思います」
(児童)
「お話を聞いて怖くて。これからも備えて、(災害が)いつ来るか分からないから、これかも知っていこうと思いました」
「みんなに死んでほしくないと言われたので、地震が起きたときにあせらず状況判断をしっかりしていきたい」
(中川優芽さん)
「この子たちが卒業したら、ついにもう小学校に来る子たちって、震災後に生まれた子たちがあがってくるんだと思うと.より、どうしたら伝わるんだろうとか、静岡で災害が起きたときに、教訓をつないでいけるんだろうっていうことを真摯にこれからも向き合い続けて学校現場でできることを尽くしていきたい」
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