結婚式場を活性化 学生の新たな取り組み(2020年7月28日放送)

記者 牧本真由美
2022年8月26日 午前9:25 公開

結婚式したいけど新型コロナが心配だからどうしようかな・・・と悩むカップルも多いのではないでしょうか。実際、結婚式のキャンセルや延期が相次いでいて、式場は大きな打撃を受けています。

こうした厳しい状況を少しでも変えたいと動き出した学生たちがいます。提案されたプランは、業界の新たなる風となるのでしょうか。浜松市の式場で行われた体験会を取材しました。

(浜松支局記者 牧本真由美)

7月上旬、浜松市の結婚式場で開かれた新プランの体験会を訪ねました。

一見、普通の結婚式のリハーサルにも見えましたが、違いました。

実施していたのは、式場の職員ではなく、大学生の本田莉里佳さんと専門学校生の黒部瑠希さんです。

この日行われたのは特別な演出「SomedayWedding」。結婚式ではありません。婚姻届を出した日を式場で過ごしてもらおう、という学生たちが考えた新しいプランです。

このプランが生まれたのは、2人も参加した、ブライダル業界の有志が作るプロジェクト「wetukuアカデミア」です。

結婚式を挙げない若者が増えていたところに新型コロナが追い打ちをかける中、未来を切り開く人材を育てようと企画されました。2021年8月から半年間、全国の学生30人が参加して新たなプランについて議論を重ねました。

そこにアドバイザーとして参加していたのが、浜松市の結婚式場の社長の伊達善隆さん。

学生たち発案の意外なプランに注目し、実際の式場でモニター体験を行ってもらうことにしました。

(浜松市の結婚式場社長 伊達善隆さん)

「コロナに限らずこれから業界として結婚式をどのように作っていくかというところは大きな課題です。学生たちのプランは非常にいい提案で、我々業界にいると思いつかないような観点での提案だったので、非常に可能性があるなと思いました。学生目線で、必ずしも必要ないものとか、自分だったらこんな簡単にすませられるなど、そういった観点で企画してくれました」

実際にこの日に婚姻届を出すという浜松市のカップルが式場に到着しました。まずは普段着のままメーキャップ。その様子を見た学生は、自分たちの思いが詰まったプランが実現しているという実感が沸いてきたといいます。

(大学生・本田莉里佳さん)

「最初は私たちも、2人もすごい緊張していて、ぎこちない感じがあったんですけど、やわらいできているからこそ、もっともっとお2人にとって特別な日にしたいなという思いがさらに高まってきました」

そしてカップル2人は改めて対面し、市役所に婚姻届を提出。学生たちも同行しました。

キレイになった姿に照れる様子も、婚姻届を出す場面も、カメラマンが記録に残していました。

夫婦となったふたりは、式場に戻ってチャペルの入り口に座りました。そして学生が語りかけます。

「これまでのお2人のお互いの気持ちを改めて感じてもらいたいと思います」

出会った時や初めての記念日をどう過ごしたのか、それぞれが書いたメッセージカードを交換しました。

『2人とも甘いものが好きなので家でケーキを食べた』

『サプライズで用意してくれてうれしかった』

2人が歩んできた道のりを振り返ってもらいました。そして、プロポーズの瞬間の情景や感情を、もう一度思い出すように呼びかけたあと、夫婦は、参列者が1人もいないチャペルに入場し、ゆっくり進みました。

チャペルでは、夫婦で向き合い、いまの気持ちと、それぞれにあらかじめ決めてもらっていた相手への約束事を伝え合うよう促しました。

きっかけがないとなかなか伝えられないお互いの思いをチャペルで向き合って打ち明けてもらいました。そして指輪の交換も。夫から改めて伝えられた愛の言葉に妻が思わず涙する場面もありました。

妻:「感動で泣いちゃいました。本当に夫婦になったんだなって感じで。彼からの思いも聞けてうれしかったです」

夫:「2人で振り返る良い機会にもなりますし、良い思い出になると、今後また、この日の話がまた良い思い出として話せると思うので、すごくいいと思います」

学生たちは、モニター体験で手応えを感じて、全国に広げるためのパッケージ化も検討し始めたそうです。

コロナ禍で厳しさが増しているブライダル業界ですが、そこに飛び込み、新たな風を吹かせたいと改めて期待が膨らんだと話していました。

(本田莉里佳さん)

「いろんなロケーションとか会場とかセレモニーとかもすべて含めて涙が出るくらい感動していただけたのは本当に良かったなと思います」

(黒部瑠希さん)

「夫婦となる前のカップルの2人に、こういったプランもあるよ、とか、あとは、こういう形があるよということを、お伝えしていって、挙式・披露宴の前にもこのような素敵な時間をたくさん作っていって欲しいなと感じています」

コロナ禍だからいまは2人だけでこのプランをしておいて、もう少し落ち着いてから式をあげたい、という人もいるかも知れません。婚姻届を出すその日に2人だけで行う特別なイベント、新しい選択肢になるのではないかと感じました。

そして、学生たちが考えていたのが、婚姻届を出した日に式場を体験することで結婚式のイメージを膨らみ、「将来、結婚式を挙げたい」という気持ちにつながっていくのでは、ということです。

なので、このプランにつけた名前が「サムデイウェディング」、いつか結婚式を!ということだそうで、なるほど、です。

新しいプランが式場の活性化につながるのか、期待したいです。

【動画】

結婚式場を活性化 学生が新たな取り組み