清水エスパルス新サッカースタジアム 本当にできるの?(2022年4月12日放送

記者・三浦佑一
2022年4月12日 午後8:03 公開

4月10日に行われた清水エスパルスのホーム戦。緊張感ある一戦で、スタンドは沸きました。

一方で、本拠地である静岡市清水区の「IAIスタジアム日本平」にはサポーターから不満の声が出ています。

「やはり交通の便がよくないので」

「30年たっているので、老朽化」

「新しいスタジアムほしいです!」

今のスタジアムはJR清水駅から5キロ余り離れた丘の中腹。

(エスパルス・山室晋也社長)

「仮に駅から徒歩圏にあるのであれば、僕は全試合満員にできる」

そんな中、新たなスタジアムの候補地として注目されているのが、JR清水駅から100メートルの海に面した広大な土地。

(静岡市・田辺市長)

「十分な候補地になりえる」

(静岡県・川勝知事)

「(県も)それ相応の汗をかく」

新たなスタジアムはできるのか、そのお金はどう賄うのか、深掘りします。

(記者・三浦佑一)

【行き帰りにも一苦労】

(キャスター)

ジュビロ磐田のヤマハスタジアムは、歩いて20分ぐらいの所に駅ができましたけれども、アイスタは清水駅でロータリーをぐるっと回るぐらいの行列に並んで、ぎゅうぎゅうづめのバスで15分ぐらいかかって着きますよね。

(記者)

帰りはもっと混みますよね。10日も駐車場のバス乗り場までがすごい行列でした。

(キャスター)

そこで駅のそばにという新スタジアムの構想ですが、どういう状況なんでしょうか。

【なぜいま“新スタジアム”?】

まず経緯をおさらいします。

いまの日本平のスタジアムは、1991年に静岡市が高校総体の会場として建設したあと、95年にエスパルスの本拠地として改修して、今の2万人収容の規模になりました。その後、2012年に導入されたJリーグの基準に照らして、屋根のカバー率の不足が指摘されました。Jリーグは観客席の3分の1以上を覆うよう求めていますが、アイスタの屋根は26%でやや足りないんです。さらに駅から遠いこともあり、2014年にエスパルスが静岡市に「新スタジアムの早期実現」を要望しました。

(キャスター)

交通の便がいい場所に造ってほしいと、声を上げたんですね。

(記者)

一方、候補地として注目されているJR清水駅近くの土地、持ち主は石油元売り大手「エネオス」です。ここでは元々火力発電所の建設が計画されていましたが、県や市の反対で2018年に撤回されました。すると「この土地にスタジアムを造ればいい」という主張が2019年の静岡市長選で取り沙汰され、おととし2020年には当時のエネオスの社長が川勝知事にスタジアムの話題を振られる形で「いろいろ検討する場面があると思う」と発言しました。この発言をあとから知った静岡市はエネオスと協議を開始し、2022年度、新スタジアム構想について検討会を設置することになりました。この市の検討会については4月11日に川勝知事が「ぜひ私たちも関与したい」と述べています。

【流れはできているのか?】

(キャスター)

着々と進展している感じがしますね。

(記者)

ただ実際には、本当に造るかどうかも含めてまだ相当な時間がかかりそうです。

3月、エネオスの大田前社長が退任のあいさつとして静岡市の田辺市長と面会しました。関係者によりますと、この際、静岡市側は「エネオスの社有地もスタジアム候補地になりうる」と伝えたものの、前社長から具体的な発言はなかったといいます。スタジアム建設地として提供してもらえるのかや、その場合の価格など、何も決まっていません。

(キャスター)

まだ地元が期待している、という段階なんですね。

【有力候補地の隣には・・・】

(記者)

また、立地として本当に適当かどうかという問題があります。

駅からの近さは文句なしですが、この土地の隣にあった公園は、おととし、静岡市が、老朽化が進む桜ヶ丘病院の移転先として提供することを決めました。病院は来年度オープンする予定で、病院のすぐそばで2万人の観客が訪れるサッカーの試合を行う。どう思いますか?

