【解説】一進一退?静岡市の大型事業はどうなる(2022年5月11日放送)

記者・三浦佑一
2022年5月11日 午後11:22 公開

ことし「たっぷり静岡」では、いずれも静岡市が進める▼水族館と博物館の複合施設建設計画、▼東静岡アリーナ誘致構想、▼清水エスパルスの本拠地となる新しいサッカースタジアム構想について、お伝えしてきました。

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放送のあと、番組宛てに「トータルでいくらかかるのでしょうか?」など多くの質問や意見が寄せられました。そこできょうは静岡市の大型事業について、これら3つ以外のものも含めて全体像をお伝えします。(記者・三浦佑一)

【大型事業の全体像は】

(キャスター)

街がどう変わるのか、そのために税金をどう使うのか、気になりますね。

(記者)

静岡市の地図で説明します。

[歴史博物館]

まず完成が近いのが、駿府城公園の南東側で建設中の歴史博物館。徳川家康や今川義元の功績などを伝える施設です。総事業費62億円で、2023年1月に開館します。

(キャスター)来年は大河ドラマ「どうする家康」の放送もありますね。

(記者)市は相乗効果も狙うということです。

[ツインメッセ静岡]

次に駿河区の展示施設「ツインメッセ静岡」南館の改修に21億円。

(キャスター)5月11日から始まったホビーショーの会場にもなっている場所ですね。

(記者)そうです。今の静岡ホビーショーが終わると工事に取りかかり、2023年5月の次のホビーショー前の再開に向けて耐震補強や修繕を行います。

[大浜公園プール]

駿河区の大浜公園プールのリニューアル工事。市は今年度中の着工を目指しています。新型コロナ感染拡大前は静岡市内外から毎年夏に9万人余りが訪れていた人気スポットです。23億円をかけてプールを全面的に作り直し、通年で利用できるよう公園部分も充実させます。2025年夏の再オープンを目指します。

[水族館複合施設]

来年以降着工予定なのが、清水港で建設される計画の水族館と博物館の複合施設。総事業費は15年間の運営費を含めて169億円です。2026年開館予定です。

(キャスター)大きな額ですね。

[市民文化会館]

駿府城公園に近い静岡市民文化会館の大規模改修。2025年度から160億円をかけて、建物の改修や設備更新を行い、2027年度以降に再開予定です。

[東静岡アリーナ]

そして、JR東静岡駅北口でプロスポーツやコンサートができるアリーナの誘致。

(キャスター)大物アーティストのライブなどを期待する声がある一方で、地元の方が騒音や渋滞を強く心配しているという話でしたよね。

(記者)こちらは、時期はまったくの未定です。市は民間で造って運営してもらう形を目指していますが、土地の整備や防音対策などで静岡市も最大で40億円の負担が必要との試算があるほか、アリーナ本体の建設費も市が、ある程度負担するよう民間事業者から求められています。

[サッカースタジアム]

こちらも時期も事業費も未定ですが、JR清水駅東口の民間の土地を有力候補地としてサッカースタジアムを造る構想。清水エスパルスが8年前から要望していて、山室社長は「200億円以上かかるのでは」と述べています。

(キャスター)今の日本平のスタジアムは交通が不便で、エスパルスのサポーターが熱望しているんですよね。

IAIスタジアム日本平

【お金は大丈夫?】

(キャスター)

新しいものを造って地域が元気になればいいですが、さすがにこれだけ並ぶと「お金、大丈夫なの?」と心配な気もします。

(記者)

静岡市としては大きな事業ばかりです。近年で市の大型事業では、▼2019年度にゴミの焼却炉の設備更新で72億円、▼2013年度に上下水道局庁舎の建設で59億円というものがありましたが、100億円を超える事業が並ぶのは例がないそうです。

静岡市の財政担当者は「水族館は当初は独立採算という話だったのが、税金で169億円かける計画に変更された経緯がある。そこまでは何とか予算を確保したが、アリーナやスタジアムはまだどうなるかわからない」と話していました。

また田辺市長はそれぞれの施設の必要性を強調しつつも「市の財政規律は守らなくてはならない。民間の投資もお願いをする」と述べています。

【ちゃんと使われる?】

(キャスター)

