(2022年10月25日放送)
浜松市の鈴木康友市長が、来年春に行われる次の市長選挙に立候補しないことを表明しました。公約として掲げてきた行政区の再編にめどがついたことなどを理由にあげています。
市役所で会見を行った浜松市の鈴木市長。
「次の市長選挙には出馬せず、4期をもって市長の職を退任することを決断した」
来年春の浜松市長選挙に立候補しない考えを明らかにしました。
決断の理由について鈴木市長は。
「行政区の再編にめどがつき、市の借金を減らして強固な財政基盤をつくることができた。ほかの施策でも成果をあげて一定の方向性を打ち出せたので、節目を迎えたと判断した」
鈴木市長は、浜松市出身の65歳。衆議院議員を2期務めたあと、2007年の浜松市長選挙に立候補して初当選し、現在4期目です。任期中は行財政改革を進めて市の借金である市債を1300億円余り減らしたほか、行政区の再編について市議会と議論を重ね、現在の7つの区を3つに再編する案をまとめました。
鈴木市長は、退任したあとのことについて「まだ人生を引退する訳ではない。私なりに永田町、霞が関、経済界とのパイプが今後も使えると思う」と述べ、引き続き政治との関わりは持っていく考えを示しました。
また、次の市長に期待することについては、次のように述べました。
「これからの首長は経営判断が重要で、そういう感覚が持った人がふさわしいと思う。日本の時代が大きく変わる中で自分でもアイデアを出して新しいことにチャレンジできるような方がよいのではないかと思う」
鈴木市長が次の市長選挙に立候補しないことを表明したことについて、川勝知事はきょうの定例会見で。
「最大の懸案だった行政区再編に取り組むなど、高く評価している。大きな仕事をやり遂げたという安堵感で一区切りをつける判断をしたんだと思う。これからはしばらく英気を養われるんじゃないか」
次の市長選挙に立候補しないことを表明した浜松市の鈴木康友市長。決断の背景は。そして今後の政治活動は。担当記者が解説します。
[浜松支局記者・保坂勇気]
(キャスター)
4期にわたって浜松市の市政運営を担ってきた鈴木市長ですが、立候補しないという今回の決断に至った背景を説明してもらえますか。
(記者)
鈴木市長も会見で言っていましたが、これまでの市長選挙でも掲げてきた「最大」の公約であり、最大の懸案であった行政区の再編に道筋がついたことです。
そもそも鈴木市長が2007年の市長選挙に立候補した背景にも行政区の再編が関係していました。当時現職だった北脇保之元市長が、支援を受けていた自動車メーカー「スズキ」の鈴木修相談役ら地元の経済界と、区の再編を含めた行財政改革の進め方をめぐって対立。
ここで鈴木相談役らが、北脇氏の対立候補として白羽の矢を立てたのが鈴木市長だったんです。
地元経済界の支援を受けた鈴木市長と地元の自民党と公明党の支援を受けた北脇氏が激しい選挙戦を繰り広げた結果、鈴木市長が当選を果たしたのです。
(キャスター)
こうした経緯を見ると、鈴木市長は区の再編を含めた行財政改革を進めるために市長になったとも言えそうですね。
(記者)
鈴木市長は、支援を受けた経済界の意向を踏まえて行財政改革を進め、任期中に市の借金である市債を1300億円あまり削減するなど、財務状況の健全化を図りました。行政区の再編についても、反対派が多数だった市議会に対し地道な説得を続けました。実に10年以上の時間がかかりましたが、現在の7つの区を3つに再編する案が来年2月の議会で可決される見通しとなっています。
4期目の任期満了まで残り半年となる中で、市長としての仕事に区切りをつける決断に至ったとみられます。
(キャスター)
鈴木市長が退任するとなると、後任はどうなるんでしょうか。
(記者)
現在、浜松市出身で総務省の官僚の名前が上がっています。国とのパイプもあることから、自民党と地元経済界の一部が擁立に向けて調整を進めているということです。
(キャスター)
市長選挙をきっかけに対立してきたといえる自民党と地元経済界が一緒になって候補者の擁立に動いているということですか?
(記者)
こうした動きの背景には、もう双方が対立するのはやめて、オール浜松で市政運営を行っていこうという狙いがあるとみられます。
候補の擁立については、市議会の自民党会派だけでなく、鈴木市長を支援するほかの会派にも了承を得ているということです。次の選挙では、自民党と地元経済界が以前と同じように「相乗り」する形に戻る見込みなだけに、選挙自体の構図も変わってくるとみられます。
(キャスター)
鈴木市長は今後政治から退くのでしょうか?
(記者)
鈴木市長は今後について「まだ人生を引退する訳ではない。私なりに永田町、霞が関、経済界とのパイプが今後も使えると思う」と述べ、引き続き政治には関わっていく考えを示しました。鈴木市長をめぐっては、去年の県知事選挙で、川勝知事への批判を続けてきた自民党県連などが鈴木市長擁立を模索し、鈴木市長自身も前向きな意向を示していましたが、最終的には次のように述べて立候補にはいたりませんでした。
(2021年4月12日の会見 鈴木市長)
「行政区の再編という最大の公約がちょうどいま大きな正念場を迎えているのでしっかり任期をまっとうして市長の責務を果たしていく」
(記者)
ただ、今後市長の職を退くということになれば、行政区の再編といういわば“足かせ”が外れた状態ともなり、前回よりは立候補しやすい状況にはなっているとみられます。現時点では知事選については明言していませんが、時期が近づけば、鈴木市長の言動に注目が集まることになりそうです。