(2022年11月11日放送)
いま、静岡県には約10万人の外国人が住んでいますが、災害時に課題となるのが、ことばの壁による“情報難民”です。
災害が起きた時、外国人のコミュニティーでリーダーとなる人を育成し、情報を伝える役割を担ってもらおうという試みが行われています。
「外国人防災リーダー」育成の現場を取材しました。
(ディレクター・西田強平)
【ネットワークで支える】
10月に行われたHICE(ハイス)、浜松国際交流協会が行った研修です。
様々な言葉を話せる防災リーダーを育てることで、情報難民を減らそうという試みです。
(参加者)「いつもバックの中に何年も入れています」
集まったのは、普段から、防災に意識の高い外国人たち。おすすめの防災グッズを見せながら、自己紹介です。
こちらの男性は携帯浄水器を紹介しました。
(参加者) 「浜松市は川も湖もいっぱいあるから、これがあるだけでいつでも水がある」
HICEでは、こうしたネットワークを広げて、災害時に外国人を支える仕組みを作ろうとしています。
(研修を主催したキクヤマ リサさん) 「大きな災害があったときに、HICEの職員と一緒に、避難所とか外国人の集まる場所に出向いて、日本語のできない外国人も支援する。」
【礼拝のスペースは・・・】
様々な文化背景を持つ外国人たち。この日は、避難所に、イスラム教の礼拝のスペースを設けられるのかが、話題になりました。
(参加者) 「イスラムの方にとっては1番大事なことだから、出来ることなら確保してあげたい」
それに対し、イスラム教徒の防災リーダーは。
(参加者) 「そんなに広さが必要ないんです」
特別なスペースを設けなくても、十分に礼拝することが出来ると話しました。
こうした異文化同士の理解も、必要な学びの一つです。
【“言葉の壁”乗り越えるために】
HICEでは7年前から防災リーダーの育成を行ってきました。
こうした研修をきっかけに情報発信を始めた防災リーダーも現れています。
ブラジル人向けのテレビ局の代表、豊永ローザさんです。
ローザさんの会社のフェイスブックのフォロワー数は9万7千人。そのフォロワーに向けて、啓発をはじめました
この画像は、気象庁のハザードマップの紹介。
自分の住む地域の危険度を確認するよう呼び掛けています。
(豊永ローザさん) 「日本は情報とか防災充実しているので、言葉(日本語)がわからない人たちに伝えて知ってほしいなと思いました」
さらに、日本語が不得意なブラジル人のために、こんなリーフレットも作成しました。
テレビやラジオで情報収集の助けになるよう、災害のニュースでよく使われる単語を紹介しています。
この日は、11月5日世界津波の日に投稿する画像を作成していました。
(ローザさん) 「目をとめて、わっと思う写真の方がいいかなと思いました。」
ローザさんは、こうした情報発信に、少しずつ手ごたえを感じてきています。
(ローザさん) 「前回の台風15号のときにもう川の水位とかもすごく上がって、色んなところが浸水したんですけど その時にハザードマップを 投稿して、それを見てくれた友達がむこうから聞いてくれたりしたので、やっぱりやっていて良かったなと思います」
HICEでは防災リーダーたちが、それぞれのコミュニティで防災意識を高めてくれることも期待しています。
(研修を主催したキクヤマさん) 「今の防災リーダーを大切にして、今後も連携というか、勉強会を引き続きしていきたいと思ってます」
【解説:足りない外国人リーダー】
(キャスター) 取材にあたった西田強平ディレクターです。 今回の研修、何か国くらいの人たちが参加していたのですか?
(ディレクター) 今回、参加したのは、ブラジル、フィリピン、ベトナム、など6か国、西部地域に暮らす外国人です。 いろんな防災グッズを見せているシーンがありましたが防災への関心がとても高いのが印象的でした。
(キャスター) みなさん勉強熱心なように見えましたが、今後の課題はありますか?
(ディレクター) インタビューに答えていたHICEの担当者はまだまだリーダーの人数が少ないと言っていました。 母国に帰ってしまう人もいるので安定的にリーダーを確保することが、課題だということです。 また、研修中には多言語で防災情報の発信をしている「NHKワールドJAPAN」のアプリなども紹介されていました。 さまざまなツールを使って外国人が安心して暮らせる仕組みを作っていきたいとキクヤマさんは話していました。