若い世代に知ってほしい「プレコンセプションケア」

NHK
2022年10月13日 午後9:02 公開

プレコンセプションケア」という言葉を知っていますか?女性やカップルが将来の妊娠を考えながら、日々の生活や健康と向き合うというものです。この「プレコンセプションケア」を若い世代に知ってもらうための取り組みが始まっています。

そこには、若い世代が将来子どもを望んだときに悔しい思いをしないよう、今の自分の体に向き合ってほしいという一人の医師の願いがありました。

(秋田放送局 アナウンサー 大谷昌弘)

「プレコンセプションケア」とは

「プレコンセプションケア」は直訳すると「妊娠前の健康づくり」。略して「プレコン」とも言われます。

若い男女が今の生活や健康を見直すことで、不妊のリスクの減少や、将来生まれる子どもの健康にもつながるとされています。

今、不妊治療を行う夫婦や若い女性のやせや肥満の増加でリスクのある妊娠が増える中、この「プレコン」が注目されています。

例えば、

・栄養バランスを考えた食事を心がけること

・ひどい月経痛などがある場合、婦人科医に相談すること

・不妊の原因や妊娠中に赤ちゃんの健康に影響を及ぼす性感染症の感染を防ぐこと

などが挙げられます。

国でも、この「プレコンセプションケア」に関する体制整備を図る動きが出てきています。

まだ妊娠や不妊がイメージしにくい若い世代に伝えたい

この「プレコンセプションケア」を若い世代に伝えたいと活動する産婦人科医が秋田市にいます。秋田大学医学部附属病院の医師、藤嶋明子(ふじしま・あきこ)さんです。

藤嶋さんが「プレコンセプションケア」を広める活動を始めた背景には、産婦人科医としての悔しい経験がありました。患者の中には、正しい知識がなかったことで、性感染症がおなかの赤ちゃんにも感染してしまった事例や、ひどい月経痛の放置が不妊に繋がってしまったケースもあったといいます。

(藤嶋さん)

「妊娠する前から知っていてほしかったなぁっていうことや、実際に私たちももっと早く介入できていればとか、こうすれば予防できたのに、という症例に実際にあうことも少なくないです」

そこで藤嶋さんは、ことし2月、体のことについて気軽に相談できるようにしようと、病院に無料の相談窓口を設けました。相談は、電話やオンライン、対面で応じています。

これまでに10代後半から80代まで、不妊や月経などについて幅広い相談が寄せられました。

秋田大学医学部附属病院の産婦人科無料相談窓口 (※NHKサイトを離れます)※別タブで開きます

(藤嶋さん)

「例えば、高校生の月経困難症だったり、生理の時に体調が悪くて学校に行けないっていうような相談も若い人から受けています」

一方で、藤嶋さんは、不妊につながるケースを防ぐためにも、若い世代の人たちに正しい知識を知ってもらうことが重要だと感じたといいます。

(藤嶋さん)

「若い人たちって、いつか自分が結婚して妊娠して、パートナーでも子供を授かって健康な赤ちゃんを抱っこするって当たり前のビジョンで思っていると思うんですけど、実はそうではないんだよって。その自分が後悔しないために自分を責めないような将来を歩むためには、今からできることがあるっていうことを伝えられたらいいなと思っています」

また、秋田のように高度な不妊治療を行える医療機関が限られる地域こそプレコンが大事だと言います。

(藤嶋さん)

「秋田県だと凍結胚移植とかそういうものをやっているのは、秋田市内にごく限られた施設しかありません。ですので、実際に不妊治療を行っている方は、県南・県北から、何度も何度も遠いところから通っていて、やはりそうなると仕事の両立も難しいです。なので、秋田だからこそ、プレコンだったり性教育だったり、性に対する知識を普及する活動がすごく必要だと感じています」

