滋賀県は新年度・令和5年度の当初予算案を発表しました。
一般会計の総額が6000億円を上回るのは3年連続。どのような内容が盛り込まれているのか、予算案の注目点を詳しく解説します。
(大津放送局 記者 光成壮)
過去2番目の規模
まず、新年度当初予算案の概要です。
一般会計の総額は6582億5000万円で、今年度を142億2000万円上回りました。これは、令和3年度の6670億円に次いで、過去2番目の規模です。
3年連続で6000億円を上回りました。
要因として挙げられるのが新型コロナ対策です。
一般会計のうち、コロナ対策がおよそ887億円、率にして13%を占めています。
一方、子育て支援やインフラなどいわゆる通常分の予算はおよそ5696億円です。
新型コロナウイルスの感染拡大が始まる前、令和2年度の当初予算は5705億円だったため、新型コロナ関連の費用を除けば、同じ程度の水準です。
ただ、このコロナ関連の費用は、今後変わる可能性もあります。
政府は新型コロナの感染症法上の位置づけを、5月8日に季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する方針です。
この場合、例えば▼病床確保のための費用や、▼いまは公費負担になっている医療費が一部自己負担になるなど変更点が出てくることで、費用に影響する可能性があるとしています。
「子ども 子ども 子ども」
続いて、当初予算案で注目した重点施策です。
まず1つ目が「子ども」に関わる施策です。
三日月知事は、会見で「子ども、子ども、子ども。子どものために子どもと共に作る県政を目指していく」と、「子ども」ということばを繰り返し述べて、力の入れ具合を強調しました。
新規事業としては、困難な課題を抱える子どもや若者の支援などを盛り込みました。
具体的な事業の一部です。
▼子どもの学習支援やいわゆるヤングケアラーの支援など、子どもや若者の居場所作りに取り組むNPOなどを支援する制度の新設(3000万円余り)
▼「こどもとしょかん」と名付ける事業の開始。県立図書館の本を地域のショッピングセンターに持っていくなどして、より多くの子どもたちが本に触れる機会を持てるようにする取り組み(790万円)
▼保育所などでの事故防止対策として、バス運転手などを対象とした研修や啓発資料の作成(427万円)
北部振興を
そしてもう1つ注目するのは、人口減少が進む北部地域の振興です。
「北の近江振興プロジェクト」と名付ける一連の新規事業に4900万円余りを盛り込みました。
具体的には、
▼地域の資源の掘り起こしを専門に行う外部人材の活用や、
▼若者が1週間ほど農村に滞在し、農業体験や地域の催しに参加してもらう「農山村版ワーキングホリデー」という事業、
▼県北部の3市(長浜市、高島市、米原市)の挑戦的な取り組みを支援する補助金などが盛り込まれました。
背景の1つには、来年、2024年の春、福井県の敦賀駅まで北陸新幹線が開通するため、それにあわせて関係人口を増やそうという狙いもあるということです。
続く財源不足 厳しい財政運営
一方、大きな課題として、財源の不足があります。
こちらは当初予算案の歳出を示すグラフです。
コロナ禍で影響を受けた企業の経済活動が再開するなどして、県税の収入は増える見込みです。
しかし、国からの地方交付税などを入れてもまかなえるのは青色の部分まで。赤色の部分にあたる174億円は不足しています。
県は不足分について、貯金にあたる基金を取り崩すほか、県債を発行して対応することにしています。
職員は41人増 国スポなどの対応に
そうした中でも、県は知事部局の職員を41人増やします。
記者会見では、財源が不足していることについての認識も問われましたが、三日月知事は、「国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会」の開催準備や、児童虐待防止対策、県内初の県立高等専門学校の開設準備などに対応するためと説明しました。
その上で三日月知事は。
「財政は楽観できない状況だ。ただ、必要なところには必要な予算をしっかりとあてる。また、人がすべてなので、それを担い、遂行する人員の配置というのもしなければならない」
的確なかじ取りを
知事が増員して対応するとした事業は、いずれも滋賀県にとって重要な課題だと思います。
一方で財源の不足が続いている状況は健全とは言えません。
的確なかじ取りをしつつ経費の削減にも取り組んでいくことが求められていると感じました。
新年度当初予算案は2月14日から開かれる県議会に提案されます。