静岡市の世界女王・長坂綾さん 一輪車で夢の舞台へ(2022年5月26日放送)

記者 小田原かれん
2022年5月30日 午後8:02 公開

【長坂綾さんの演技 動画でぜひ!!】

静岡市に一輪車の競技の世界女王がいます。清水区の長坂綾さんです。

競技の世界から飛び出して、パフォーマンスで夢の舞台に上がるチャンスをつかんだ長坂さんの思いを取材しました。(記者・小田原かれん)

【一輪車の世界女王】

長坂綾さん(23)。持ち味は難度の高いバックで足を上げる技に、表情や指先までこだわる表現力。一輪車競技の世界女王です。

(長坂綾さん)

「自分が今一番やりたいことは一輪車で演技をすること、一輪車で大きな舞台に立って輝きたいことが一番の夢」

綾さんが一輪車に出会ったのは6歳の頃。いきなりうまく乗れたこともあってその魅力のとりことなり、毎日4時間、クラブと家の近くの公園で練習しました。

抜群のバランス感覚と豊富な練習量で一気に実力を伸ばし、中学高校では演技部門で日本一。

大学でも強豪クラブに所属してレベルを上げ、2年生の時、韓国で開かれた世界大会で初優勝。世界一に輝きました。

【断念】

そこで綾さんに芽生えた夢が、世界的なサーカス劇団「シルク・ドゥ・ソレイユ」。一輪車を仕事にしてパフォーマンスの世界で活躍することでした。しかし、競技で世界女王になっても、競技人口が少ない日本では、生計を立てていけるほどのオファーはありませんでした。一輪車だけの道はいったん諦め、就職しました。

「(一輪車クラブの)学生の子たちは、海外に行って一輪車の仕事をしていることが多くて。自分も仕事しながらほんとは行きたいのになって思いながら、1年間過ごしてきました」

【一輪車に関わり続ける】

『いつか、一輪車で世界へ』

綾さんは仕事をしながらも一輪車から離れませんでした。そのために始めたのが動画の投稿。一輪車の魅力や自分の演技を知ってもらおうと、技の練習方法や演技などの動画を仲間と撮ってはSNSにアップし続け、レベルアップにつなげました。

(練習仲間の後輩)

「とにかく(綾さんは)上手です。技もだし、バック技というんですけどめちゃくちゃ得意で。あとは表現力。ちょっと切ない表情とかも上手」

もう1つ続けてきたのが演技の指導。一輪車のクラブで月に3回程度、中学生以上の生徒たちに教えます。全体を見ることで演技構成力を磨くのにいかしたいと思ったからです。

【母の支え】

そんな綾さんが一輪車を続けてこられたのは、母、八絵さんの支えがあったからでした。綾さんが大会で着る衣装はすべて八絵さんの手作りです。

(母・八絵さん)

「全部手縫いで縫い付けていきます。スパンコールも全部手縫いで」

練習場所の確保や体育館までの送り迎えも。

(長坂綾さん)

「体育館を調べて、連れて行ってもらって練習して、次は公園に行って走りの練習もしてっていう毎日。一番感謝しないといけない。やっぱり一番支えてもらったかなって思う」

【夢の実現】

母の思いも受けて努力を続けていたことし3月、うれしい連絡が。あの「シルク・ドゥ・ソレイユ」からの出演依頼です。

(長坂綾さん)

「すごくうれしかったです。やっと行けるんだと思って、すごい胸がドキドキしました。就職したあとに諦めなくてよかったなって、少しずつ一輪車に携わってきてよかったなって思います」

【シルク・ドゥ・ソレイユに向けて】

公演が始まるのは7月下旬。夢の舞台に向けた特訓が始まりました。綾さんの持ち味である美しく“魅せる”演技で世界の観客を感動させるにはどうすればいいのか。

ポイントの1つが軸のぶれないスピン。できるだけ速く回転しながら音楽に合わせた美しいスピンを目指します。

もう1つは演技に迫力が出るというジャンプ。ひたすら繰り返し、理想の「より高く、より幅のあるジャンプ」を狙います。

あきらめなかったことでチャンスをつかんだ綾さん。静岡から世界で活躍する一輪車のパフォーマーを目指して夢の舞台に挑みます。

【夢への決意】

(長坂綾さん)

「一輪車すごいなって思ってもらいたくて。サーカスっていうと空中ブランコとかアクロバットとかが有名ですけど、その中に一輪車がボッと入った時に『こんな競技あるんだ』とか『この競技すごい美しい、やってみたい』と思ってもらえるような演技ができたらなと思います」

シルク・ドゥ・ソレイユの公演は7月20日からカナダで行われます。長坂さんは、その後は国内や海外のショーに出演しながら一輪車の魅力を広めていきたいということです。