<この記事は7月15日の放送をもとにしています>
各地で危険な暑さとなっており、熱帯夜となるところも増えています。この暑い夜を、どう乗り切ればよいのでしょうか?
【最高気温39. 1度も】各地で危険な暑さ 相次ぐ熱中症搬送
最高気温39. 1度と、東京・八王子市でことし全国一番の暑さを観測した7月12日。東京・練馬区やさいたま市でも38度を超えるなど、各地で危険な暑さになりました。
埼玉県久喜市の消防には、熱中症の疑いのある救急搬送の依頼が相次いでいました。
消防)
「どうされました?」
通報してきた人)
「熱中症だと思います」
消防)
「熱中症疑いですね。いま症状は?」
通報してきた人)
「意識なくて倒れちゃって」
消防)
「体育のあとに症状が出たんですね」
通報してきた人)
「意識はあるんですけど、もうろうとしている。おう吐があります」
取材したこの日は、熱中症の疑いがある通報が16件。このうち10件は、入院が必要な中等症だったということです。熱中症以外の通報もあり、取材中、救急車はひっきりなしに出動を繰り返していました。
埼玉東部消防組合 久喜消防署 浦部 誠 救急救命士)
「意識状態が悪い患者もいる。その場合はすごく急がなくてはいけない」
全国各地ですでに熱帯夜相次ぐこの夏
7月12日の夜から翌朝にかけての、全国900あまりの観測点の気温の変化をみてみたところ、赤色で示した点が、気温25度以上。全国160あまりの地点で熱帯夜となりました。
すでに熱帯夜が相次ぐ、ことしの夏。
7月13日の午後8時前の気温です。依然として30度を上回っています。
街の人)
「もう汗かいています。たぶん、ずっと夜も気温が下がってない」
街の人)
「暑苦しくてなかなか寝つけない」
日が沈んでもなかなか下がらない気温。その理由の一つと指摘されているのが、日中に熱くなった建物の壁などに残る熱です。撮影用に借りた住宅を、サーモグラフィーで撮影してみると…。
家屋の外壁の部分に、まだ熱があるのが分かります。午後8時過ぎの時点で、まだ30度以上ありました。
家の中にも熱がこもっています。サーモグラフィーで撮影すると、やはり壁や天井が30度以上ありました。
エアコンをつけると、いったん部屋は涼しくなります。ただ、寝る際にエアコンをタイマーで消すという人も多いと思います。では、室温26. 7度、湿度56%の涼しくて快適な室内で、エアコンを止めるとどうなるのでしょうか? …エアコンを止めてからわずか1時間ほどで、室温は31. 1度と、30度を超えました。
夜間の熱中症、特に高齢者は注意を
いま、こうした暑い室内で相次いでいるのが、夜間の熱中症です。
7月上旬、夜間に熱中症になったとみられる80代の女性は、朝起きてすぐにおう吐し、娘が訪ねた際には意識がもうろうとしていましたといいます。医師が訪問した際には、室内はかなり暑かったということですが、女性は長袖のパジャマを着て毛布にくるまり、脱水の症状もみられました。
医師)
「きょうは暑くなかった?」
80代女性)
「どうでしょうかね」
医師)
「あんまり気にならなかったですかね。昼間はクーラーをつけていますか? つけてないですね。いま、これだけ暑いから、夏だからちゃんと水を飲んでください。あとクーラーをつけてください」
ファストドクター 吉川隆広医師)
「高齢者は気温の上昇や暑いことを感じにくい人が多くいるようで、冷房をつけていない人もかなり多い」
夜間の熱中症を防ぐためには、意識してエアコンを使うこと。寝る前などに十分に水を飲むことが重要だということです。
熱帯夜を超える「超熱帯夜」が増加か
さらに近年、25度を大幅に上回る、特に気温が高い夜が増えているといいます。警戒を呼びかけているのが、日本気象協会です。
日本気象協会 高森泰人 気象予報士)
「日本気象協会では昨年、新たな暑い夜のことばを定義しました。それが『超熱帯夜』になります」
超熱帯夜は、気温が30度を下回らない夜のこと。新たな言葉を作ったねらいは…。
日本気象協会 高森泰人 気象予報士)
「『超熱帯夜』ということばを使って、夜の熱中症に注意してもらいたい。25度以上の熱帯夜でも、かなり体に対するインパクトはすごい。夜の30度はかなり体に響いてくる」
協会によりますと、超熱帯夜は1990年以降、16回観測。今後、増えていくと予想しています。
日本気象協会 高森泰人 気象予報士)
「昼の熱中症対策はみなさん心がけているが、夜の熱中症対策も考えなければならない。超熱帯夜になるような日も、条件さえそろえば増えていくのでは」
【中継】夜もまだ暑い!東京 渋谷 サーモグラフィーで見てみると…
夜も続く、暑さ。午後9時20分ごろ、 JR 渋谷駅前からの中継では、手元の温度計で気温は29. 6度。立っているだけでもじっとりと汗をかくような暑さです。そして、夜になっても街のいたるところに日中の暑さが残っていました。サーモグラフィーを使って、実際に見ていくと…
ビルの上の部分はガラス張りで、屋内に冷房がかかっているため、青く見えています。しかし、下のガラス張りでない部分は緑色や黄色になっています。だいたい25度から30度ほどの熱が残っていることを示しています。
さらに、駅前のロータリー。道路は一面黄色く、一部赤くなっているところもあります。40度ほどの熱が、夜のいまも溜め込まれていることが分かります。
7月15日は、都内で午後9時までに、熱中症の疑いで48人が救急搬送されたということです。
【解説】あなたもぐっすり! 熱帯夜でも快眠のコツ
熱中症を防ぐために大事なのが、睡眠です。夜、寝苦しく、暑くて眠れないと、翌日に熱中症になるリスクが高まる可能性があるということです。
そこで、熱帯夜でも快適に眠るポイントを徹底的に見ていきたいと思います。暑さと睡眠の関係に詳しい、和洋女子大学の水野一枝さんに話を聞きました。
―――ぐっすり眠るためには“深部体温”が大事ということですが、この深部体温とは何でしょうか?
