”生活困窮“どうする?複雑化する相談

ディレクター 捧美和子
2022年4月4日 午後8:29 公開

新型コロナウイルスの長期化で、生活が困窮する人たちの相談が相次ぐ中、その対応に悩む相談員が増えています。相談窓口ではいま、なにが起きているのでしょうか?

【全編動画】(3月24日 放送)

コロナ長期化で急増「生活困窮相談」

静岡市の社会福祉協議会で生活困窮の相談を受け付けている部署です。

(静岡市社会福祉協議会 中村美香さん)「折り返しが遅くなって申し訳ありませんでした」

相談窓口のあるこの部署では、去年より他部署からの応援で人員をひとり増員(取材当時)。一日中、電話相談などの対応に追われています。机の上には折り返しを待つ人たちのメモが何枚も…。

(静岡市社会福祉協議会 中村美香さん)「お電話頂いて、すぐ折り返せないので、お待たせしてしまうことが多くて申し訳ない気持ちでいっぱいです」

下記の表は、静岡県の生活困窮などに関する相談件数です。2020年度はコロナ前の3倍以上。2021年度もコロナ前を超える見込みです。

相談件数増加に伴い…目立つ“複雑化した相談”

件数の増加に伴い、相談員を悩ませているのが“複雑化した相談“です。

たとえば、「コロナで生活が困窮した」と相談にきた40代の男性。話を聞いてみると、70代の母親と2人暮らし。男性はコロナで仕事に就くことができず借金が膨らんでいます。認知症の疑いのある母親は、感染拡大で外に出られず不安定になっています。これまではなんとか生活がまわっていましたが、コロナにより状況が悪化し、問題が複雑になっているのです。

相談員は、ひとつひとつの問題に合わせ、必要な専門機関を検討し、つないでいかなければなりません。この対応が難しく時間もかかります。

(静岡市社会福祉協議会 中村美香さん)「書類はどんどん溜まっていく。でもここに今困っている方も来ている。(相談員の)人数を増やすことも難しい」

“複雑化した相談”…自治体でも苦悩

複雑化する相談は自治体の専門窓口でも対応しきれなくなっています。焼津市では、どう対処すべきか職員の間で議論が続いています。

(健康づくり課)「相談内容をどこに繋ぐかがわからない、受けた側にもありまして」

(介護保険課)「命に直結するような内容を除いては、中々連携し合うのが難しい状況にあります」

市が職員に行ったアンケートには、複雑化する相談に「ひとつの窓口では対応できない」という声が数多く寄せられました。

「相談内容の所管(しょかん)課が明確でないものの対応に苦慮」

「相談内容に適したすべての部署に繋ぐことができるか不安」

議論に参加した専門家は、組織や制度の在り方を見直す必要があると指摘しています。

(認定社会福祉士・土屋幸巳さん)「制度が縦割りでそれぞれの法律に基づいて対象者が厳格に決まっているので、このままいくと(複合的多問題が)地域にどんどん発生して、それに対応していかないと重篤化していきますから、支援する側も困っている人たちもお互いに困ってしまう」

相談員をささえる取り組みも…

こうした状況に、悩む相談員を支える取り組みも行われています。この日、集まっていたのは、弁護士や医師、社会福祉士、保育士など51人。

別々の機関で働く専門職が集結。静岡市の清水医師会が運営し、相談員が抱える複雑化した問題に一度に対応していく「なんでもかんでも相談会」です。

(静岡市清水医師会・安藤千晶さん)「支援者の方々が困ってしまっている事例がきょうたくさんありますので、方向性だけはきちんと伝えていただければと思います」

この「なんでもかんでも相談会」と呼ばれるこの相談会…悩む相談員が増えていることなどもあり、静岡市の清水医師会が2か月に1回行っています。

この日訪れたひとり。地域包括支援センターで相談を担当している土屋さつきさん。

(静岡市清水区港北地域包括支援センター 土屋さつきさん)「このままでいいのかなと漠然とした不安というか」

土屋さんが悩んでいたのは、60代男性のケースです。

コロナで民生委員の訪問が減った上、本人は近所とのコミュニケーションを拒否。そうした中、庭の木が伸び、道路に危険を及ぼす可能性が出てきていました。

社会福祉士と精神保健福祉士が問題に合わせて、必要な専門職を呼び込みます。

(精神保健福祉士)「(庭の木の)強制的なところは何かないかに関しては弁護士の先生を呼んできたいと思いますので」

まず、弁護士が法的な観点から相談にのります。

(弁護士)「民法233条で(庭の木が)超えたときは切るように依頼することは正当なことです」

コミュニケーションを拒む男性との関係づくりは、精神科医がアドバイスします。

(精神科医)「顔を見てもらう、何もなくその時間が過ぎていくことの繰り返しが安心感をあたえる」

(精神保健福祉士) 「高齢なのか狭間の方だと思う。両方で関わらないといけないと思いますので、そこのつなぎはこの相談会で終わりではなく、やっていきます」

相談にきた土屋さんは…。

(静岡市清水区港北地域包括支援センター 土屋さつきさん) 「1回の面談で色んな先生から助言を頂けるので、次への行動の目安ができたのはすごくよかったなと思います」

(相談会を運営 静岡市清水医師会・安藤千晶さん)「必ず相談に来てくださった方と約束をしてしかるべきところにおつなぎする。つなぎが大事だと思っています。みんなで世帯に関わる仕組みをきちんとつくっておく必要がある」

国も“複雑化した相談”が増えていることを認識していて、2021年度から「重層的支援体制整備事業」という色々な関係機関が一緒になって問題解決に取り組むための制度を施行しています。4月からは函南町がこの制度を導入する予定です。

県はすべての自治体で、複雑化した相談に対応できる支援体制をつくることが必要だとしており、今後どう体制づくりを進めていくかが課題となっています。