秋田 湯沢市 おらほの芸舞妓(げいまいこ) コロナ禍を乗り越えて

NHK
2023年3月9日 午後6:01 公開

華やかな伝統芸能を通じて、地域を盛り上げたいと活躍する団体が湯沢市にあります。

コロナ禍を乗り越えて活動するその姿を追いました。(秋田放送局 キャスター武田実紗)

あでやかに 湯乃華芸妓(げいぎ)

湯沢市にある仕出し店です。

着物に身を包み、和楽器の音色に合わせて、あでやかに舞う女性の姿がありました。

県の南部を中心に活動する芸子と舞妓(まいこ)の団体、

「秋田湯沢湯乃華芸妓(あきたゆざわ ゆのはなげいぎ)」です。

お座敷や宴会場で踊りを披露するなどして、客をもてなします。

湯乃華芸妓は、京都風のいで立ちで、着物の裾引きやだらりと垂れた帯が特徴です。

8年前に団体を立ち上げたのが、阿部一人さん(あべ・かずと)。

自身も現役の舞踊家として活躍し、日本舞踊の魅力を広めています。

湯沢の芸者文化を再び

写真:かつての湯沢芸者(提供:無明舎出版)

もともとこの地域では、地元の鉱山や温泉が栄えていた当時、客をもてなす湯沢芸者が

活躍していたとされています。

しかし、お座敷離れによる芸者の収入減や後継者不足などで、

50年ほど前に廃れてしまったのだそうです。

阿部さんは、そんな湯沢の芸者を復活させて地域を盛り上げたいと考えました。

阿部さん

「やはり、この地域に明るさ華やかさ、

そんなものを取り戻したいっていうのが一番」

阿部さんは、勤めていた職場を早期退職し、芸舞妓団体の立ち上げを決意しました。

しかし当時、好意的な反応は少なかったといいます。

阿部さん

「そんなのできるはずがない、ですよ。

そんなのできるはずがないからやめたほうがいい、ですね。最初は」

しかし、伝統芸能に興味を持つ女性もいたのです。皆さん別の仕事をしながら、

華やかな世界にあこがれを持ち、この世界に飛び込んでいます。

市佳依(いちかよ)さん

「もともと大衆演劇が好きで、

ある日湯沢市の広報に湯乃華芸妓の舞妓(まいこ)さんが載っているのを見て、これは!

とびっくりして、自分から電話をかけて始めたのがきっかけです」

日頃の稽古に加え、本場・京都で技術を学ぶなど研鑽に勤め、少しずつお座敷や宴会

場での仕事も入ってきていました。

新型コロナ、乗り越えるために

そんな中起きたのが、新型コロナの感染拡大。お座敷の予約はほとんどがキャンセル

になり、芸舞妓の収入も激減しました。

阿部さん

「やめていった子もたくさんいますし。

私ももうやめちゃおうかなと思ったんです正直な話、

でも悔しいじゃないですかこれまでやってやめちゃうのは」

お座敷の仕事がない中、できることはないかと取り組んだのが、湯乃華芸妓を知って

もらうための活動です。

市役所のロビーで踊りを披露したり、リモートでお座敷遊びを配信したり、

自分たちから打って出ることにしました。

阿部さん

「とにかく自分たちを知ってもらわなければいけない。

ただお座敷を受け身でご依頼を待っているだけでは難しい。

舞妓さん呼んでお座敷やろうかっていうのはなかなかハードル高いですよね。

なので無料でそんな世界を覗き見ることができるとすれば、それは皆さん喜ばれます、

やってよかったなと思いますよ」

地域とつながる芸舞妓に

こうした取り組みを通じて、次第に地元からの認知度も上がってきたのだそう。

この日は久しぶりのお座敷遊びが盛り上がりました。お客さんからの応援の声も広がって

います。

地域の団体代表「誇りに思いますよ、俺は誇りに思ってるし、

だから応援できる。これからも頑張ってもらいたいね」

阿部さん

「うちの子たちが町を歩く時はきょうお座敷?って

声をかけてくださる方がたくさんいるんですよ。

近所のおばさんのいらっしゃいがんばってらっしゃい、ありがたいですよ本当に。

これからもっと『おらほの芸子』『おらほの舞妓』と言っていただけるような

団体にしたい。」

地域とつながり始めた湯乃華芸妓。苦しい時期を乗り越えて活動が続きます。