苦悩する三姉妹 ウクライナとロシアのはざまで

アナウンサー ホルコムジャック和馬
2022年4月27日 午後7:00 公開

【ウクライナとロシアに姉がいるウクライナ人女性】

ロシアによる軍事侵攻が始まってから2か月。「ウクライナとロシア」両方に家族がいるというウクライナ人女性が話を聞かせてくれました。東京でウクライナやロシアの食料品や雑貨を扱う店を営むミヤベ・ヴィクトリアさん(48歳)です。

ヴィクトリアさんは三姉妹の末っ子としてウクライナ南部のザポリージャで生まれました。1番上の姉はロシア・シベリアに在住。2番目の姉はマリウポリで看護師として暮らしていました。

【激戦地の次女と侵攻するロシアにいる長女】

2月24日の軍事侵攻開始から、マリウポリでは医薬品などの物資の不足が深刻になっていました。糖尿病を患っていた2番目の姉のイリーナさん(56歳)は、寒さなどが原因で体調を崩し、肺炎まで併発してしまいました。ビデオ通話を通じて、日に日に弱っていくイリーナさんを目の当たりにしたヴィクトリアさんは、マリウポリから避難するよう強く呼びかけたといいます。

3月初旬、イリーナさんは息子夫婦とともにマリウポリからの避難を決意。その際、普段はめったに写真を送ってこない姉から、ヴィクトリアさんの元に一枚の写真が届きました。それは姉が鏡に向かって手を振るような仕草をしている写真でした。ヴィクトリアさんにはそれが「さよなら」というメッセージにも見えたといいます。

ヴィクトリアさん

「もう会えないと思った…」

およそ1か月後、姉がマリウポリから避難したことを伝える知らせが届きました。ヴィクトリアさんは命が助かったことに安堵したものの、ビデオ通話で見た姉の様子は変わり果てていたといいます。

ヴィクトリアさん

「白髪が増え、顔も年齢より10年は年老いてしまっていた。目は、何をすればいい?と戸惑っていた」

2番目の姉のイリーナさんは今も、気持ちが落ち込みやすい状態が続いているといいます。

一方、1番上の姉のリュドミーラさん(58歳)は30年以上ロシアで暮らし、夫もロシア人です。第2の故郷とも言えるロシアにより、妹の命が奪われてしまうかもしれない。その現実に大きなショックを受けています。被害や戦況についてさまざまな情報が錯綜していて、リュドミーラさんは「何が嘘で何が真実かわからない」と精神的に追い詰められ、体調を崩して入院しなければならなくなりました。

【とにかく会いたい】

そんな2人の姉と連絡を取り続け、心配を募らせていたヴィクトリアさん自身も深く傷ついています。

ヴィクトリアさん

「私たち三姉妹は旧ソビエト時代に生まれた。なんでこんなことになっているのか理解できない」

ヴィクトリアさんが今、望んでいるのはマリウポリから避難した2番目の姉のイリーナさんを日本に呼び寄せることです。私たちに涙ながらに語ったのは「早く会いたい」という言葉でした。

【“国”に翻弄される人たちがいる】

ヴィクトリアさんが営む店では、ウクライナをはじめロシアやベラルーシなど5か国から日本にやってきた人たちが働いています。その中には、2014年に始まったウクライナでの紛争で難民となった人もいます。さらに、5月には今回の軍事侵攻によってウクライナから避難してきた人も従業員として受け入れる予定です。

取材のなかで、ヴィクトリアさんは店の中を案内しながら「ロシアだけじゃなくウクライナでも伝統的なマトリョーシカがあるんですよ」と教えてくれました。ヴィクトリアさんによると、ウクライナとロシアの両方に親戚がいるという人は多いそうです。ロシアによる軍事侵攻は、こうした境遇の人たちの気持ちを引き裂いています。“国どうしの争い”という枠だけでは捉えきれない人々の苦しみがあるのだと感じました。

(サタデーウオッチ9リポーター  ホルコムジャック和馬)