静岡市がJR東静岡駅の近くに誘致しようというアリーナ施設。市の狙いと課題について解説します。(記者・三浦佑一)
(記者)
このJR東静岡駅北口の土地は、旧静岡市が旧国鉄側などから取得し、24年前に広場にした市内有数の一等地です。長らく“塩漬け”になっていて、これまでに合併後の市役所庁舎建設、県の体育館の誘致、サッカースタジアムの建設が検討されましたが、いずれも具体化しませんでした。そして田辺市長は3年前、民間の資本でアリーナを作って運営してもらう「誘致」構想を打ち出しました。
(キャスター)
民間に作ってもらうから、市は建設ではなく「誘致」と表現しているんですね。
(記者)
ただ土地を貸す前提として、市はある程度のイメージを示しています。例えばプロバスケットボールの試合ができるようにするほか、田辺市長は「サザンオールスターズやユーミンのコンサートができる器を造りたい」と発言しています。
(キャスター)
本当に来たらすごいですよね。
(記者)
ただ具体的な活用方法は今後決める民間事業者に委ねることになり、まだ何も決まっていません。そもそもこの構想、当面は民間との水面下の交渉が続きそうです。
昨年度は、市が意見を聞いた事業者のほぼすべてから「市にもっとお金を出してもらわないと作れない」と厳しい意見を突きつけられました。このため市は、土地の賃料を抑える案も検討した上で、アフターコロナの人出の回復を見込んで、音楽ライブで8000席から1万席程度の規模にすれば、運営費は採算が見込めると説明しています。
(キャスター)
これはどのくらいの大きさでしょうか?。
(記者)
県内では袋井市のエコパアリーナが収容人数が最大1万人なので、イメージは近いです。
ただ問題は初期投資です。まず環境整備として、市は、土地の発掘調査や土壌汚染対策、それに騒音や振動対策で、最大でおよそ40億円かかると見積もっています。さらにアリーナの建設費が数十億円なのかそれ以上になるのかわかりませんが、かかります。このコストはアリーナの運営収益では賄えず、今後、市の負担についても議論が進むことになります。
(キャスター)
「民間のアリーナ誘致」と言いながらも、税金の投入が避けられないのだとしたら、市にはしっかり説明してほしいですね。
(記者)
地元の住民からも懸念の声が上がっています。土地の周辺には、マンションや昔ながらの住宅街が広がっています。住民に話を聞いてきました。
地元の自治会で会長を務める杉山輝雄さんです。周辺の自治会の役員と一緒に話をしてくれました。
(杉山輝雄さん)
「疑問に思ってる人は多いと思います」
住民の懸念の1つが、人の密集です。イベントで何千人もの人が集まると、電車の本数が限られている東海道線では一度に帰れないことも想定されます。騒音やトラブルが心配です。
(自治会役員)
「身動き取れない状態で、みんな何やるんですか。終わったあとここの人たちがどう思うか。そのときにごみがいっぱいたまってないのかとか」
道路の問題もあります。今でも、駅と住宅街の間の国道1号線では週末、商業施設の前で500メートルを超える渋滞が発生ます。アリーナに行く車が加わると、生活に支障が出かねません。
(杉山さん)
「渋滞に拍車がかかるし、バスでピストン輸送したくても、そのバス自体の渋滞に巻き込まちゃうので。国道1号線がこむと、みんな裏の道裏の道って形で通ります。至る所で生活道路に渋滞が発生してしまう。市に対応を求めてるんですけれども、具体的なものが示されない」
住民が訴える懸念や課題にどう応えるのか。また建設コストをどう賄うのか。田辺市長は15日の会見では具体的な対策は示しませんでしたが、今後の説明が注目されます。