医師が語る熱中症 救急の現場は…

NHK
2022年7月7日 午後6:56 公開

猛暑が列島を覆い、都心では6月25日から7月3日にかけて9日連続の猛暑日になるなど異常な暑さが続きました。そんな中、相次いだのが熱中症の疑いで病院に搬送される人。6月、熱中症で病院に運ばれた人は全国で1万5657人、亡くなった人は17人で6月としては統計を取り始めた2010年以降最も多くなりました。

搬送者が急増した背景は?救急の現場はどうなっていたのか?埼玉慈恵病院の副院長で熱中症の疑いで搬送される人の受け入れを担当する藤永剛(ふじなが・つよし)医師に話を聞きました。

(ホルコムジャック和馬・越村真至)

<見逃し配信はこちらから 7月9日まで視聴できます>

【急増する搬送者 “この時期にはありえない”】

藤永医師の勤務する病院でも突如、熱中症の疑いで搬送される人の数が増えたといいます。

1週間ほどで4、5倍に増え、藤永医師も「この時期にしてはあり得ない」としています。なぜ搬送者が急増したのか。大きな要因の一つが「暑さへの慣れ」だと藤永医師は指摘します。梅雨が記録的に短かったことに加え、気温が急上昇したことで暑さに徐々に身体が慣れる「暑熱順化」が進まなかったのです。

藤永医師

「梅雨の最後の方からずっと酷暑が続いているので、暑さにまだ慣れていません。身体が対応できていないんだと思います」

【新型コロナと熱中症】

実際に熱中症で救急搬送された一人暮らしの94歳の女性のケースを藤永医師が教えてくれました。

6月下旬、自宅を訪れた宅配業者が、女性が倒れているのを発見し、救急搬送。女性はエアコンを使っておらず、自宅内はかなり蒸し暑い状態だったといいます。女性は意識があったものの搬送時の体温は38.9℃に達していました。

体温が高い場合、基本的には熱中症の処置を行う前に病院の建物の外に設けたブースで新型コロナウイルスに罹患しているかを検査する必要があります。

藤永医師

「本当にジレンマです。救急で熱中症を診ている者にとっては、もどかしいところ。1分でも1秒でもはやく、熱中症の処置に移りたいですが…」

診察の結果、女性は脱水症状に伴う腎臓や筋肉の障害を起こしていたため、入院することになりました。

【夜間も熱中症に注意を】

熱中症は、夜間にも注意が必要です。藤永医師によると、日中暑い環境に一定時間いて、そうした場所を離れた後に熱中症の症状が徐々に進行し、夜になって搬送されるケースがあるといいます。さらに、自宅など夜間を過ごす建物自体が熱を持っている可能性もあります。

藤永医師

「日中にずっと日差しが注いで建物に熱がこもります。その熱が夜になって放射熱として出てきて、部屋の中の温度が高くなり、熱中症を起こすことがあります。特に寝ているときは、水分補給をできなかったり、熱中症の症状が進んでいるのに気づけなかったりします」

藤永医師によると、例年は暑熱順化が進んでいくことで、8月上旬には熱中症の疑いで搬送される人の数も減ってくるといいます。ただ、あまりにも暑い期間が長い場合、搬送者が減らないのではないかと危惧しています。

藤永医師

「暑さで慢性的に体力を消耗してしまうと、暑熱順化しているにもかかわらず、体力がついていかず倒れてしまう人も出てくるかもしれない」