「魔改造の夜」の興奮と感動の競技から、凄いアイデアとテクニックを学んでスーパー技術者を目指す「技術者養成学校」が2022年春に開校(全8回)。劇団ひとり教官と特別講師のもと6人の生徒が競技を追体験し楽しく学びます。
第3回の教材は「ワンちゃん25m走」。おもちゃの「歩く子犬のワンちゃん」を凄まじい速さに魔改造して25mを爆走させます。その爆走レースに挑んだのは東京下町工場の星・H野製作所チーム、日本の最高学府T大工学部チーム、自動車メーカー世界のT社のエンジニアチーム。三者三様の「モンスター」が誕生した衝撃回。なぜそのような怪物・魔獣が生まれてしまったのか。エンジニアたちに宿る「魔」の存在を芸術的な側面から分析していきます。
▼左から、H野製作所チーム、T大工学部チーム、自動車メーカーT社チーム
テーマ:なぜ魔獣キングスパニエルが生まれたのか?
第3回の特別講師は東京工業大学の伊藤亜紗教授。理工系の大学でアートや感性の授業を展開されています。
工学的なモノづくり=計画性があり 安全で再現度が高い
芸術的なモノづくり=意外性や偶然性があり非日常的
方向性の異なる2つの考え方ですが、モノを作るという点は多くの共通点を持ちます。
「魔改造」に挑むのであれば、この考え方の両面を習得して、自分で作って自分でびっくりする、という経験をしてもらいたい、と伊藤先生。
「ワンちゃん25m走」に登場したT社の「魔獣キングスパニエル」を教材に、生徒たちとともに新たな視点で魔改造を追体験していきます。
▼「ワンちゃん25m走」の生贄(いけにえ)=おもちゃのワンちゃん:8秒かけて27cmをゆっくり歩く
▼自動車メーカーT社のエンジニアによって魔改造された「魔獣キングスパニエル」。なんと顔が4つ。太いしっぽで重心を保ち走る。目標は、25mを2秒で爆走!
作っている本人が“悪魔化”している?
「魔改造の夜」での矢野武さんによる実況定番コール「それでは参りましょう。悪魔の降臨です!」。
このフレーズの「悪魔の降臨」とは、どういうことなのか? 魔改造されたモンスターたちに降臨、ではないのかも?
「ワンちゃん25m走」を繰り返し視聴した伊藤先生は、参戦するエンジニアたちに悪魔が降臨し、その降臨した悪魔が人間を通してこれらのモンスターマシンを生み出しているのではないか、と感じたそうです
作り手に悪魔が憑依している?
作り手のリミッターがはずれてる?
モンスターをつくる人は、自らモンスターになっているのでは…
「魔獣キングスパニエル」を生み出したT社。顔を4つ持つというインパクトある形状だけではなく「キングの名にふさわしい走りを。25Mを2秒で走らせます!」との宣言まで。会場からは「えっ、2秒って言いました?」とのどよめきが。
「リミッターを外したものを作ることができる人は、本人もリミッターが外れている。その状態で作ったからこそ、本人もびっくりするようなものを作り出せる」と伊藤先生は分析。
▼顔が4つあることについて…「試作も含め4台のスパニエルが提供されたので『みんなを一緒に走らせたい』という思いでひとつにしました」と語るT社の原田さん
内なるモンスターを目覚めさせるため自分を魔改造しよう
技術者養成学校の受講者のみなさんも、自身のリミッターを解除し、違う自分に出会ってほしい… モンスターの基本は「合体」ということで、自分と何かを組み合わせて自分自身を魔改造するためのワークを始めます。
まずは、カードを引いて自分と合体する“相方”を決めます。
その片割れの性質を分析し、“相方”と合体した自画像を描いて… 機能や機構までを盛り込んだ「魔改造計画書」の作成していきます。
▼できあがった魔改造計画書に伊藤先生が講評。生徒たちに新しい視点が生まれ…
講義を終えて…
生徒:発明家 藤原 麻里菜
頭をやわらかくすることって、すべてのスキルにつながる、ということが分かりました。面白いことができる確率があがった気がします。
生徒:高専5年 舘野 桜
空想して自分に取り込むというのがとっても難しかったのですが、それを真剣に考えることで、もう一人の自分ができたような気がします。もう一人の自分だったらこういうことを考えるのかな、と新しく別の考えができるようになりました。
生徒:機械工学修士課程1年 青野 航大
突拍子もないアイデアの背景には、その人の熱い想いや、徹底的な観察で得られた知見、科学に裏打ちされた技術が存在することを学び感銘を受けました。与えられたお題と自分を合わせて魔改造するというワークは難しかったですが、異質なものを結びつけるという考え方は、広く創造のプロセスで活きると思っています。