(2022年10月26日放送)
少子高齢化で働き手が不足する中高度な技能や知識を身につけた留学生は企業にとって魅力的な存在といえますが、留学生の県内企業への就職率は3割程度にとどまっているのが実情です。こうしたなか、浜松市では企業で仕事を体験するインターンシップを通じて、双方のマッチングを図る取り組みが進められています。
(浜松支局記者・渡邉亜沙)
9月下旬、浜松市の企業のインターンシップに参加した2人の留学生。いずれも静岡大学の大学院で電子工学などを学んでいます。受け入れ先は、こうした外国人材の採用に消極的だった企業です。
企業と留学生をマッチングしようというこの取り組み。背景には、少子高齢化などによる働き手不足が浜松でも懸念されている一方で、地域の優秀な留学生を雇用につなげられていないという課題がありました。こうした状況に危機感を感じた地元企業などが出資する形で外国人材の採用や定着をサポートする団体を設立し、いま、取り組みを進めているのです。
(「eコモンズ」三井いくみ代表)
「静岡県西部は優秀な技術をもっている会社があるが、人材不足でもったいないなと。静岡大学の学生たちは就職したいけど企業がわからないと、ニーズがあったので」
「技術はあるけれども人材不足の企業」と、「地元企業の情報がない」という留学生。団体が双方のニーズを満たすために企画したのがインターンシップでした。
8月、静岡大学で開かれたインターンシップの説明会には、これまでに留学生の採用実績がない会社も参加しました。今回、2人の留学生を受け入れた浜松市西区の自動車部品などを作る企業の姿もありました。EV=電気自動車へのシフトなど自動車業界が転換期に直面するなかで、新たな事業などの起爆剤になればとインターンシップの実施を決めたといいます。
(小楠金属工業所 小楠哲治社長)
「留学生は高度な人材という形で我々が持っていない知識は持っていると思いました。既存の業務以外に我々が得られるものはあるんじゃないかと思って新規の全くいままでと違う何かプラスになることがあれば」
説明会でのマッチングの結果、参加することになったのが、インドネシアとインドからの留学生です。お互いを知ってもらうことが最大の狙いですが、立ちはだかったのが「ことばの壁」です。2人は日本語がほとんどしゃべれませんでした。インターンシップの冒頭数時間は、団体が通訳を務め、サポートを行いましたが…。その後は、採用した後のことを想定し、通訳はいない状態となりました。
スマートフォンの翻訳アプリを使うなど試行錯誤しながら意思疎通を行いました。
今回、インターンの2人は太陽の熱を利用する製品の開発に携わりました。専門用語を交えながら双方から積極的にコミュニケーションをとりあうことで、徐々にお互いへの理解が高まっていったといいます。
10日間のインターンシップの最終日には留学生よる報告会が行われました。2人の留学生たちは、開発に携わった太陽の熱を利用する製品について素材の一部を替えることで熱を効率よく使えると提案しました。専門分野を生かした発表でした。
(留学生)
「この会社でのインターンの機会をもらえてとても感謝してる」「研究してきた知識を生かすことができうれしかった」
企業側にとっても留学生たちの仕事に取り組む姿勢は期待を上回るものだったといいます。
(小楠社長)
「我々の想像しなかったようなアイデアとか積極的に出してくれましたしやっぱり人材だなっていうふうに思いました非常に刺激になりましたね。機会をいただければ採用は前向きに考えてやっていきたいと考えている」
支援団体では、留学生が採用された後のビザの申請などの手続きや日本語の習熟に向けたサポートなども行っているということです。