【“過去最大”の予算案を発表】
川勝知事は一般会計の総額で1兆3600億円余りと、過去最大となる県の新年度の当初予算案を発表しました。新型コロナ対策で今年度とほぼ同じ額を確保するほか、土石流対策で、違法な疑いのある盛り土の監視費用などが計上されています。
川勝知事が令和3年2月10日に記者会見を開いて発表した新年度(令和4年度)の当初予算案は、一般会計の総額で1兆3644億円と、今年度(令和3年度)の当初予算より550億円、率にして4.2%増え過去最大となりました。
このうち新型コロナウイルス対策はあわせて907億円と、今年度全体の予算とほぼ同じ額を確保します。具体的には病床確保など医療提供体制の維持のほか、中小企業への資金繰り支援、困窮する学生への支援などが盛り込まれています。
また去年7月に熱海市で発生した土石流の関連では、伊豆山地区の復旧費用に1億4500万円、違法な疑いがある盛り土の監視費用など規制対策に9495万円が計上されました。
一方、歳入では、アメリカや中国への輸出回復で県税は4810億円と、今年度より7.6%増えると見込んでいます。
川勝知事は「人々のために許されるお金があるなら使う。積極的に人々を助けるという意味では積極予算だ」と述べました。
県の新年度の当初予算案は2月18日に開会する県議会2月定例会に提出されます。
【新たなキーワード“デジタル田園都市”】
私たちの税金を県はどのように使う計画をたてたのでしょうか。詳しい内容を県政キャップの仲田萌重子記者が解説します。
(キャスター)
「新年度予算案、過去最大ということですが、どういった点がポイントでしょうか」
(仲田記者)
「県は今回の予算編成にあたってのスローガンに『デジタル田園都市』というキーワードを入れました」
「これは岸田総理大臣が去年9月の自民党総裁選でデジタル技術を活用して地方の利便性を向上させる構想として打ち出し、10月の所信表明演説でも成長戦略の柱として示したことばです。川勝知事は10日の会見で「東京から離れても仕事ができるようにする必要条件がデジタル化だ。国の方針であり、ロールモデルを作りたい」と、政府の方針の模範となることに意欲を示しました。
(キャスター)
「具体的にはどのようなことを進めるのでしょうか」
(仲田記者)
「デジタル化の推進には総額で31億500万円。これは今年度当初のデジタル化予算の1.5倍です。具体的には▼スマートフォンの使い方を不慣れな人に教える『デジタルサポーター』の育成。▼一般の人も使う県の施設の会議室に高速のネット環境を整備。▼また収入証紙の処理などオンラインで完結できる行政手続きを増やします。
【コロナ対策は今年度と同等】
(キャスター)
「新型コロナウイルス対策はどうですか?」
(仲田記者)。
「コロナ対策には、補正予算を含めた今年度の予算規模と同等の、総額907億円が計上されました。このうち98%にあたる890億円は国の交付金が財源です。主なものでは、▼これまでのピークの入院患者数にも対応した医療提供体制を維持するほか、▼県が再来年度(令和5年度)に三島市で設置を目指す感染症専門施設の整備などの費用が盛り込まれました。
(キャスター)
「ウイルスが変異を繰り返す中、県民が安心できる環境を整えてほしいですね」
【土石流からの復旧と再発防止】
(仲田記者)
「続いては、県の課題である熱海市の土石流対策についての予算案です。伊豆山地区の復旧費用として1億4500万円を盛り込み、▼逢初川の護岸整備や、▼新たな崩落の監視などを行います。また盛り土に対する規制強化に9400万円を計上し、▼監視活動に使う車両を配備するほか、▼違法の疑いがある盛り土周辺での車両の動きなどを記録するカメラを設置します」
【川勝知事 県議会との関係は?】
(キャスター)
「予算案を審議をする県議会はどう受け止めているのでしょうか」
(仲田記者)
「予算案は万一にも否決されると県民への影響が大きいので、事前に県議会からの要望も取り入れているのが実情です。特に単独過半数を占める自民党会派の態度が重要になりますが、今回自民党の議員に聞くと『要望のかなりの部分が反映されていて満足だ』と評価する声が聞かれます。具体的には▼土砂崩れを防ぐため山に植林をする費用に4億5000万円、▼道路の拡幅やガードレール設置など交通安全対策に10億円、▼道路の雑草対策に7億円が自民党の要望で盛り込まれたといいます」
(キャスター)
「ずいぶん大きな額ですね」
(仲田記者)
「川勝知事は去年いわゆる『コシヒカリ発言』をめぐり自民党が主導した辞職勧告決議が可決され窮地に追い込まれました。10日の会見では『自民党の要望をかなり取り入れたのでは?』という記者の質問に対し、川勝知事は「各会派の要望を見ながらなにが必要か検討した結果だ」と答えました。また川勝知事を支持する第2会派『ふじのくに県民クラブ』は『県税収入の回復は、安定したものではない。今後も事業の見直しを進める必要がある』と述べ、県の財政に懸念を示しています。予算案は、18日からの県議会2月定例会で本格的に議論されます」
《解説動画》