花粉「ことし滋賀県内、大量飛散か」

NHK
2023年3月13日 午後9:26 公開

「なんだか、目がかゆい。鼻がムズムズする」

2月末、花粉症歴15年の私(記者)は、ことしも目と鼻に花粉症の症状を感じました。

ことしは、例年に比べて、街中でくしゃみをしている人や目をかゆそうにしている人を多く見かけるような・・・?

ことしは滋賀県内の花粉はどうなるのか、専門家に取材しました。

(大津放送局 記者 河原愛美)

*この記事の最後に3月3日におうみ発630で放送した動画のリンクがあります。

滋賀医科大学を訪ねたのは3月2日。

《ことしの花粉の飛散量は?》

清水 猛史 教授が取材に応じてくれました。

清水教授のグループは24年前からこの時期毎日、大学の建物の屋上でワセリンを塗ったスライドグラスを設置し、そこに飛散してきたスギとヒノキの花粉量を調べています。

(写真提供:滋賀医科大学)

教授が、まず明らかにしたことは、私たちにとってショッキングなものでした。

「ことしは大量な飛散が予想されますね。いままでに一番多いくらいの飛散量になるんじゃないかと思います」

その理由として教授が挙げるのは3つ。

《なぜ、飛散量が多くなる?》 

理由①樹木の特徴

スギとヒノキはだいたい1年おきに多い年と少ない年を繰り返される樹木の特徴があり、ことしは多い年にあたるといいます。

理由②前年の7月の気温と日照時間

ほかに清水教授が注目しているのは前年の7月の気温と日照時間。

気温が高く、日照時間が長いほど花粉の生育に良いとみられます。

大量飛散になった4年前2019年の前年の夏は、平均気温が28点5度、日照時間が251点6時間と、特に気温が高く、日照時間が長い年でした。

そして、去年7月の平均気温は27点1度、日照時間は167点5時間。

2019年以来の気温の高さ、日照時間の長さとなっています。

理由③スギの雄花

(写真提供:滋賀医科大学)

もう一つ注目しているのはスギの雄花。

清水教授の研究グループは、毎年、秋に甲賀の森林センターでスギの雄花を確認しています。

去年10月下旬に確認すると、例年と比べて非常にたわわに実っていたそうです。

このことからも、今年は大量飛散になるだろうと予測できるといいます。

ーーーー大量飛散は避けられなさそうです。

では、私たちはどうすればいいのか。

《対策どうすれば? 5つのポイント》

対策①情報収集

まず大切なのは花粉を知ること。

清水教授によると大量飛散は1か月ほど続くとみられ、特に風の強い日や天気の良い日は花粉が多く飛ぶため、花粉の飛散情報を確認することが有効だとしています。

対策②屋外でやれること

・花粉の飛散量が多い時は外出を控える。外出時にマスクやめがねを使う。

・表面がけばだった毛織物などのコートの使用は避ける。

・帰宅時、衣服や髪をよく払ってから入室する。洗顔、うがいをし、鼻をかむ。

対策③屋内でやれること

・飛散の多い時は窓・戸を閉めておく。換気時の窓は小さく開け、短時間にとどめる。

・室内の換気は花粉があまり飛ばない早朝か夜間に短時間で行う。空気清浄機も有用。

・飛散の多い時のふとんや洗濯物の外干しは避ける。

・掃除を励行する。特に窓際を念入りに掃除する。

対策④症状が出たら

症状が出たらどうすればいいのか。

早い段階での対処がカギだと言います。

「症状がひどくなってから薬を飲み始めるのでは、薬を効いてくるまでかなり時間がかかりますし、なかなか症状を抑えることができません。症状が始まったなと思ったら早めに薬を飲み始めるのがいいです」

具体的には。

「毎年、花粉症の方は、できれば早めに例えば眠気の少ない薬剤とか、眠気の少ないお薬とか医療機関を受診して頂いて、早めに薬をはじめていただくのがいいと思います」

対策⑤新型コロナとの関わりに注意

さらに教授が指摘したのが、新型コロナとの関わり。ポイントは2つ。

▼1つ目のポイントは、手指の消毒に気をつける。

花粉症の人はつい、目とか鼻をつい手で触ってしまいます。もし、その手にウイルスがついていると、いま感染しやすいということがありますので手指の消毒には気をつけていただくのがいいと思います」   

▼2つ目のポイントは、くしゃみによるリスク。

「花粉症の人が新型コロナウイルスに感染してしまうとくしゃみをして人にまき散らしてしまう可能性があります。ですから、やはり、ことしはなるだけ早めに治療をはじめて花粉症の症状を抑えておくのも大事だと思います」   

《花粉症ってそもそもなぜ?》

いろいろと対策はあるのはわかってきました。

そこでふと疑問が。

――――そもそも花粉症ってなぜなるんでしょうか?

林野庁によると、日本にスギやヒノキが多く植えられた理由は、戦時中や戦後の過度な伐採により荒廃した山地の復旧や高度経済成長期に木材需要が増大したためでした。成長が早く、日本に自然環境に適応できるためです。

そのスギやヒノキが花粉の発生源となっているというのです。

また、清水教授によると、ヒノキは雪に弱いことから西日本のヒノキの花粉量は、東日本に比べて多いということです。

《花粉症から逃れるには?》

―――――いろんなところに花粉は飛んでるんですね。逃れられる場所ってないんでしょうか?

清水教授によると、スギやヒノキから出た花粉は100キロほど飛ぶことも。

そして、どの風向きのときに一番、花粉の量が多いか調べたこともあり、滋賀の県外から飛んできている可能性もあるそうです。

「南風と西風が非常にそのときに多くて、おそらく西はですね。京都の西の亀岡のあたり。南は奈良のほうから飛んできているのではないかと思います」

《びわ湖が花粉症を??・・・・・》

今シーズン、はじめて、滋賀県で冬から春を過ごす花粉症歴15年の私。

「滋賀にはびわ湖があるので、もしかしたら、水辺の近くでは花粉症の症状が和らぐのでは?」と根拠のない期待を抱いていました。

清水教授にびわ湖や海岸の水辺で花粉症の症状が和らぐことはないかとも聞いてみました。が、花粉は100キロほど飛散するため、花粉はびわ湖の上を飛び越えて対岸から飛散することもあるとみられるそう。

びわ湖岸でも花粉症から逃れることはできないということでした。。。

《花粉、いつまで?》

――――では、いつまで我慢すればいいでしょうか?

「スギは、3月の終わり4月のはじめぐらいまで。ヒノキは、4月の終わりから5月のはじめぐらいまでは、症状が続くと思います」

清水教授は取材の最後に笑顔でこう教えてくれました。

「自分はならないと思っていたんですが、二十数年前に花粉症になりました。今シーズン、花粉の飛散量が増えてきたので薬を飲んでいます。お若い方でまだ花粉症になってない人で、これから発症してくる方も多いんじゃないかと思います」(清水教授)

清水教授によると花粉症の治療方法は毎年、進歩していっているそうです。

治療薬や治療法のさらなる飛躍を願うばかりです。

この記事の仕上げをしているのは3月13日。

きょうから新型コロナ対策としてのマスクの着用は個人の判断に委ねられることになりました。

ただ、花粉の飛散が多い以上、私にとっては、マスクを外す選択肢は当面なさそうです。