「やさしい猫」通信では、ドラマの中で登場する様々なコト・モノを詳しく紹介していきます。
第2回では、クマさんの生まれ故郷・スリランカについて、もっと深掘りしていきたいと思います!今回は、スリランカと日本の共通点に着目します。前回に引き続き、ペレラ役のにしゃんたさんにお話を伺いました!
仏教という繋がり
――――外務省のデータによると、スリランカの宗教は、国民の7割が仏教。1話で、ミユキさん、マヤちゃんと一緒に鎌倉を訪れたクマさんが、鎌倉大仏に丁寧に手を合わせてお祈りをしているシーンがありましたね。
スリランカと日本のつながりの歴史を紐解くとき、“仏教”は欠かすことが出来ないキーワードです。第1話の鎌倉、第2話の鶴岡でも登場したジャヤワルダナ元・大統領の演説も、もとを辿ればブッダの言葉です。ジャヤワルダナ氏自身も、仏教徒でした。
まだ大統領になる前の1951年、彼は、第二次世界大戦・太平洋戦争後のサンフランシスコ講和会議に出席し、日本の自由と独立の支持を訴える演説を講和会議出席各国代表の前で行いました。その中で引用されたのが、この言葉です。
戦時中、スリランカは日本によって空爆も受けていましたから、補償を受ける権利はありましたが、日本とスリランカはどちらも仏教の国。ジャヤワルダナ氏は、このブッダの言葉を引用することで、賠償請求を放棄するメッセージを各国に投げかけたのです。
ジャヤワルダナ氏は、その後スリランカの歴史の中で最長・最高齢の大統領となっていくのですが、何度も日本を訪れており、当時の皇太子ご夫妻(現在の上皇ご夫妻)をはじめ、多くの日本人をスリランカに招きました。彼は亡くなった後、自分の目の角膜を、片方はスリランカに、もう片方は日本に送るように遺言を残しています。ジャヤワルダナ氏は、日本とスリランカ両国の絆を作った人物といえるでしょう。
「おしん」の国、日本!
――――第2話の、山形県の鶴岡でのシーン。クマさんが「おしん」のパネルを見て大興奮していましたね。
クマさんの“スリランカ人、みんな「おしん」知ってる”という台詞は、オーバーな表現でもなんでもなく、本当です。
今の若者世代は、もしかしたら知らないかもしれませんが、親世代は必ず見ていると思います。「おしん」はスリランカで放送された海外のドラマとしては一番有名で、人気でした。“日本=「おしん」”というイメージがつくほどです。
――――どうしてそこまで人気だったのでしょうか?
貧しくても、たくましく、笑って生きていこうとするおしんの姿が、スリランカ人の心にも響いたからだと思います。ただ、現実の世界では、日本から、最先端のかっこいい車がスリランカに入ってきて、街で走っているんですよ。同じ国とは思えませんでしたね(笑)
クマさんも自動車整備工場で働いていますが、やはり、車がきっかけで留学先として日本を選ぶスリランカ人は多いと思います。
“占い”で人生が決まる!?
――――“結婚を延期したい”とミユキさんに話すシーンで、クマさんは“スリランカでは大事なことを占いで決める”と言っていました。日本も、歴史をさかのぼると、結婚の吉凶を占う文化があります。具体的にどのような占いなのですか?
いわゆる占星術というもので、12星座ではなく、へびつかい座を含めた13星座で占います。
生まれた日、時間、方角などを使って、例えば・・・お見合いの相手と今後夫婦としてうまくやっていけるかとか、プロポーズのタイミング、場所、結婚式の日程・時間、会場に入る時間、どちらの足から部屋に入るか・・・などなど、とにかく細かいところまで占いで決めます。
―――そうなのですね!そこまで細かく決めるとは思いませんでした。
そういった、“非科学的”と思われがちな文化が、目に見える形で残っているのが、スリランカという国であり、いいところだと僕は思います。
仏教の教え、満月の日(ポーヤデー)に必ずお寺に行って祈りをささげること。日常に感謝し、親や家族を大切にすること。「愛によって憎しみを越えられる」と説いたジャヤワルダナ氏の言葉。そういったスリランカ精神が、クマさんの中にも息づいているからこそ、クマさんとミユキさんは被災地ボランティアで出会い、惹かれ合い、愛によって結ばれたのだと僕は思います。
3人で幸せな生活をおくっていたはずのミユキ・マヤ・クマラの3人。これから一体どうなってしまうのか・・・?
「やさしい猫」通信では、これからもドラマに登場する言葉やコト・モノを深掘りしていきます。放送と共にお楽しみください!
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にしゃんた プロフィール
羽衣国際大学 教授。
高校生の時に渡日、日本国籍を取得。教授、タレント、随筆、落語、空手、講演など多方面で活動中。
土曜ドラマ「やさしい猫」ではスリランカ料理店店主・ペレラ役として出演、スリランカ文化考証も担当。
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参考:外務省ホームページ