インタビュー ピアニスト上原ひろみ "雲の向こうの光"

ニュースディレクター・杉山正敏
2022年1月4日 午後6:45 公開

(2022年1月4日放送)

昨年行われた東京オリンピックの開会式。歌舞伎俳優の市川海老蔵さんと共演したのは、浜松市出身で、世界で活躍するピアニスト・上原ひろみさんです。コロナ禍の厳しい状況が続く中で、音楽と向き合い、音楽を届ける旅を続ける上原さん。新しい年に向けた思いを、NHK静岡の佐藤あゆみアナウンサーが聞きました。

【2年ぶりの浜松ライブ】

(上原さん・ライブでのMC)

『浜松に、帰ってきたに!』

『やっぱりせっかく浜松に来たもんでね。本当はぜんぶ遠州弁でMCやりたいだけど、浜松の心は忘れていないということだけお伝えして標準語に戻ります』

上原さんは先月(12月)、ふるさとの浜松市で2年ぶりのライブを行いました。地元の人たちと生の音楽を分かち合う喜びに浸りました。

(佐藤あゆみアナウンサー)

「久しぶりの地元・浜松でのコンサートを終えて、今お気持ちはいかがですか?」。

(上原ひろみさん)

「本当にライブというものがなかなかできない状況が続いていたので、こうやってまた自分の生まれ故郷に戻って来られて感無量です」

(佐藤アナ)

「駅に降り立ったとき、浜松の街並み、いかがでした?」。

(上原さん)

「よく今、全国にストリートピアノっていうのがあって、でもやっぱり駅構内にあるのが素晴らしいグランドピアノというところに、浜松市民として、『どやっ!』っていうのはやっぱりありますよね。うれしいなと思いますし、誇りに思います」

「古いピアノは中に“HAMAMATSU”って書いてある。海外のお客さんに、このピアノは私と同じホームタウン出身ですっていうのを言ったりするので」

ニューヨークを拠点に世界に音楽を届けてきた上原さん。ウイルスが爆発的に広まったアメリカではライブができなくなり、日本に戻りました。東京のジャズクラブで人数を絞ったライブを開き、インターネットで配信しました。

(上原さん)

「ライブに対する飢えというか、自分の飢餓感というかですね。それが本当に強かったですし」

「音楽の仕事についている人たちが、やはり仕事がなくなって本当に苦しんでいるのを見てきたので。自分がライブをするとその人たちにも仕事が発生する。自分が動くことでたくさんの雇用が生まれるということをすごく強く考えて。ピアノを弾く意味というか、どれだけたくさんの人と関わって、これが仕事という意味で存在するのかということは、本当に強く感じたことですね」

上原さんは、コロナ禍でも光を求めて活動を続ける心境を新作に込めました。

(ライブでのMC)

『4曲からなっている組曲で、この2020年3月ぐらいからの自分の気持ちを表した曲です.みなさんといっしょに、いろいろな状況を反すうしながら立ち向かっていきたいと思います。シルヴァーライニングスイート』

(上原さん)

「シルヴァーライニングというのは英語の慣用句で、雲の縁にできる光のリングのことなんですけど、それができるということはその雲の向こうには太陽があって、必ず希望があるという意味で。希望の兆しみたいなものを、いつかこれをお客さんに届けるんだという強い気持ちを持って毎日を過ごしていたので。それがこういうふうにかなうたびに、本当に何か、また大きな力をもらいます」

最後に、ことしの抱負を書いてもらいました。

『どんな年になろうとも負けない』

(佐藤アナ)

「これはどんな思いで書かれたんですか?」

(上原さん)

「どんな年にしたいとか、そういうことが私たちのコントロールできるものではないっていう状況をずーっと味わってきたので。いかなる状況になってもとにかくやれることを常に探して負けない。それだけです」

「静岡の皆さん、また皆さんにライブでお会いできるよう、そして、一回り成長した姿を見ていただけるように、ことしも日々頑張っていきます。よろしくお願いします」

上原さんは『ことばを紡いでいく』という表現をしたくなるような、一つ一つことばを選んで丁寧にお話ししてくださったのが印象的でした。