「魔改造の夜」の興奮と感動の競技から、凄いアイデアとテクニックを学んでスーパー技術者を目指す「技術者養成学校」が2022年春に開校(全8回)。劇団ひとり教官と特別講師のもと6人の生徒が競技を追体験し楽しく学びます。
第5回の教材は「DVDプレーヤーボウリング」。DVDプレーヤーを魔改造し、ディスクを飛ばして25メートル先のボウリングピンを倒す難競技。その難競技に挑んだチームS陽製作所が魔改造した「Hulk Bogan(ハルク・ボーガン)」にフォーカスをあて、「華のある魔改造」の極意を学びます。
▼S陽製作所が魔改造した「ハルク・ボーガン」。制御しやすいモーターなどは採用せずにボーガンスタイルを取り入れ、周囲を圧倒する
【マシン紹介】DVDプレーヤーボウリング:Hulk Bogan(S陽製作所)
テーマ:「華」のある魔改造
第5回の特別講師は、30年活動するアートユニット明和電機の土佐信道氏。斬新な発明品を数多く生み出してきた魔改造のパイオニア的存在です。
▼装着したユビパッチン木魚「パチモク」のパフォーマンスを披露する土佐先生
「華」とは何か?
人は面白いものを見ると感動して心が動かされる。この状態こそが「華」だと土佐先生は話します。感動することで、心に華が咲くような気持ちになるのです。その具体例として、「DVDプレーヤーボウリング」での戦いを振り返り、今回のテーマである「華」のある魔改造について検証していきます。
見る者の心を掴んで離さなかった「ハルク・ボーガン」
「ハルク・ボーガン」は、お披露目の段階から高い注目を浴びました。モーターではなく、ボーガンスタイルを取り入れるといった予想外の驚きの発想と、その重量感あるたたずまい、圧倒的な美しさに、誰もが一目で心を奪われたのです。
そして、本番では第2試技でディスクを見事に命中させて6本のピンを倒します。モーターなしのボーガンスタイルで勝負にでて、技術力と発想力の高さを見せつけた瞬間でした。
魔改造の夜 第4弾 「DVDプレーヤーボウリング」(2022年1月22日放送)
華のある魔改造には、常識を超えた発想がある
ボーガンスタイルという、予想をはるかに超えた発想で勝負した「ハルク・ボーガン」。このようなマシンのことを、土佐先生は「ナンセンスマシーン」と呼びます。
通常はネガティブな意味合いで使われる「ナンセンス」ですが、ここでの意味は「非常識」ではなく「超常識」と解釈。常識を超えた発想こそ、華のある改造に必要なのです。
▼明和電機のナンセンスマシーン
バイクのクラクション(昔の暴走族がつけていたヤンキーホーン)を改造して作ったサックス「武田丸」。
▼生徒の2人も自らの過去の発明品をプレゼン
藤原 麻里菜 作:サンドバッグを殴ると謝罪メール文が打てる、「謝罪メールパンチングマシーン」
ギャル電 きょうこ 作:パーティー感が満載、お札をバラまくご機嫌なロボット「ポールダンスロボ」
華のある魔改造を生むには?
「華」には大きく分けて2つのタイプがあると話す土佐先生。
魔改造マシンたちには華があります。それはエンジニアの方たちが“クソマジメ”に作っているからです。
“クソマジメ”が行き過ぎることによって生まれる華もあるし、発想そのものがナンセンスであることから生まれる華もある。講義では後者を題材としたワークショップを行い、バカバカしい発想を生むための手順を、生徒のみなさんに学んでもらいます。
ワークショップ:おかしな発想法
人は常識的な生き物なので、ついつい脳のアイデアプロセッサーに蓋をしてしまいがち。その蓋を「おかしな」というキーワードをつけることで簡単に取っ払えることができます。本来、脳は、常識から一番遠いことを思いつけるのに、無意識に自ら蓋をしてしまっているのです。その蓋を取り外すためのワークショップ「おかしな発想法」を行います。
使う道具は2枚の紙とペン。まずは、朝起きてから触ったものを書き出し、その言葉に「おかしな」という言葉を組み合わせながら「おかしなプレーヤー」を形にしていきます。
▼5つのSTEPに分けて、言葉から連想されるイメージを広げていく
STEP 1:B列に朝起きてから触ったものを6つ書き出す
STEP 2:左隣りのA列すべてに「おかしな」と記入
STEP 3:できあがった「おかしな○○○」で浮かぶイメージをC列に記入
▼「おかしな」+「ふとん」から連想される単語「そらとぶ」をC欄に記入…「そらとぶふとん」のイメージが導き出される
▼紙を半分に折り、A~B列を隠し、C列のみを見てみる
▼C列にはその人の性質が見えてくる
「冷たい」+「極太の」+「巨大な」+「パーツがバラバラの」+「逃げる」???
STEP 4:C列の二つの言葉から「おかしなDVDプレイヤー」をイメージしD列に記入
▼2つの単語「とろける」と「そらとぶ」からぱっと浮んだDVDプレイヤーのイメージをD列に記入
STEP 5:D列に記入したイメージからひとつを選んで絵を描く
▼DVDプレーヤーのイメージをスケッチ。土佐先生が講評
土佐:これまで僕がこの発想法をやってみて面白くなかった人は一人もいないんです。ここで生まれたキーワードをインターネットの検索エンジンで検索してみてください。絶対に出てきませんよね。それはなぜか。検索エンジンというのは多くの人たちの「常識」でできていてその中で「一番常識的なもの」が上位表示されます。コモンセンスの塊だからです。検索エンジンに出てこないような「おかしなこと」をみなさんは普通に考えられるんです。
どうやったら、「華のある魔改造」ができるようになるか?
土佐先生の答え=とにかく数を打つ!
脳に、クリエイティブな分野に対応できることへの自信をつけさせる
脳に、いっぱいやったぞという手ごたえを感じさせる
講義を終えて…
生徒:高専4年 清水 由彦
普段からついつい脳に制限をかけてしまいがちですが、「おかしな」という言葉をつけることで新しいアイデアが引き出せるということが実感できました。
いつも、何かものを考える時に、機械的なところとかからつい見ちゃいがちですけど、それを一旦全部取っ払うってのが、そのおかしなって言葉をつけることなんだなっていうのが分かりました。
生徒:ギャル電きょうこ
最初は常識を超えることができなくても、とにかく数多くアイデアを出せば華のある魔改造にたどり着けることが分かって勇気が出ました。
最初はぜんぜん常識をこえられなくても、1000回やったらだんだん形になるんだなと。