水野さん)
「深部体温とは、体の中心部の温度です。深い部分の温度で、だいたい37度ぐらいに保たれています。体の表面皮膚の温度よりはちょっと高いです。この深部体温が下がることで、私たちは眠りにつき、さらに深い眠りにつくということが分かっていますので、深部体温を下げることが、快適な睡眠には欠かせません」
【睡眠のカギ】深部体温を下げるには、どうすればいい?
では、どうしたら深部体温を下げられるのかを見ていきます。
深部体温を下げるためには、寝室の温度が大事です。夜寝るときに寝室が暑いと、人は体の表面からうまく熱を逃がすことができず、深部体温が下がりません。一方、周りの温度が涼しいと、うまく熱を逃がすことができるため、深部体温が下がります。つまり、重要なのは周りの空気の温度、室温なのです。
こちらは、水野さんが行った実験結果です。実験では、実際に寝てもらい、室温や湿度をどれくらいにすれば深部体温が下がるのか調べました。縦軸が深部体温。横軸が時間です。室温26度、湿度50%のときは深部体温が順調に下がって、ぐっすりと眠れている状態です。しかし、室温32度、湿度80%のときはほとんど下がらず、寝苦しい状況になっています。
―――26度のときは、グラフが順調に下がり、ぐっすり眠れています。エアコンの温度設定は26度にするのがいいのでしょうか?
水野さん)
「エアコンの設定については個人差がありますので、だいたいの目安になりますが、26度から28度ぐらいに設定すると良いでしょう。28度よりは下に温度設定すると良いと思います。それより上だと、快適には眠れないことが多いです。
あともう一つ、湿度も非常に大切です。湿度が高いと汗が蒸発しないので、体からなかなか熱が外に逃げていかないため、湿度を60%より下に維持しましょう。ただ、エアコンを使用すれば湿度は下がるので、特に設定する必要はないと思います。
あと、高齢の方は、体温調節の機能がそもそも低下していることで、暑さを感じなくなってきています。温度の設定をする際には、寝室に温度計を置き、ご自身の感覚に頼るのではなく、温度計を見ながら設定をするとよいと思います」
寝るときのエアコン、タイマーは?
―――エアコンのタイマーを使う場合は、どれぐらいの時間つければいいでしょうか? 私は2時間で冷房が切れるようにしていますが…?
水野さん)
「2時間だとなかなか快適には眠れません。特に熱帯夜は、エアコンは一晩中使うのがよいと思います。
もしタイマーを使用する場合は、睡眠の前半に4時間程度は使ってほしいと思います。4時間使うと、しっかり深部体温が下がり、深い眠りになります。その後、室温が上がったとしても、一晩中使用しないときよりは、ちょこちょこ目覚めることが減ります。タイマー1、2時間では、深部体温が下がりきらないうちに室温が上がってしまうため、その後ずっと、ちょこちょこ目が覚めてしまって、結局、寝苦しいということになります」
つまり、上の図のように、深部体温がエアコンのタイマー1、2時間で下がっても、冷房が切れてしまうとまた深部体温が上がり、目が覚めてしまうということです。
―――深部体温が大事ということですが、夏場はお風呂に入らない方がよいのでしょうか?
水野さん)
「お風呂はむしろ入った方がいいと思います。お風呂に入ると深部体温が上がりますので、眠りにつくときに深部体温が非常に大きく低下し、深く良い眠りが増えるといわれています。ただ、寝る直前に熱いお風呂に入ってしまうと、かえって目が覚めてしまうので、寝る前はぬるめにします。熱いお風呂が好きな人は、寝る1時間前とか、少し時間に余裕を見て入るといいと思います」
【きょうから実践】熱帯夜を乗り切る快眠ポイント
暑い夜、ぐっすり眠るためのポイントはほかにもあります。人形を使って、快適に眠るためのポイントを説明していきます。
寝るときに下に敷くものは硬い方がいいそうです。なぜかというと、体が接する部分が少なくなるため、熱がこもりづらくなるからです。ふかふかだと体が沈み込んで熱がこもってしまいます。
次に服装です。首や袖口、そして裾は開いたものがいいそうです。風が通りやすく、熱がこもらないということです。
さらに、頭を冷やします。頭は特に放熱量が多いところなので、冷やすことで涼しく感じられるということです。
―――頭を冷やすときは、氷枕とかでいいのでしょうか?
水野さん)
「そうですね、冷たすぎると目が覚めてしまいますので、タオルなどで適宜、温度調節するといいと思います」
【快適な睡眠環境を】今後も続く、危険な暑さ
―――熱帯夜はこれからも増えそうですが、夜の暑さにも私たちの体は慣れていくのでしょうか?
水野さん)
「体は日中の暑さには慣れていくのですが、睡眠に関しては、暑いところでずっと寝ても、睡眠が変わることはないという報告が非常に多いです。8月、9月とおそらく暑い日がこれからも続きますので、快適な睡眠環境を整えていただいて、しっかり眠るということが大事です」