コロナ禍で盲導犬ユーザーが苦悩(2022年4月14日放送)

カメラマン・前田詠里
2022年4月15日 午後8:37 公開

コロナ禍になり大きく変わった私たちの生活。特に盲導犬と暮らす盲導犬ユーザーたちにとって、生活様式の変化は困惑を招いています。(取材/カメラマン・前田詠里)

【“いまや当たり前”のことが難しい】

静岡市に住む庄司恵美子さんは、先天性の病気で視力のほとんどを失い、盲導犬のインテルと一緒に生活しています。

庄司さんは、新型コロナの感染拡大でこれまでよりも外出時の行動が難しくなったと話します。

(庄司恵美子さん)

「間を空けてくださいというのに寄ったりとか、アルコール消毒をしてくださいと言われながらどこにあるのかとうろうろしたり…気を付けないといけないところは変わってきたと思います」

【医療機関で「拒否」も】

盲導犬ユーザーを取り巻く環境はコロナ禍でどう変わったのでしょうか。

富士宮市にある日本盲導犬協会の訓練センター、富士ハーネスです。盲導犬の育成のほか盲導犬ユーザーのサポートなどを行っています。協会では盲導犬ユーザーが日常生活でどういったトラブルにあったかなどを2005年から継続的に調査しています。新型コロナ影響が続いた昨年度の調査ではこれまでとは異なる結果が出ているといいます。

盲導犬ユーザーが受け入れ拒否にあった場所のデータを、新型コロナの影響が出る前の2019年度のものと比べました。昨年度は全体の件数は外出自粛などにより減少していますが、割合としては“医療機関”が増えていて35パーセントと最も高くなっています。調査開始以来はじめて“飲食店”の割合を超えました。協会は、コロナ禍で衛生面への意識が過剰に高まっていることなどが原因だと考えています。

日本盲導犬協会は、受け入れ拒否の原因として、一つはコロナ禍で衛生面の意識が高まっていること。そしてもう一つは、身体障害者補助犬法への理解がまだまだ進んでいないことがあると分析しています。この法律は盲導犬ユーザーが盲導犬と一緒に飲食店や公共交通機関を利用できる権利を保証しているもので、今から20年前に成立しましたが、世間での認知度はまだまだ低いのが現状です。この法律を知らないと、盲導犬を受け入れる側としてもどうすればよいか迷ってしまい、結果的に受け入れ拒否につながることが多いそうです。

(日本盲導犬協会 広報・コミュニケーション部 奥澤優花さん)

「初めて行く医療機関からはコロナ禍で心配事も多く、これまでの医療機関にかかればどうかと断られたり、ほかの患者の心配もあるので盲導犬を受け入れるのは難しいという内容で拒否を受けています」

【ワクチン接種も行きづらい】

盲導犬インテルと暮らす庄司さん。コロナ禍で特に心配だったのは、ワクチン接種だといいます。初めて行く集団接種の会場に、インテルを連れて入ることができるのか不安を抱えていました。庄司さんは、日本盲導犬協会と静岡県を通じてあらかじめワクチン接種会場に周知をしてもらったことで、当日はスムーズに入場して接種を受けることができました。

庄司さんは、こうした事前の準備を今後さらに進めて欲しいと考えています。

(庄司恵美子さん)

「向こうも初めてですがこちらも初めてなので、注射するのも不安なのに余分な不安があって、ちょっと寂しい思いや切ない思いをして接種会場でワクチンを打ったというのが現状です」

【誰もが生きやすい社会へ】

県内の医療機関には、盲導犬ユーザーをスムーズに受け入れられるよう準備を整えている施設があります。長泉町にある、県立静岡がんセンターです。

(県立静岡がんセンター外来看護師長 下山美智子さん)

「介助犬も利用するということを知らせるシールを貼っています」

ここでは、受付や待合スペースなど目に入りやすい場所にシールを貼って、盲導犬ユーザーも利用することを周知するなど、開院当初から受け入れの準備を整えてきました。

また、盲導犬ユーザーをスムーズに受け入れるためのマニュアルも作成しています。マニュアルには、盲導犬ユーザーとの接し方やトラブルが起きた際にどう対応するかなどが具体的に記されています。

(県立静岡がんセンター外来看護師長 下山美智子さん)

「盲導犬はユーザーにとってはかけがえのない必要な存在なので、安心して病院に来られる環境を私たちが工夫してつくっていくことが大事だと思います」

コロナ禍で生活様式が変化する中誰もが暮らしやすい社会の実現が求められています。

【動画】