静岡市は市議会に、清水港に新たな水族館と博物館の複合施設を作るために169億円の事業費を確保する議案を提出しました。どのような計画なのか、解説します。
(記者・三浦佑一)
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(記者)
静岡市が「海洋・地球総合ミュージアム」と呼ぶこの水族館は、田辺市長が地元経済団体の要望を受けて2014年に市の総合計画に盛り込み、具体化を進めてきました。しかし2019年、市が意見を聞いた民間企業から来館者数の予測などを疑問視する声が相次ぎ、運営企業を決める入札が延期されました。さらに2020年に新型コロナウイルスの感染が拡大し、市は計画の凍結を発表しました。
それを今回、田辺市長は「コロナ収束を見据えて民間の投資意欲が回復している」として計画を再開し、4年後の2026年のオープンを目指す方針を示しました。
(キャスター)
そもそも、どこにどんな施設を作るんですか?。
(記者)
建設予定地は清水港で、観覧車があるドリームプラザから500メートルほど南東側。駿河湾フェリーの発着場のすぐ近くです。
新たな水族館ができれば、清水区の三保半島にある東海大学海洋科学博物館は、水族館としては閉鎖される見通しです。
(キャスター)
どんなものが展示されるのでしょうか?
(記者)
テーマは駿河湾なのですが、実は展示内容は未定です。今後、民間の運営事業者からの提案をもとに決まるといいます。駿河湾ということで、市は例えば、シュモクザメやラブカといった深海生物を想定しています。ラブカについては沼津港深海水族館などでも展示された実績があるそうです。
(キャスター)
駿河湾の深海生物が間近で見られるなら関心を集めそうですね。
(記者)
ただ深海生物は地上で飼育・展示するのが難しく、市は映像による展示も想定しています。
また、ペンギンやラッコ、アシカのような一般の水族館の人気者は駿河湾には結びつかないので、展示対象にはなりづらいと市は説明しています。さらに駿河湾でも目撃情報が話題になるイルカやクジラについては、展示には動物愛護の観点で海外からの批判が強いとして市は否定的です。そして教育や研究が目的の公共施設という位置づけから、ショーを行うスペースも設けない方針です。
(キャスター)
となると、展示内容が相当限られそうですね。
民間から来館者数の予測を疑問視されたこともあったということですが、どれぐらいお客さんが見込めるのでしょうか。
(記者)
市は平均で年間46万人を想定しています。福島県で人気の水族館「アクアマリンふくしま」が今回の静岡市の計画の水族館より1点5倍の面積で40万人ですから、市の想定は強気に見えます。静岡市は「周辺人口や民間活力の効果を考慮して計算している」と説明しています。
(キャスター)
市議会に提出されたという総事業費が169億円。非常に大きな額ですよね。
(記者)
この中には15年間の運営期間中、毎年3億6000万円の赤字を市が補填する費用も含まれていて、この赤字の穴埋めは施設が存続すればその後も毎年続く可能性があります。さらにこの169億円の事業費とは別に、入館者数が想定を大きく下回った場合は、市が事業者の赤字をさらに15年間で最大10億円程度補填する仕組みも導入することが検討されています。
(キャスター)
新型コロナの影響も含めて社会情勢がどうなるか分からないなかで、これだけお金をつぎ込むことにはいろんな意見があるでしょうね。
(記者)
市議会でも賛否が分かれる見通しです。
静岡市は今、水族館以外にもさまざまな大型事業の計画を進めています。葵区の中心部、駿府城公園の近くでは、来年開館予定の歴史博物館に62億円、静岡市民文化会館の改修工事に160億円、駿府城天守台跡の展示に8億円をそれぞれ投じる方針です。さらに市内の別の場所ではコンサートなどができるアリーナ施設の誘致や新たなサッカースタジアムを造る構想も進めています。
また水族館と言えば、民間でもJR静岡駅前の松坂屋静岡店で店内のほぼワンフロアを水族館にする工事を進めていて、2022年4月にオープンする予定です。市内に2つの水族館が新たに出来ることになります。
市が巨額の予算で新たな水族館を造る意義をどう考えるか、市議会の議論に注目です。
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