家康の三大危機の1つと言われる三方ヶ原の戦い。家康は史実上、この戦いで多くの家臣を失いました。その1人が“酔いどれ侍”本多忠真。大河ドラマ「どうする家康」で忠真を演じている波岡一喜さんに、役に込めた思いを聞きました。(記者 牧本真由美)
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「『たっぷり静岡』をご覧のみなさん。“このアホたわけが!”でおなじみの本多忠真役をやらせてもらっています。波岡です」
家康の家臣、本多忠真を演じる波岡一喜さん。忠真といえば、山田裕貴さん演じる甥の本多忠勝を戦国最強の武将と言われるまでに育てた人物として知られています。
波岡さんは、ことし3月、浜松市の大河ドラマ館グランドオープンに駆けつけました。そこで語っていたのは、静岡との「ゆかり」でした。
「静岡県、そして浜松には僕はすごく縁を感じております。私ごとなんですけども、13年前に浜松で映画を撮りました。約1ヶ月ぐらい舘山寺の温泉の方に泊まりまして、撮影いたしました。休みの日にはバスに一人で乗って市内まで来て、さわやかに行ったり、餃子を食べたり、健康ランドに行ったり。わたくしにとって浜松はですね、地元は大阪なんですけども、大阪、そしていま住んでる東京に次ぐ第3の故郷のような気がしております」
本多忠真は槍の名手とされていますが、「どうする家康」では、昼間から徳利を片手に酒を飲む“酔いどれ侍”として描かれています。波岡さんは、自らの思い描く忠真になりきるために、ひげを生やすことや演出も提案したそうです。
「キャラクターとして『酔いどれザムライ』と(キャッチフレーズが)つくぐらい、お酒を常に飲んで、荒々しかったり、声が大きかったり。そしてほかの家臣に接するのとはまた違う感情で、甥っ子である平八郎忠勝に接する。結構、身内思いがすごく強い人物なのかなと思って演じております」
「ひげも、僕があったほうがいいと思って生やしてやらせてもらいました。
普通のおしゃべりしているシーンとかご飯を食べてるシーンで、お酒グビグビ飲むのって結構当たり前。登場シーンの宴会でも泥酔している場面があるんですけど、それ以外のところでも酔うほど強くなるという面が出せたら一つ、キャラクターとして立つんじゃないか。家臣団のキャラクターがひとつひとつ立てば、家臣団全員揃ったシーンが面白くなるんじゃないかと思ったので、そうしたことも提案させていただきました」
見どころの1つは家臣たちの団結。団結力がどう育まれているのか、撮影現場での裏話を明かしてもらいました。
「とっても仲がいいです。現場では待ち時間が長いので、ちょっとグダっとしちゃうときがあるんです。そういうときに『じゃあちょっとクイズを』みたいな感じで、よく僕がクイズを出すんです。殿潤(松本潤さん)はクイズ慣れしていて早いです。あと松重さんも早い。『松重さん、年とってるのに意外と早いですね!』って言ってふざけたりしていました」
「あとは『次のシーン、どうする、どうするの連続なので、どこで入っていいかわかんないです』って言ったら、松重さんがポロッと『じゃあやろうか』みたいになって、セリフ合わせがブワーッと勝手に始まったりするという。合宿じゃないですけれども、そういうふうにスタートしたというのも、今回の家臣団と結束につながってるんじゃないかなと思います」
そして、次回の放送で描かれる「三方ヶ原の戦い」。史実では、忠真は徳川軍が撤退する際に現場にとどまり、追って来る敵をとどめる「しんがり」を務め、命を落としたとされています。このシーン、波岡さんは「覚悟して見て欲しい」と語気を強めました。
「三方ヶ原の回近辺の撮影って、もちろん殿も緊張してるし、覚悟を持って現場に臨んでいます。ふだんも緊張感は持っていますけど、もっとより強い。僕も、忠勝もほかの家臣の面々も。あのシーンやるんだ、あのシーンやるんだっていうシーンが、いくつも三方ヶ原の回にはああります」
「そこで殿がいろんな衝撃を受け、殿の周りでいろんなドラマが起きて。『どうする家康』前半戦の絶対的に大きな節目だと思うんです。なので覚悟を決めて、ちょっと気合を入れて見ていただけたら。洗い物しながら見るには結構ヘビーかもしれないので。ちゃんとテレビの前でご覧いただければ。大きな伝わるものがあるんじゃないかなと思っています」
波岡さんは、浜松市にある忠真の功績を称える石碑を訪れ、雨の中、そっと手を合わせていました。
「今もこういう風にまつっていただいている。そういう受け継がれてきた思いみたいなものがあって、安心したというか、うれしい気持ちになりました。ちょっと胸にくるものがありますね。どこまで感じられてどこまでやれたかわからないですが、『ありがとうございます』と伝えました」
最後に静岡のみなさんへメッセージをもらいました。
「これからいろんな苦難が殿に迫っていくと思うんですけども、殿がどういうふうに成長していくのか、そして我々家臣団がどのように殿を支えていくのか それを最後まで見届けていただけたらと思います。家康、ぜひこれからもよろしくお願いいたします」
【NHK静岡「どうする家康」特集】
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