完成すれば、活用されそうなのでしょうか。

(記者)

静岡市は、アリーナができた場合、年間で、

▼1日に1万7500人が訪れる静岡ホビーショークラスの催事が12日、

▼1万席のチケットが95%売れる音楽イベントが40日、

▼5000人が訪れるセミナー・式典が36回開かれるという想定を示しています。

田辺市長は「西日本と東日本の中間にある静岡の有利性がある」と説明しています。

一方で新たなサッカースタジアムの建設を求めるエスパルスの山室社長も「J1の試合だけだと年間20数試合しかないが、東京と名古屋の中間地点なので、コンサート利用や見本市の需要はあると思う」と、こちらも音楽イベントや催し物の需要を強調しています。

(キャスター)

どちらも、造ればイベントが開かれて無駄にはならないと説明しているんですね。

(記者)

静岡市は「スポーツも音楽イベントも、スタジアムとアリーナでは中身の性質が異なるので利用目的は重ならない」と説明しています。ただ具体的なイベント開催の見通しは「コロナ収束後の経済の回復状況にもよる」としています。

【スタジアム有力候補地の隣には・・・】

また4月に川勝知事は、スタジアム建設の有力候補地となっているJR清水駅東口の土地の隣りに静岡市が先に桜ヶ丘病院の移転を決めていることについて、「スタジアムは大きな音を出す。病院との両立が果たしてできるのか」と疑問視していました。

(キャスター)

番組でも解説がありましたね。

(記者)

例えばJ2、横浜FCの本拠地である横浜市の三ツ沢球技場の隣りにはおととし病院ができましたが、ここは病院があとからできたので、スタジアム側の壁の窓を小さくしたり、入院をする病室をスタジアムと反対側に配置するなど、最初から防音対策をとった設計になっています。一方でJR清水駅東口にできる新病院はまだスタジアムの建設も決まってはいない中で、サッカーを想定した防音の設計にはなっていません。

(キャスター)

単独ではあったらいいなと思えるものでも、まちづくり全体としては課題が出てきそうですね。

【相次ぐ事業の停滞】

さらに静岡市の大型事業は、この数年、停滞が相次いでいます。

2019年には水族館施設の計画で民間との協議が折り合わず入札が延期されました。

2020年は清水庁舎移転計画の入札に参加企業がなく延期。そのあと新型コロナの感染拡大で、清水庁舎移転や水族館施設、それに歴史博物館の3つの計画自体がいったん中止になりました。

また2022年4月には、大浜公園プールリニューアル工事の入札で参加表明が1社だけだった上に、その1社が工事の管理体制で資格を満たしていなかったことがわかり、入札が中止。葵区の城北公園の再整備では誘致する方針だったコーヒーチェーン「スターバックス」が、地元の意見が割れる中で出店を辞退する意向を示し、大きな話題になりました。さらに水族館の複合施設についても、運営を担う民間事業者の疑問解消に時間がかかっていることから、4月に行われるはずだった入札の公告が延期されました。

(キャスター)

なかなかうまく行かないものですね。

(記者)

田辺市長は「民間の活用」を掲げますが、コロナやウクライナ情勢による物価への影響など、様々な事態が起きる中で、民間と行政の考え方のずれが目立ちます。

特に水族館施設については、市議会の複数の会派から「建設資材の高騰で今の169億円の予算でも不足するのではないか」とか「JR静岡駅近くの松坂屋静岡店に先月オープンした都市型水族館と、客を奪い合うことになるのではないか心配だ」「同じ清水に作るならサッカースタジアムを優先するべき」などさまざまな意見が出ています。

田辺市長の今の任期はあと1年。静岡市の街をどうするのか、市民の意見を踏まえながら将来像を示すことが求められます。

こうした大型事業に対する視聴者のみなさんの疑問や意見、ぜひ「たっぷりリサーチ」のコーナーにお寄せください。

たっぷり静岡「たっぷりリサーチ」

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静岡市の事業以外でも、県の新しい県立中央図書館や浜松の野球場など、県内ではさまざまな大型事業が計画されています。期待の声や不安なこと、優先順位をどう考えるかなど、いただいた声をもとに今後の取材を進めます。投稿お待ちしています。