「ソーシャルフットボール」障害乗り越え54歳ベテラン選手のチャレンジ

ニュースディレクター 杉山正敏
2022年10月3日 午後7:50 公開

(2022年9月28日放送)

精神に障害がある人たちがプレーする「ソーシャルフットボール」。10月2日に全国大会に向けた東海地区予選が行われ、静岡の県選抜チームが出場します。このうち、競技を通じて障害を乗り越え、社会に復帰したチーム最年長の選手を取材しました。
(ニュースディレクター 杉山正敏)

【ソーシャルフットボールとは】

統合失調症やうつ病など精神に障害がある人たちがプレーする球技「ソーシャルフットボール」。フットサルとルールは基本的に同じで、試合時間やピッチの広さは大会ごとに規定されるなど気軽に参加できるようになっています。競技として行われる一方、全国の病院や福祉施設でリハビリの一環としても導入されています。プレーする際のコミュニケーションが症状の改善につながると期待されているからです。

県選抜チームのキャプテンでキーパーを務める篠ヶ瀬 智康選手です。チーム最年長の54歳。フットボール歴は10年ほどです。

(篠ヶ瀬選手)
「1対1で絶体絶命のときに自分がシュートを止めれたときはかなり気持ちいいです」

【40歳の時突然記憶失う】

篠ヶ瀬選手は40歳の時、「解離性健忘」という病気と診断されました。突然、それまでの記憶をすべて失ったのです。自分のこともわからなくなり、不安な日々を過ごしたということです。

【相談員の勧めで競技始める】

病院に入院し、退院してからは福祉サービス事業所に通いながら社会復帰を目指しました。事業所では社会から孤立しないで相手と意思疎通を図ることができる「ソーシャルフットボール」を勧められ始めました。すると、失った記憶は戻りませんが、しだいに競技力を身につけて自分に自信が持てるようになったということです。

(競技勧めた相談員でチーム代表の後藤翔一朗さん)
「最初のうちは活動に参加しているというよりは付いてきているという感じであまり人と接することもなかったが、活動を重ねるうちにプレーもそうだがだんだん遠征に行くようになり交流が増えてきたように思う」

(篠ヶ瀬選手)
「フットサルを始めるようになって人と話せるようになってきたし、仲間と呼べる人たちも増えたし周りの人たちにも優しくしてもらってそういった面でも自分の活動の場がフットサルだけでなく、ほかでも広がったと思う」

【競技通じて社会復帰】

周りの支援を受けて社会復帰することができた篠ヶ瀬選手。現在は通っていた福祉サービス事業所の職員となり、就労訓練施設で働いています。そして、同じような障害のある人を支援する立場の「ピアサポーター」になることを目指しています。

(篠ヶ瀬選手)
「同じように悩んで内向きな人がいたらそういう人が前を向いて元気を出すお手伝いができたらと思う」

コミュニケーションを1つの課題として障害を乗り越えようとしている選手たち。県選抜チームは試合に勝つポイントをコミュニケーションだとして、ミーティングの時間を十分に取るようにしています。

(瀧崎亮監督)
「最年長でありながらリーダーシップを持ってエネルギッシュにチームを引っ張っていってくれる存在ではあるので、監督としては非常に助かる」

ソーシャルフットボールを通じて
自信を取り戻した篠ヶ瀬選手。54歳のチャレンジは続きます。

(篠ヶ瀬選手)
「目標は勝つことですよね。でも上に行きたいです。今でいうとフットサルしたいからほかのことも頑張れるのはちょっとあるかなと体が動く限りはやりたい」

【動画】

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