キングカズ。
静岡市出身の55歳、三浦知良選手の話題です。3月13日、JFL・鈴鹿ポイントゲッターズの開幕戦で先発出場しました。
【動画】
4600人を超える観客が詰めかけた注目の開幕戦。カズはフォワードで先発出場。ゴール前で積極的に動き、得点のチャンスをうかがいます。
前半40分すぎ右サイドからカズを狙ったクロス。
ここは合いませんでした。
シュートはなくてもチームを鼓舞し続け、後半20分に大きな拍手を受けてベンチに下がりました。
試合はこのあと鈴鹿が2ゴール。監督の兄・泰年さんのチームでの初戦を勝利で飾りました。
(三浦知良選手)
「頭から開幕戦に出られたことは本当に大きな経験をさせてもらいましたし。プレーできる喜び、改めてすばらしい舞台に立たせてもらったなという実感があります」
兄・泰年さんと新たな挑戦を始めたカズ選手。実は、今から17年前、NHKでは静岡市の駿府城公園で2人の対談を撮影していました。当時、カズ選手は38歳。5か国12チーム目となるオーストラリアのチームに移籍が決まった状況でした。当時の映像も交え、55歳のことし、新たなる挑戦に臨む“カズ”に迫ります。
17年前、2人が対談の場所、駿府城公園を訪れた時の様子です。
(カズ)「ピンクレディーが来たのを思い出すよ」
(泰年さん)「来ましたねえ」
(カズ)「ピンクレディーが来てね、来たときは人が多くて、テントの上に人が乗って、それが倒れちゃったんだよね。その最先端に僕は立っていたんだけれども」
(泰年さん)「はははは」
(カズ)「あそこに噴水あるでしょ。あれが僕らのシャワーだった」
(泰年さん)「ここで練習するでしょ。そのまま水遊びする」
(カズ)
「まさにこの辺でドリブルやっていたね」
「とにかくサッカーをすることが好きだということが、ここで、この『やすらぎの塔』でサッカーをやっていたころと変わらず持っているということは、変わらない」
「ドリブルっていうものを楽しみたいなっていう。その中でチームが勝ったらいいな。自分がドリブルで勝負して、チャンスを作って点を取って。ただ全部を追ったら大変だから、どれかにしなきゃいけないんだけど。とにかく自分は1対1というのをもっと楽しんで挑んでいきたいね。
この時「いつか泰年さんが監督のチームでプレーしたい」と語っていたカズ選手。現実のものとなった今、思うことは。開幕直前のインタビューです。
ー鈴鹿移籍決断の理由は。
(三浦知良選手)
「今の僕の立ち位置、立場、実力を考えたらカテゴリーよりも、試合に出て自分が活躍してやっぱり這い上がっていく方が自分にとっては今大事かなと思いました」
プロ37年目を迎えるカズ選手。ここ数年、出場時間は減り、J1だった昨シーズンはわずか1分間にとどまりました。出場機会を求めて選んだ移籍先は、兄の泰年さんが監督を務めるJFLの鈴鹿ポイントゲッターズ。J1から3つ下のカテゴリーになります。
(三浦知良選手)。
「ヤスさん、三浦泰年監督。自分の兄貴がいるという兄貴の存在というものがやっぱり大きかったかなと思います」
「一番の理解者であり、僕のいいところ、今の僕に足りないもの、今僕は何をしなきゃいけないのか、そういうことすべてわかってますし、理解してくれていますし、僕がやりたいこと、どういうプレーをやりたいかもわかってくれてますし、兄貴が求めるものも僕もわかっているつもりですし、コミュケーションも取りやすいですし。グラウンド上ではお互い厳しく意見をぶつけ合って、厳しい要求をしあったりということもありますし。目的は、監督と選手ですけど、チームをプロのクラブにしていこうと、プロのメンタリティーに持っていくこと、そして、J3に昇格。この目標は一緒なので、それに向けて今一緒に頑張っています」
さらに55歳という年齢を受け止めた上で、今自分にできる戦い方を模索しています。
「もちろん体力的にも衰えたと感じる時多いですし。10代20代の時と比べものにならないぐらい単純に走るスピードだったり、何回も(ピッチを)行ったり来たりできる体力だったり、そういうものは比べものにならないぐらい落ちているとは思いますけど、そんな中でサッカーはそれがなくなったらプレーできないかと言うと、そうではない。自分の衰えたものを判断のスピードだったりそういうもので克服していけば、できるスポーツだと思うんですね。自分の経験を生かしたなかでプレーするということも僕は可能だと思っていますので」
ー自身の今後については。
「引き際は、考えることはないですね。本当に自分の中でやめるという選択肢はないですね。でも、いつかは、やめなきゃいけないと思いますし、体がずっと続くわけじゃないし必要とされない時も来ると思いますしね。僕は僕なりに続けていける限りずっと頑張りたいなと。その中では努力もしていかなきゃいけないと思いますね。自分との戦いだと思いますね」
ーこどもたちに、サポーターに。
「諦めずにチャレンジしていく精神。そういうものをね、みんなと共有していきたいなと思いますね。やはり、どうしても、自分のやりたいことだったり夢があってもできないこともあるし、諦めてしまうこともありますので。自分がやりたかったら諦めずに努力していくこと、毎日コツコツやることはとても大事だなと思います。そういうものを55歳でもピッチに立てば、年齢関係なく10代、20代、30代の選手と同じように競い合って、勝利、ゴールを目指すというね、諦めない姿というものを見てもらえたらなと思いますね」
駿府城公園が、すべての挑戦のスタートだったキングカズ。17年前にも語っていたドリブル、そして1対1への思い。カズ選手らしいと思います。55歳のスーパースターの諦めない姿、新たな挑戦に期待したいと思います。