人が抱えた竹筒から炎が噴き出す勇壮な手筒花火。
今月、県東部の清水町で、3年ぶりに町の人たちに手筒花火が披露されました。コロナに負けず町を盛り上げようと、花火に挑んだ男性たちの熱い夏を取材しました。
(静岡放送局 木原奏人カメラマン)
※文末に動画全編を掲載しています。
【花火で町を元気に】
13年前、清水町では、「町のシンボルにしたい」という願いから、夏の祭りに手筒花火が取り入れられました。
花火を上げるメンバーの代表、小長谷貴央さん(50)は、10年前に軽い気持ちで始めた手筒花火にあっという間にのめり込んでいったといいます。
(小長谷貴央さん)
「自分で花火を作る経験なんてなかなかできないので、趣味というか生きがいにできるんじゃないかな。はまっちゃったんです」
ことし、コロナの影響で夏の祭りは3年続けて中止になりましたが、コロナ収束を祈願し、手筒花火だけは実施することになりました。
小長谷さんは、この手筒花火を、町を元気づけるきっかけにしたいと考えました。
(小長谷貴央さん)
「来ていただいた方にちょっとでも元気になってもらいたい。そのためにも、なんとしても成功させよう、頑張ろうという気持ちになりました」
【楽しんでもらうために】
花火の火の粉でやけどを負うこともめずらしくはなく、小長谷さんの腕にもいくつものやけどの痕が残っています。
しかし、体のそばで火薬を爆発させる手筒花火はさらに大きな危険とも隣り合わせです。
竹筒に火薬をつめて花火を作る小長谷さんたちも、汗を拭いながら真剣な表情で作業をしていました。
こうして1か月かけて花火が完成しました。
本番2日前にはリハーサルが行われました。リハーサルの会場では、小長谷さんたちが流行している曲などを流し、その曲に合わせて花火を上げる手順を確認していました。
音楽や照明を取り入れることで、コンサートを見るように観客に楽しんでもらいたいという独自の工夫です。
【いよいよ本番】
そして、本番当日。
3年ぶりの手筒花火を見ようと600人の町の人たちが集まりました。
集まった人たちからは、「3年ぶりなので、久々でうれしい」とか、「どういうパフォーマンスが見られるかすごい楽しみです」と久しぶりの手筒花火に期待する声が聞かれました。
本番直前、小長谷さんは一緒に花火を上げる仲間たちに声をかけました。
「それぞれの思いで作った筒をきれいに上げれるように頑張りましょう。よろしくお願いします」
辺りもすっかり暗くなった20時前、いよいよ手筒花火の披露です。竹筒から大きく炎が噴き出し、町の人々から歓声が沸きます。
大きさが違う2種類の筒を使うことで、パフォーマンスに厚みが増します。火花が散る中、メンバーたちは歯を食いしばって熱さに耐え、懸命に花火を上げます。
【これからも花火とともに】
およそ100発の花火を上げ終わり、小長谷さんは観客にあいさつをしました。
「3年ぶりにやっと皆さんの前で披露させてもらうことができました。皆さんが笑顔で帰っていただけますと幸いです。ありがとうございました!」
(花火を見た観客)
「感動しました。コロナがいつ収束するか分からないけど、こうした元気をもらえるイベントを開いてくれて自分たちももっと頑張ろうと思いました」
「みなさんの姿に感動しました」
小長谷さんの思いは、花火を見た町の人たちに届いたようです。
(小長谷貴央さん)
「思いは遂げられたと思います。これからも一生、足腰が立たなくなるまで手筒花火を続けたいです」
コロナに負けず自分たちの町を盛り上げたい。これからも町の男たちは花火を上げ続けます。