秋田 にかほ市 地域の新たな名物に!? 漁船酒

NHK
2023年2月21日 午前11:00 公開

漁船で寝かせた日本酒が誕生!!・・・一体どういうことなんでしょうか?地域の観光資源にしたいという新たな取り組み、宮地由季キャスターが取材しました。

漁船から下ろされるのは、日本酒!?

にかほ市の金浦漁港。

水揚げされたのは、新鮮な魚…だけではありません。

なんと日本酒!

およそ1か月半。漁に出る漁船に揺られ、寝かせたお酒です。

去年12月に完成が披露されたにかほ市の新たな観光資源、その名も「漁船酒(ぎょせんざけ」です。

地域の力で実現、漁船酒

なぜ船で寝かせているのか、企画者の元を訪ねました。

にかほ市を中心にまちづくり支援を行う民間団体の代表、金子晃輝さんです。3年前に神奈川県からにかほ市に移住し、地域の方と交流を深めてきました。

漁船酒、きっかけは地元の漁業者との会話だったそうです。

金子さん「お酒をたまたまお祝いでもらったときに船に積んでいて、ほっといて出てきたを飲んだら角取れて美味しかったっていう話をしてくれたんです。」

本当にそんなお酒が生まれるのか? 金子さんたち、実際に「漁船酒」を作ってみようと、今回の企画が立ち上がりました。

協力したのが、室町時代創業の地元の酒蔵です。27代目の齋藤雅昭さん。酒造りから企画・営業なども担当しています。

そもそも本当にお酒を船に乗せると味がかわるのでしょうか?

齋藤さん「なんて突飛な話なんだと思ったけれど、ワインとかウィスキーなんかもやはりちょっとこう揺らしたりとか、空気を含ませてあげることで 味わいが非常にまろやかになったりとか、角が取れた味わいになるので、日本酒も同じようにそういうことがあるんです」

齋藤さんによると、日本酒に限らずお酒は、空気に触れさせることで柔らかい飲み口にして楽しむことがあるそうです。

漁船酒は瓶詰めされた状態で揺れるので、ゆるやかに空気と触れ合い、味が程よく変わると考えられます。

今回の日本酒、変化を見越して、漁船酒のために特別にブレンドしました。

さらに、地元の漁師さんもお酒作りに協力。漁師歴46年、佐藤真智夫さんです。実は漁船に乗せると酒の味が変わることを最初に伝えたのが佐藤さん。

皆で声を掛け合い、船での酒の保存が実現することになりました。佐藤さんの船では、漁で使う網をしまう倉庫、お酒に日光が当たらない場所を借りています。

船底なので、温度も海水と同じくらいだそう。

冬場であれば日本酒の保存にも問題ないそうです。

こうして1か月半、船に乗せて揺らすことで、どうかわるのでしょうか?

漁船で寝かせたお酒、そのお味は?

佐藤さんと一緒に試飲をすると・・・・。

本当に味が変わっていました! 載せる前のお酒は、ピリッとくる切れ味のある味わい。それがびっくりするくらいまろやかで飲みやすくなっていたんです!

さらに船によって味の変化にも差が出たんです。今回協力したのは底引き網漁船5隻。ラベルに船の名前が入っています。

船の形や乗せる位置、漁に出ている回数によって揺れ方などが変わります。それによって味に差が出たと考えられます。

企画した金子さん、漁船酒を通してにかほを知ってもらいたいと考えています。

金子さん「地域の方々、魅力ある地域プレイヤーの方々がたくさんいるので。そういった方々があってのその商品になるので。にかほ市を感じられる一杯になればいいなと思いますね。にかほ市内でしか飲めないお酒なので。このお酒を求めに、にかほの観光客が増えるといいなと思いますね」

金子さんたち、今後は地元でこのお酒を取り扱う飲食店や宿泊施設を増やすとともに、漁業者とのふれあいなど体験も織り交ぜて、にかほ市の滞在型観光を促進していこうと計画中です。

漁船酒から始まるにかほの新しい観光に注目です。

(取材:NHK秋田放送局 キャスター 宮地由季)