第5回“このまま日本で…”という願い

NHK
2023年7月22日 午後10:50 公開

「やさしい猫」通信では、ドラマの中で登場する様々なコト・モノを詳しく紹介していきます。

第3話でマヤが出会ったハヤトという青年。

マヤとハヤト

埼玉生まれ、埼玉育ちのクルド人だというハヤトと、お互いの境遇を話したり、一緒に出掛けたりする中で、マヤは次第に打ち解けていきます。

そんな中、マヤは、ハヤトの相談を受けている麻衣子先生から、ハヤトが仮放免であるということを聞かされます。

戸惑うマヤ

マヤ:仮放免って、クマさんが許可を貰えなくて苦しんでいる、あの「仮放免」?じゃあハヤトくんも収容されてたってこと・・・?

マヤは戸惑いを隠せません。

仮放免とは、在留資格がないため入管の施設に収容された人が、一時的に入管施設の外での生活を許されることです(※注)。では、ハヤトはなぜ「仮放免」なのでしょうか。

NHK専門解説委員の二村伸氏に話を聞きました。

モデル事務所から声をかけられたハヤト

ハヤトは日本で生まれ育ち、日本語を第一言語とし、日本人の高校生と変わらない生活をしていますが、両親ともに在留資格のない非正規滞在で、彼自身も在留資格がありません。未成年のため、収容を免れているという状況です。

仮放免は、入管施設へ収容されない代わりに多くの制約があり、例えば下記のようなことが認められていません。

・就労

・許可なく都道府県をまたぐ移動をすること

・住民登録

・健康保険への加入

健康保険に加入できないため、病気になっても高い治療費を払えず我慢を強いられる。希望する学校に通えない。仕事に就くことが出来ず、周りの同級生が就職活動していても自分は何も出来ない。行ったこともない国に、帰国するように言われる。ハヤトのような未成年者が、日本にはおよそ300人いると言われ、将来に希望を持てず不安な日々を送っています。両親が在留資格を失いオーバーステイとなった経緯も、勤め先の倒産や解雇などによる失職、離婚や死別、難民認定申請中など様々な事情があります。

入管職員に相談するハヤト

オーバーステイなどによって退去強制を命じられた外国人のうち、9割は速やかに帰国しています。残りの人たちは日本に生活の基盤があり、日本人と結婚し、家族がいる人、ハヤトのように日本で生まれ育ち祖国を知らない子どもたち、祖国に帰ると迫害を受ける可能性がある人など、帰るに帰れない様々な事情を抱えています。

「やさしい猫」の中で描かれる裁判は、入管がクマラに出した退去強制令書の発付処分の取り消しを求める裁判です。このように裁判まで行う実例はごくわずかです。

恵弁護士

上原

署名活動をするナオキ

恵弁護士、元入管職員の上原、マヤの幼なじみのナオキ。そしてハヤト。

様々な人の協力を得て、ミユキとマヤ、クマラは裁判に挑みます――。

果たして、共に暮らしたいという3人の願いは届くのでしょうか。

最終回、是非ご覧ください。

ミユキ、マヤ、クマラ

(※注)退去強制を命じられた外国人は送還まで入管の収容施設に収容されますが、病気などを理由に一時的に収容を免れる「仮放免」制度があります。2023年6月9日の入管法改正により、新たに「監理措置」制度が設けられ、来年以降「仮放免」とは別に、入管庁が認めた場合は入管施設の代わりに親族や市民団体などの監督下で生活できるようになります。一方、在留資格のない子どもたちへの在留特別許可について斎藤法相は6月に「前向きに検討する」と答弁、今後の対応が注目されます。(改正入管法の施行は1年後)

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取材協力:NHK専門解説委員 二村 伸