「魔改造の夜」の興奮と感動の競技から、凄いアイデアとテクニックを学んでスーパー技術者を目指す「技術者養成学校」が2022年春に開校(全8回)。劇団ひとり教官と特別講師のもと6人の生徒が競技を追体験し楽しく学びます。
第4回の教材は「ペンギンちゃん大縄跳び」。5匹のペンギンのおもちゃを魔改造し、大縄跳びをさせる競技です。
各チームのメンバー自ら大縄を回し、1分間で最も多くの回数を跳んだチームの勝利。魔改造の夜、初となる「人間とマシンの共同作業」競技です。
挑んだのは、横浜の超攻撃型町工場「S陽製作所」チーム、世界シェアトップを争うオフィス機器メーカー「Rコー」チーム、自動車産業界の影の番長「Dンソー」チーム。
講義では、まったく対照的なアプローチをしたS陽製作所とRコーの取り組み方とその結果を検証し、人とテクノロジーの未来や、理想的な関係は?を考えていきます。
【チーム紹介】世界シェアトップを争うOA機器メーカー「Rコー」
テーマ:人間と機械のチームワーク
第4回の特別講師はTED×Tokyoで講演もされた、東京大学の佐倉統教授。人間と科学技術の関わりについて研究されています。
人間にとって良いマシンとは?
今回のテーマは「人間と機械のチームワーク」。養成学校でこれまで学んできた内容とは異なる、新しい視点です。どんなことを考えていくのでしょうか? まずは、S陽製作所とRコーの魔改造マシンを比較してみます。
▼チームRコーによって魔改造された「PENTA-X(ペンタエックス)」
【マシン紹介】ペンギンちゃん大縄跳び:PENTA-X(ペンタエックス)(Rコー)
マシンに搭載した高性能のセンサーが、綱の動きに反応することでジャンプする
縄の回し手には、鍛え上げた野球部のキャプテンと元K-1選手を起用
結果:マシンも人もハイスペックで臨むも、実力を発揮できないまま時間切れに…(記録:17回)
▼チームS陽製作所によって魔改造された「ペン太5ん」
【マシン紹介】ペンギンちゃん大縄跳び:ペン太5ん(S陽製作所)
跳ぶタイミングをタイマーで自動設定
一定のペースで跳び続けるマシンに、縄を回す人間が合わせる
結果:高いパフォーマンスを披露し、優勝。(記録:64回)
魔改造マシンを体験
魔改造の夜で実際に使われたマシンが、各チームのリーダーと共に講義に登場。マシンを体感するべく、実際の競技を生徒たちに追体験してもらいます。
▼左から、Rコーの亀井リーダー、S陽製作所の澁江リーダー
▼チームRコーの「PENTA-X(ペンタエックス)」のセンサー感度を実際に体験
▼チームS陽製作所のタイマー式「ペン太5ん」。 跳ぶタイミングに、人が合わせる
優勝したタイマー式の「ペン太5ん」に、思いのほか苦戦する生徒たち。簡単そうに見えて、マシンが跳ぶタイミングに合わせるのは至難の業、一緒に回す相手との呼吸も合いません。チームS陽製作所の64回という記録は、回し手の同僚2人が長年の信頼関係で、息の合った縄回しだからこそ生まれていました。
人が合わせるか、機械が合わせるか
使う人にとって心地良い、人に寄り添ってくれる「優しいテクノロジー」の重要性を強調する佐倉先生。“人にとって良いマシン”に改造することに、魔改造で勝つための極意があるようです。
▼それぞれのマシンの良い点を考えてみる
ギネス世界記録への挑戦に密着
さらに講義内では、チームRコーのギネス世界記録への挑戦も教材として紹介。魔改造の夜会では力を出し切れなかったものの、このままでは終われないという思いを胸に、彼らはすぐに新たな活動を開始していたのです。
▼いざ本番! 目標は120回(世界記録は1分間106回)
▼結果は… 170回跳び続け、世界記録に認定!
▼「自分でも縄を回すべきだった」と語る、設計の緑川さん。設計チーム自ら縄を回すことで、今まで気がつかなかった不具合や改善点が見えるように
大きな改善点は2つ
▼脚の一体化で抜群の安定感に
▼センサーの位置を中央にして、縄の動きを確実に検知させる
▼終了後の会場では、観客や関係者たちも大縄跳びに挑戦
▼過去の夜会に登場したSライズ井上さんやT社大槻さんも、審査員として会場に
井上さん(Sライズ):
順番待ちをしていた時、早くやりたいと思いました。これってすごく大事なことで、プロの人が回さないと回せないんだったら、あんなにみんな並ばない。魔改造で勝てるものと興味をひくものは一緒かもしれないという気がしました。
大槻さん(T社):
餅つきじゃないですけど、人間が動かしてロボットが合いの手を入れる感覚でした。その感覚って今まで感じたことがなかったので、ロボットと人間の関係性の形として非常に面白いと思いました。
人の幸せな気持ちが、機械によって引き出された
みんなが喜んで回していただけるところを見れたのが何よりも大きな収穫だった、と語るRコー設計担当の緑川さん。
Rコーのギネス挑戦の成功から見えてくるものとは?
ギネスに再チャレンジしたRコーチームは、人間と機械のチームワークを強化し、「誰でも回せるペンギンちゃん」を生み出しました。
近年見直されている最新テクノロジー=「使う人にとって、より心地良い・使いやすいテクノロジー」を追求して、辿り着けた結果でした。
▼ゴミ箱ロボットが壇上に
▼ゴミを見つけ、「なんかある!」と声を発するゴミ箱くん
▼あまりのかわいらしさに、生徒たちの表情も緩む
▼しかし、ゴミを拾ってゴミ箱に入れるのは、ロボットではなく人
人とテクノロジーの理想的な関係性とは
豊橋技術科学大学で開発されたゴミ箱ロボットのような「弱い」ロボットは、その存在に癒されるだけでなく、機能をあえて落とすことで人が入り込む余地が作られています。
テクノロジーを発展させて、人がやることをロボットやAIに肩代わりさせるだけでなく、人と機械が一緒になって最終的にどれだけのことができるかを考えることが大事だと話す佐倉先生。
講義の中に、人とテクノロジーが目指す未来が垣間見えました。
▼魔改造で勝つための極意:人と機械の理想的な関係性を築くこと
講義を終えて…
生徒: 発明家 藤原 麻里菜
佐倉先生のロボット論はとてもおもしろかったです。私も技術を役に立つほうだけではなく、役に立たないほうに使うことを主にしているので、弱いロボットやテクノロジーの使い方というのはとても印象的でした。