過去最大の捜索劇で見つかった「コルト1100F」が今も元気に走り続けるワケ

笹原 有翔(ディレクター)
2023年1月1日 午後11:59 公開

おかげさまで第5弾となる当番組ですが、今回ターゲットとなった絶版車「コルト800」探しは大勢の方々を巻き込んだ過去最大規模の捜索劇となりました。そして、それだけ多くの方の心を動かしたことが「この車がいかに魅力的か」を物語っているような気がします。

1965年、新三菱重工業の水島製作所でコルト800は誕生。番組ではデザイナーとして開発に携わった岡野さんに開発当時のお話を伺いましたが、自由奔放な水島製作所での思い出を、番組内で紹介しきれないほどお話しいただきました。

破天荒なリーダー金子徳次郎さん(通称:徳さん)率いるチームの仕事場には誰が持ち込んだか不明な巨大ソファーにゴルフの練習セット、徳さんが好きで飼育していたというカブトガニの水槽。仕事の合間にはみんなでバーベキュー、スイカ割りと“不良学生のたまり場”のようだったといいます。

しかし、仕事にはどこまでも一途で徹夜での作業も当たり前。その根源には、いつもバイタリティーあふれる徳さんの姿がありました。60年近く前の話にも関わらず、徳さんを語る岡野さんの表情は本当に楽しそうで、当時の開発チームは今も家族同然の付き合いをしているそうです。

そんなこんなで始まった捜索劇ですが、長野で発見した日本で唯一のコルト800(番組調べ)は残念ながら動かず……。SNSで見つけた一枚の写真を頼りに、コルト1000F・1100Fの捜索が始まりました。そこで出会った千葉の方々には感謝してもしきれません。皆さんがコルトを「一目見たい!」と、まるで自分のことのように協力してくれました。直接聞き込みに訪れた市町村以外にも、裏では別のスタッフが電話での地道な聞き込みを続けてくれました。大げさではなく、捜索エリアで旧車に詳しそうな店はすべて当たったと思っています。

一枚の写真が、旧車好きの方々の間で瞬く間に広がり、初めて電話で問い合わせた旧車店の方に「もしかしてコルトの件?」と第一声で言われることにも慣れてしまっていました。そして、そんな皆様のご協力のおかげで、我々はコルトに出会うことができました。

コルトを愛するオーナー西原さんには、撮影外では絶品の焼き芋をごちそうしていただいたり、本当にお世話になりました。小学生の娘さんもコルトが大好きで、学校で友達にも自慢するほどだそうです。

そして、今回番組で紹介しきれなかった一つに「コルトの前オーナーはどんな人物なのか?」という話があります。西原さんも前オーナーに関してはまったく知らず、ずっと心残りだったと話されていました。その後、西原さんの証言や車種名を元にスタッフで調べたところ、前オーナーが判明します。

過去、自動車雑誌にも取り上げられたことがあるその人物は、30年近くコルトに乗り続けた福井県の池田さんという方でした。コルトで趣味のスキーによく出かけたという池田さんですが、番組内でチラッと映る車内の天井のキズはスキー板を積み込む際にできたものだそうです。エンジンが故障した際にはメーカーに直訴状まで送り、部品を探してもらうほどコルトを大切にされていた方でした。

その結果、コルトは今も元気に走り続け、現オーナー西原さんは岡山への里帰りドライブにも成功されます。前オーナーの件を西原さんにお伝えすると

「池田さんの想いものせ、大切に乗り続けていきたい」

と仰っていました。今回、旧車好きの方々の情熱が出会わせてくれた幻のコルトが、これから先ずっと元気に走り続けることを、スタッフ一同も心より願っています。                     

                 ディレクター 笹原有翔(ユニット)