フリースクールを知っていますか?

NHK
2023年11月29日 午後5:05 公開

『文部科学省がフリースクールの存在を認めたことにがく然としている』

『不登校の大半は親の責任だ』

ことし10月、滋賀県東近江市の小椋正清市長が、県が開いた不登校について話し合う会議の場などでこのように発言しました。

この発言によって注目されることになった「フリースクール」。しかし、どのような場所なのか、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。

滋賀県や県内のフリースクールなどでつくる協議会によりますと、県内にはフリースクールなどの運営を行う団体や個人が44あり、公立の小中学校や高校からおよそ200人が通っているということです。

このうちの1つのフリースクールを取材しました。

(大津放送局 記者 森将太)

学校に行けない子どもたち

滋賀県近江八幡市にあるフリースクール「Since」です。

近江八幡市だけでなく、東近江市や野洲市、守山市、栗東市などから、不登校などで学校に行けない小学1年生から中学2年生までの18人が通っています。自転車や電車で通う子もいますが、保護者の車で送迎してもらう子もいます。

このフリースクールに、東近江市から通っている兄弟がいます。

中学1年生の兄は小学2年生の時、学校に行けなくなりました。それから3年ほどは、ほとんど家で過ごし、時々、登校することもあったといいますが、次第に、学校で全員が同じことをしなければならないことに違和感を覚えるようになったといいます。

小学3年生の弟です。

弟も1年生の時、学校で、時間内に給食を食べるよう強く指導されたことなどから、息苦しさを感じ、不登校になりました。

兄弟は、2年前からこのフリースクールに通っています。

母親の泰子さんは、以前とは違う息子の様子に大きな不安を抱えていたといいます。

学校行くのがしんどそうやったし、下の子は特に本当にしんどそうやったし、それを見てる私もしんどかったし、もう学校に行かんでいいって言いたくなるくらい。しんどかったですね、毎日

フリースクールはどんな場所?

このフリースクールの代表の麻生知宏さんです。

自らも中学2年生の時に人間関係に悩み、不登校を経験しました。その経験があるからこそ、子どもの役に立てるのではないかと、3年前、同じ滋賀大学を卒業した友人2人とフリースクールを立ち上げました。

学校に行けなくなって、自分は人生終わったなと思ったんです。そのくらい子どもにとっては学校がすべて。今となっては、不登校は人生の終わりじゃなくて、僕にとっては始まりだったなと思っています。学校以外の学びの場は、正直充実していないかなと僕たちは感じて、学校以外にも子どもを育てる場所があるよというのを言いたいなと思って、フリースクールの設立を目指すことになりました」(麻生さん)

不登校の子どもたちの教育の機会を確保するために2017年に施行された「教育機会確保法」では、フリースクールなどの学校以外の学びの重要性が明記されています。

フリースクールによって運営方法は異なりますが、ここ「Since」は週5日開いていて、朝は、学校よりも遅めの午前10時半から始まり、午後4時に終わります。「マイスペース」という自由時間があるほか、自分がやりたい学習をしたり、希望者だけが参加して花を植えたりと、子どもたちに合わせたスケジュールを決めて、ゆったりと過ごしています。部活動の時間では、英検などを勉強する「検定部」や、実際に料理をする「料理部」、それに「サッカー部」など、子どもたちがやりたい活動をしているほか、掃除も子どもたちが率先して行っています。

子どもたちの“居場所”

県内の複数のフリースクールを見て回り、ここ、「Since」にたどりついた兄弟。

小学2年生で不登校になった兄は、ここで過ごすうちに積極性が出てきて、今では他の子どもたちを引っ張る存在になってきたといいます。

「すごく変わったと思います。ここではリーダー的な存在です」(母・泰子さん)

弟は、自分に自信が持てるようになったといいます。

みんなで遊べるところが楽しい。家ではないけど、家みたいな感じ」(弟)

フリースクールに行き始めたら急に楽しくなって、毎日喜んで行くようになりました。上の子は思春期に入って『親だけでない関わりが必要なんじゃないかな』と思っていた時に、Sinceさんに出会えたので、ものすごく助かっています」(泰子さん)

フリースクールをめぐる課題は

不登校の子どもにとって、大事な居場所となっているフリースクール。

「学校」として認められてはおらず、平均して月に3万円ほどの利用料がかかります。

県によりますと、フリースクールを利用する保護者に金銭的な支援をしているのは、県内では近江八幡市、草津市、甲賀市、彦根市、米原市、日野町の6つの市と町のみ。

このうち、近江八幡市、草津市、甲賀市、米原市の4市は月に最大4万円、彦根市は月に最大3万円、日野町は月に最大5000円を支援しています。

一方で、東近江市や大津市など、支援の仕組みがないところも多く、県内の自治体の間で支援にばらつきが生じています。

麻生さんは、同じフリースクールの利用者の中でも、住んでいる市や町によって、支援が受けられたり受けられなかったりするとして、行政との対話を通じて県内一律での支援を求めています。

自治体によってすごく支援のばらつきがあると感じています。フリースクールに通うことで、経済的、身体的、精神的負担が保護者にはかかってしまいます。保護者もよりよく過ごしていくために、やはり県全体で支援がなされることが理想かなと思っています」(麻生さん)

フリースクールを取材して

フリースクールの関係者から聞いた話では、フリースクールを利用する保護者への金銭的な支援において、滋賀県は関西の中でも進んでいるほうだといいます。しかし、同じ県内でも自治体間でばらつきがあることは不公平ではないかと感じます。フリースクールに通う子どもたちや利用する保護者を支援する手だてを、行政にはできる限り模索してほしいと思います。