「どうする家康」で夏目広次を演じる甲本雅裕さん。5月5日に行われた浜松まつりの騎馬武者行列では、徳川家康役の松本潤さんを先導して歩きました。
夏目広次とは徳川家康が幼い頃からの家臣の1人で、浜松で家康が武田信玄と対決する「三方ヶ原の戦い」では家康を守るための重い役目を果たしたと伝わる人物です。その場面が描かれるドラマ第18回「真・三方ヶ原合戦」を前に、甲本さんにたっぷりとお話を聞きました。(インタビュアー 三浦佑一)
【動画】
<撮影:中村公亮/編集:中条恵子>
ー騎馬武者行列、おつかれさまでした。
いやとっても楽しかったです。貴重な体験をさせてもらいました。
ー暑かったですか?
参加する前に「どうなるだろうね」「暑いだろうね」「どうする?汗拭き持っとく?」とか「冷却シート貼る?」とか、みんなで論争があったぐらいです。ただ、歩いている時には幸せが勝っちゃって、暑さを感じなくなっていた。僕はそんな気持ちでしたね。終わったあとに「暑かった~」って思いました。本当にあの瞬間、歩いてる最中は、こんな幸せなこと、こういう機会に恵まれることってないだろうと思えたので。満喫しようと思いましたので、楽しいがすべてでしたね。
ー殿(松本潤さん)を先導されて、いかがでしたか。
僕自身は、大河ドラマとしては撮影は終わっているのですが、久しぶりに殿や家臣のみんなに再会したことがとてもとてもうれしかった。そしてこの歴史ある浜松で、浜松まつりに騎馬武者行列という形で参加させてもらえたことは光栄ですし、その中を「どうする家康」のメンバーたちと歩けた。そして殿の近くにいられたのは、涙が出そうになりましたね。
ー沿道の方々や浜松の街並みはどのように見えましたか。
もう熱気にあふれていて。みんなが本当に楽しみに待っていてくれたんだなというのがすごく伝わってきて、とっても幸せな思いと、感謝する気持ちになりましたね。
ー夏目広次という人物をどのように捉えて演じてこられましたか。
史実に書かれていることもたくさんあるでしょうし、夏目に対していろんな思いを持っている方もいらっしゃるかもしれません。ただ僕が思う夏目は、芯の強いというか、芯が通った男だったんだろうという思いで演じていました。もちろんドラマ上は、少し気弱なのかなとか、揺れ動くところがすごくあるのかなと思われるかもしれませんが、常に夏目の中では思いは1つという思いで演じさせてもらいました。
ー「家康に名前をなかなか覚えてもらえない」という印象を持っている視聴者が多いかもしれません。役柄の位置加減をどう意識していましたか。
それはこれからの放送できっと分かっていただけると思うんです。今はおっしゃるとおり「毎回間違えられて」と思われてると思います。でも正直、夏目の中には「仕方ないな」という思いがありながらというのが。これ以上は申し上げられないのですが、ぜひ今後の「どうする家康」を見ていただきたいと思いますね。
-撮影現場では松本潤さんとどのように関わり、お話をしていましたか。
僕はいつも「潤くん」とお呼びしているんです。何度も共演をさせてもらって、気心が知れていて。ただ今回のような役回りの関係性は初めてだったので、お互い新鮮な思いで毎回楽しく演じていましたね。もちろん今後の放送にあるようなシーンがあり、そのところではどうしようと、話というか、それぞれの中に思いを秘めて芝居をぶつけ合ったような気がします。
ー三河一向一揆では一度は敵方について、それを許されるという起伏がありました。
僕の中に殿を裏切るという思いは一切なかったんですね。夏目の中にはなかった。ただ一向側には夏目の家臣や身内がたくさんおりまして。揺れる、殿に歯向かうというより、まず自分が今すべきことは何なのかと思った時に、身内を守るということ。殿に刃向かって攻撃をするということではなく、身内を守りたいという一心。だからそこに揺れはなかったんです。苦しかったですけどね。許された時が一番苦しかったです。
ー許されたときの表情が印象的でした。三河一揆の前と許された後で、演技は変わりましたか。
本当の1つになった感じですかね。もう何があっても、中も外もすべてが1つになって生きて行くという思いが固まりましたね。
ー不信感が残るどころか。
とにかく殿をお守りする一心になったっていう。この人について行くということだけに絞られましたね。
ー三方ヶ原の戦いに向けての演技にも影響を与えたのでしょうか。
そうですね。浜松では夏目に対するさまざまな思いがあるかもしれませんが、やっぱり本当の意味で徳川家康という男に仕えた、とにかく忠義1つだけだった。一番は、浜松の皆さんに「夏目、よくやった」と思ってもらえたら、もう感無量ですね。
歴史上起こったことではあるんですが、ドラマとしてもここが肝なんだという。そして今後にどうつながるか。生きて行く上でキーポイントってあるじゃないですか。家康にとってもそうであると思うんですね。そこに大きく関われたことにはすごく感謝ですし、幸せでしたね。幸せです。だから、(内容は)言えないですけど、最後まで幸せでしたね。
ー決して悲劇的ではない。
悲劇ではないと僕は思ってます。そういうふうに思って夏目を演じたつもりですね。
-役作りにあたって、史実や浜松のことを勉強されましたか。
僕は、歴史ものや原作がある作品に対して、あまり深く勉強をせずに入るほうのタイプなんですね。「夏目という人間はどんなふうに書かれているのかな」というぐらいはいろんな書物で少し読みましたけれども、脚本が来た時点で忘れるようにしました。脚本が歴史書だというふうに思って。脚本に従って、そこからどんな印象を受けたのか。その中で僕がどういう夏目を作ればいいんだろうということは考えたつもりです。
ーその結果考えた夏目広次像とは。
信念の男。それに尽きるかな。信念を持って常に生きていていて、信念があるからこそ一向一揆のようなことが起きたんだろうなと思っています。
ー改めてこのドラマの見どころや魅力は。
やっぱり人が生きて行く上で、1人では生きられないんだということをすごく感じるドラマになってると思います。家康を中心に家臣たちがいて、天下を取った。今の時代でもそうだと思うんですね。何かの組織、組織に入ってなかったとしても、きっと誰しも1人じゃ生きられないんだっていうこと。そのベースになるようなことを、この作品ではすごく感じられるんじゃないかなと思っています。
ー静岡県民にメッセージをお願いします。
浜松、静岡の皆さん。夏目広次役の甲本雅裕です。大河ドラマ見ていただけてますでしょうか。これから三方ヶ原の戦いに入って行きます。そこで夏目も深く関わってきますので、どうぞ楽しみにご覧ください。よろしくお願いします。
甲本さん、お話の中で「僕の中に殿を裏切る思いはなかった」ですとか「許されたときが一番苦しかった」と、ご自身が夏目と一体化しているように役柄を語っていたのが印象的でした。
前回のドラマのラストシーンは三方ヶ原で家康の軍勢が大敗するという場面でしたが、次回の予告映像では、夏目広次が「殿は、きっと大丈夫」と語りかけていました。どうなるのでしょうか?
【NHK静岡「どうする家康」特集】
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