初めて学生たちに直接訴えかける

9月上旬、藤嶋さんは、秋田市で不妊治療と仕事の両立支援を行うNPOとともに、美容師を養成する専門学校生へ向けて、初めて「プレコンセプションケア」について説明しました。

藤嶋さんは、女性の月経痛は「我慢するものではない」として、受診の目安をあげました。

(藤嶋さん)

「月経生理については皆さん症状を人と比べることができないんで、何が正常で何が異常か分からなくて、ずっと受診を我慢する人が多いです。

▼月経痛があって、日常生活、例えば、学校に来られない症状

▼月経周期が24日未満、39日以上

▼ナプキンを1、2時間で変えないといけない

▼生理のとき以外もおなかが痛いとか出血がある

こういったときは、すぐに婦人科を受診した方がいいです」

また、妊娠を考える前から、日頃の食生活や体型の維持が大切だと訴えました。

(藤嶋さん)

「みなさん、ちゃんとごはんを食べているでしょうか。やせの女性のおなかの中にいると、赤ちゃんは飢餓状態でも生きていけるようにプログラミングされます。実際生まれてくると、そんなに飢餓状態の日本ではないので、(赤ちゃんが)ふつうに飲食していると肥満になりやすかったり、生活習慣病になりやすかったり、リスクが出てきます。自分のためにも赤ちゃんのためにも適正体重、やせすぎには注意するということが重要です」

最後に藤嶋さんは、体についての悩みを気軽に相談してほしいと呼びかけました。

(藤嶋さん)

「妊娠してからでは遅いんです、赤ちゃんや自分に何か起こってからでは遅い。友達に相談するつもりで、ぜひ相談していただければなと思います」

話を聞いた学生にも新たな気づきがあったようです。

(女子学生)

「普段の生活でも自分で我慢したりすることがあったので、遠慮しないことも大事だなと思った。同じくらいの歳の人がこうやって知識がもっと増えていけば、周りも楽になるかなあって思います」

(男子学生)

「女性の大変さっていうのはよく分かっていたつもりではいたんですけど、話を聞いて分からないこともあって。自分の健康もそうですけど、女性の健康も気遣っていけたらなと思います」

藤嶋さんは、将来子どもを望む人が後悔しないよう、「プレコンセプションケア」を広く伝えていきたいと考えています。

(藤嶋さん)

「プレコンという言葉を知ってもらえただけでも、すごく大きな一歩になったんではないかなと思っています。中学生だったり高校生の食生活を支えているのは親世代ですし、実際に働き始めてそこで生理が辛いから受診したいという時に休ませてくれる上司は必要ですし、すべての場所で、プレコンということを知ってくれている人が一人でも増えればいいなと思っています」

もちろん、子どもを持つことがすべてではありませんし、「プレコンセプションケア」は妊娠・出産を勧めるものでもありません。ただ、将来子どもを望んでいる人が後悔しないよう、人生の選択の可能性が広がるよう、多くの人に「プレコン」を知ってもらいたいと感じました。

今回、私が取材を始めたきっかけも、妻と生活する中で、女性の体調の変化の大きさや月経の大変さを隣で感じてきたことでした。取材を通じ、妻の健康はもちろん、私自身も毎日野菜を食べるようにするなど、食生活を今まで以上に気にかけるようになりました。

妊娠の希望の有無に関わらず、「プレコン」を通じ、多くの人に自分やパートナー、家族の健康に向き合ってもらえたらと思います。

今回取材した秋田大学医学部附属病院の藤嶋さんが担当し、「プレコンセプションケア」について具体的なアドバイスを見ることができるサイト「あきたでプレコン」は、こちらのURLからアクセスできます。

「あきたでプレコン」 (※NHKサイトを離れます)※別タブで開きます

大谷昌弘

2014年入局。盛岡局・甲府局を経て、去年から秋田局。

今年度から「ニュースこまち」キャスター。

これまで福祉、教育、パラスポーツからアイドルまで幅広く取材・番組を担当。

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