(キャスター)

Jリーグの試合って、盛り上げるためにスタジアムが振動するほどの重低音の音楽を鳴らしますし、選手紹介などの場内アナウンスも声を張り上げますよね。

スタンドでは太鼓もたたきますし、コロナの前はサポーターが声をそろえて応援するのも醍醐味でしたよね。

(記者)

病院が近いと、同じような盛り上げ方はしにくいかもしれませんね。

(キャスター)

あと駅前というのも、終わったあと観客が駅の周りであふれかえってしまうんじゃないでしょうか。

駅まで距離があると観客が適度にばらけますけど、駅に近すぎるとかえって密集してしまうでしょうね。

(記者)

この土地で構想が具体化する場合、病院に十分配慮した騒音対策や、観客の行き帰りの動線について検討が必要になってきそうです。

【誰がお金を出す?】

(記者)

さらに問題なのが、誰がお金、建設費を出すのかです。

(キャスター)

いくらぐらいかかりそうなんでしょうか?

(記者)

エスパルスの山室社長は取材に「200億以上かかるんじゃないかと思う」と話していましたが、これは規模や設備にもよるのでまだ見当がつきません。

ちなみにいまのスタジアムは、30年前に静岡市が建設と改修で65億円をかけて造りました。今は建設資材も人件費も高騰していて、田辺市長は、新しいスタジアムを市だけで建設するのは困難だとして「公民連携」とか、「吹田の例は参考になる」と述べています。

【「吹田の例」とは】

(キャスター)

「吹田」といえば、ガンバ大阪のホーム。

(記者)

そうです。「パナソニックスタジアム吹田」。4万人収容で総事業費140億円ですが、ガンバの大株主であるパナソニックを中心とした法人から99億円、個人から6億円の寄付に加え、助成金で35億がまかなわれ、自治体の直接の負担はゼロだったんです。

(キャスター)

寄付で100億円!すごい。

(記者)

ただ経済界からの寄付について静岡商工会議所の酒井会頭に聞くと「仮定の話には答えられないが、100億を静岡の経済界で集めろというのは無理」と話していました。

(キャスター)

大阪と静岡では、企業の規模が違うでしょうしね。

(三浦)。

行政と民間がお金を出し合う枠組みも想定されますが、エスパルスの大株主である物流大手・鈴与をはじめ、企業の動きにも注目です。

【期待には応えてくれるの?】

(記者)

そして誰がお金を出すにせよ、私はエスパルスが結果を出せるかも重要だと思います。

といいますのも、吹田のスタジアム建設に向けて寄付が呼びかけられた3年間の最後の年にあたる2014年には、ガンバ大阪が当時復帰したばかりのJ1、Jリーグカップ、天皇杯、すべてを制覇する3冠に輝き、人気が高まったんです。

ガンバはその後もJ1で、浮き沈みはありながらも上位層に顔を見せています。

翻ってエスパルスは。

(キャスター)

最近は毎シーズン、2度目の降格をからくも免れている、という感じですよね。

(記者)。

市民や企業にお金を出してもいいと思ってもらえる状況なのか。エスパルスの山室社長に問いました。

(エスパルス・山室晋也社長)

「これだけサッカーが盛んな街ですから、もちろん順位云々ということ除いても僕は必要だと思います。逆にチームが強くなるためにもそのスタジアムが僕は必要だと思うんですけどね」。

(順位が先なのか、スタジアムが先なのか、どう考えていますか?)

「どっちも大事ですけれども、でも絶対必要なのはスタジアムです。間違いなく」

【サポーター以外の市民の理解も必要!】

(記者)

現在のIAIスタジアム日本平は法定耐用年数とされる45年まであと14年あり、その後も、点検や修繕をすれば使える可能性があります。それでも早く新しいスタジアムを造るのなら、サポーター以外も含めた市民の理解が必要です。勝敗がすべてではないかも知れませんが、エスパルスが期待に応える人気チームであってほしいと思います。

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